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1章 死亡フラグを回避せよ

不安の残る防衛戦

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 土壇場でペコラから爆弾発言を言われて、不安の残る防衛戦となってしまったが時は待ってくれない。

 眼前にリザードマンが現れた。

 今日、俺はまた死ぬかもしれない。

 この世界に来て、既に2回死んだ。

 ここは3つ目の並行世界だ。

 そして、1番可能性のある世界戦だ。

 だが、日本にはこんな言葉がある仏の顔も三度まで、3度目の正直、前者は、どんなに温厚な人でも3回目には怒ってしまうという例えで、後者は、最初や2度目がダメであっても3度目には報われるという意味である。

 だいたいチャンスは3回までのような気がして、今回こそは今回こそはと頑張った。

 だが、あんな土壇場で炎魔法と言われても対抗策なんか編み出せない。

 ぶっつけ本番で、運命の日を迎えることとなってしまった。

 俺の懐には、1日ですっかり怪我を直したシャーベットフォックスのキラリがいる。

 やはり魔物の回復力は尋常じゃないみたいで、すっかり傷口が塞ぎ切っていたのは驚いた。

 名付けについては、シャーベットってキラキラしてるからそこから名前を取って、キラリと命名した。

 まぁ決めては、キラリが気に入ったからだけどね。

「キラリにメイメイ、お前たちまで巻き込んでごめんな」

 俺は2匹を撫で回していた。

 いやモフっていた。

「クゥン」

「コーン」

 2人とも巻き込んだことを怒ってないなんて、ほんと可愛い子たちだ。

「鍛治師、モノノフは居るか?」

「リザードマンが何のようだ?武器の依頼ではなさそうだな」

「皆、聞いたか!この村にモノノフがいることは確定した。者共、この村にいる奴らを1人残らず殺すのだ!」

「やれるものならやってみろ。皆の者、村を守るぞ」

 うおおおおおおおと両軍の雄叫びが聞こえて、戦が始まる。

 親父に名乗らせるのをやめようかと当初は思ったがどうせ変わらないのだから名乗らせて挑発することで、突撃してくるリザードマンソルジャーを先ず排除することにしたのだ。

「勇士たちよ。我らが抜かれれば、村に蜥蜴どもの侵入を許すこととなる。そうなれば待っているのは蹂躙だ。弓兵たちよ。構え!放て!」

 ヤンキー青年の親父さんが短く鼓舞した後、弓兵たちが矢の雨を降らせる。

「グギャッ」

「ゲギャッ」

 短い悲鳴をあげて、突撃してきたリザードマンたちが弓矢の餌食となる。

「リザガイル様、ソルジャー部隊、壊滅。敵の建築物からの攻撃に手も足も出ません」

「ホプリタイを出せ!その後ろをジャガーノート隊で、あの建築物を破壊せよ!」

 リザガイルってのは、リザードマンの呼び名であって、ガイルで良いんだよな。

 流石、魔王軍の幹部でありリザードマンを束ねる指揮官だ。

 判断が早い。

「弓隊、攻撃やめーい」

「良し、僕たちの出番だ。リーシアお姉ちゃんたちが風の魔法で、盾を弾き飛ばしたら足元にブーメランを投げるぞ!」

 ヤンキー青年の親父さんが弓隊の攻撃を静止させ、子供たちがリーシアたちの風魔法を今か今かと待っていた。

「皆様、ワタクシたちの使命はなんでしょうか?国民の命を守ることですわ!確かにワタクシたちに実践経験はありませんわ。でもそんなワタクシたちをこの村の人たちは頼りにしてくれていますの。この村を守るために立ち上がった国民の皆様をお助けしますのよ。風魔法で盾を弾き飛ばしなさい!」

 リーシアたちが詠唱を始める。

『風の精霊よ。我らに目の前の敵を穿つ力を。ウインド』

 足元から急な風が上方向に吹き盾を飛ばされるホプリタイ。

「良し、皆、この時のために僕たちはブーメランの腕を磨いてきたんだ。僕たちだって村を守るんだ。蜥蜴を進ませるな!ブーメラン隊、投げろーーーー」

 盾を失い足元にブーメランを受け転ぶリザードマンのホプリタイに容赦なく弓が突き刺さっていく。

 皆んなが得意分野で協力し合って、被害を出さずにリザードマンを押し返している。

 ここまでは順調だ。

「リザガイル様、未だ突破できません」

「報告、ホプリタイ壊滅、ジャガーノート隊もあの飛び道具の餌食となり、壊滅」

「ぐぬぬ。よもやこれ程やるとは。魔王様が危険視されるのもわかるというもの。こちらの残兵力は?」

「リザードマンソルジャー50、ホプリタイ25、ジャガーノート10です」

「よもや人間共に、これほどやられるとは。あの建築物のせいだ。見たところ木で出来ているようだな。やれやれ、この力はまだ見せたくはなかったのだが仕方ない。全員、一旦下がらせろ。俺が出る」

「はっ」

 まずい、あの筋肉隆々の男は!?

『魔王様より賜りし、業火の力を喰らうが良い。フレイム』

「弓隊、退避ーーーー」

 ダメだ間に合わない!

「コンコーン」

 俺の懐からキラリが水を吹き出して、ガイルの炎を打ち消していた。

「なんだと!?その魔物はシャーベットフォックス、乗っている魔物はキングベアー!?貴様、魔獣を使いこなすなど只者ではあるまい。名を聞いてやろう!」

「俺の名は、トモカズ!この村を守るものだ!」

「リザガイル様、お別れの言葉が遅くなり申し訳ありません。私は御主人様に付くことにしました」

「ガイル様、ごめんね。奴隷商人に謝っといてよ。人間の男を愛して、捨てるような馬鹿の代金を返せって、ね」

「退きなさい!勝負は決しました。これ以上、イタズラに兵を減らす必要はありませんわ」

 俺に続いて、ナイアとペコラはお別れの挨拶、リーシアは、負けを認めて退くことを説いていた。

「そうか。ナイアよ。女の身でありながら立身出世を求むところは好んでおった。残念だ。ペコラよ。お前の飯、美味かった!勿論、あっちの方もな。だが、お前の決めた道なら仕方あるまい。それにその姿は、エインヘリヤルの天馬騎士団か。流石、魔王様の城の偵察を任せられる程の腕前、感服いたした。それにトモカズ。ワシは強きものが好きだ。此度は、ワシの負けだ。魔獣をも従えるお前のことは魔王様にしっかりと報告させてもらおう。全軍、撤退せよ」

 ガイルが生き残った者たちを連れて、迅速に撤退した。

 俺たちは、追うことはしなかった。

「アイツ、実は良いやつ?」

「「んな訳あるか!」」

 ナイアとペコラの声が重なる。

 2人とも別の世界線では散々な目にあったみたいだな。

 何はともあれ、ようやく死亡フラグを折ることに成功したのだ。

 ヤッタネ

 皆が村を守り切った喜びに抱き合っている状態で、突如として時間が止まった。

 いや、正確には俺以外の時が止まった。

「ん?何故、時間が止まった?」

「親父!?無事だったのか!」

「あぁトモカズ。これは一体?」

「俺もわからない」

「やっと繋がったわ~もしも~し、転生者の方~聞こえてますか~?」

 そんな間延びした声が聞こえて、さらに目を向けたところに、聖職者のような真っ白な服を着て、手に錫杖を持つ女性が居た。
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