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1章 死亡フラグを回避せよ
王都で虐められている熊の子供
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俺はナイアとペコラの首に奴隷の証である首輪を付けて、王都へと入った。
名目は、デストラク村からの武器の運搬が重くて、魔族の奴隷を雇ったということにする。
先ずは、冒険者ギルドに向かって、奴隷の許可証を貰う。
「ようこそ冒険者ギルドへ。今日はどういった御用件ですか?成程、王様に届けるための武器の運搬のための奴隷の許可証ですね。では、2人で金貨1枚となります」
俺は、袋から金貨を取り出して払う。
この世界での通貨は銅貨→銀貨→金貨となっている。
銅貨10枚で銀貨1枚。
銀貨10枚で金貨1枚の価値だ。
この世界の村人たちの1ヶ月での稼ぎは金貨10枚稼げるかどうかなので、冒険者でない俺には大金だ。
だがしかし俺の親父は、王都に度々武器を納める鍛治師モノノフなのだ。
お金は問題なかった。
でも、そう考えるとこの王都の宿屋って超が付くほどの割高だな。
「確かにお預かりします。それでは、この許可証を首輪に付けてくださいね。御利用、ありがとうございました」
渡された許可証を首輪にひっかける。
これで2人とも魔族でありながらギルドの身元証明がある奴隷という扱いとなる。
問題を起こしたら俺の責任とはなるが。
まぁ、王都を歩く分には、お墨付きを得られたと思ってもらえれば良い。
その時、外から子供達の遊ぶ声が聞こえてきた。
「オラァ。喰らえジャーマンスープレックス」
「キャヒン」
「今度は俺様の番だな。パイルドライバー」
「キャイン」
プロレスの名前が飛び交うのが聞こえて、子供同士で遊んでいるのかと思ったが時折聞こえる犬のような鳴き声に違和感を覚える。
「御主人様、どうされましたか?」
ナイアが立ち止まって耳を澄ませている俺を見て、心配そうに尋ねてくる。
「いや、懐かしい気がしてな」
現世にいた頃の話なのだが結構プロレスが好きだったのだ。
まぁ好きと言ってもマニアではない。
技名を聞けば、あぁあの技だなみたいにわかる程度だ。
だからその危険性はわかる。
特にパイルドライバーなんて、こんなマットもないところで放ったら最悪首がポッキリなんてことになる。
パイルドライバーを知らない人に説明すると相手の身体を上下逆さまに抱え上げて固定し、その状態から座り込むことによってマットに叩きつける技なのである。
これだけ聞いたらわかるだろうマットがないここでそんなことしたらどうなるか?
子供の遊びとは言え、その危険性を知っているのだ。注意しなければ。
「どうだ参ったか」
「最後はダブルラリアットだ」
「キャヒーン」
「そこまでだ。遊ぶのはいいが怪我をしては元も子もないだろう」
「なんだよお前。俺たちの遊びに文句があんのか?」
「兄ちゃんと俺の遊びに文句あんのか?」
見たところ俺より若いだろう8歳と10歳の兄弟と言ったところだろうか?
だが、パイルドライバーやジャーマンスープレックスを喰らった割にはお互いピンピンしている。
その側でぐでーんと伸びている白と黒の熊がいた。
現世で熊として最も愛されているパンダのような見た目である。
なんてことだ。
この子供達はあろうことか動物を虐待していたのだ。
「兄ちゃん、コイツ俺たちを注意する割にはリザードマンと獣人の奴隷連れてるぜ」
「おっ、こいつにも飽きてきたからちょうど新しいオモチャが欲しかったんだ。お前、その奴隷を俺に売れよ。貧乏人なんだ金は欲しいだろ?ほらよ」
俺の足元に金貨を20枚ほど投げる兄の方。
弟の方はそれを見てゲラゲラと笑っている。
何処にもこういう腐っている奴らがいるものだ。
「金なんかいらないよ。その熊に飽きたって言うなら僕が貰っても良いかな?」
身近なものたちの前では、一人称を俺にしてるがこういう公の場では、一人称を見た目のような歳に見えるように僕にしている。
だが、俺の提案にコイツらは舌打ちしてきた。
「お前の意見なんか聞いてねぇんだよ。もう俺がこの奴隷どもを買うことに決めたっての。勿論、この熊も渡さねぇよ」
兄の方に踏みつけられて、キャインと鳴く熊。
「はぁ。君たちいい加減にしてくれないかな。この奴隷は僕の女なんだ。なんで、君に渡さないといけないのかなぁ?」
俺はそう言うと逆に兄弟の足元にこの度王都で色々と必要になるであろうと渡されていた全財産の50枚の金貨を投げてやった。
「僕が貧乏人だって?見た目で判断するなんて困るなぁ。子供はそれを持ってとっとと帰りな。あっ熊は置いていって」
「舐めやがって」
「兄ちゃん、俺も手を貸すぜ」
ダブルラリアットをしてきた2人にラリアットで切り返してやった。
なんだか本当に偶然にできてしまったのだ。
そして、やった後に後悔するこんなマットの無いところで、やってしまうなんて。
2人とも地面に頭を打ち付けて目を回している。
死んでないよな?
「御主人様に挑むからこうなるんです」
「僕ちゃん、それよりもこの熊、衰弱してるよ。早く何か食べさせてあげないと」
俺は手付金代わりに50枚の金貨をその場に置いて、後にした。兄弟の頭にはコブもできていなかったし、脈を確認したところ本当に反撃を喰らって、目を回しているみたいな感じだった。
一応、病院の先生には連絡した。
この悪ガキ共には困っていたらしく、注意はされたが起きたら厄介だから行きなさいと促された。
そして、この熊は流石に奴隷とかいう扱いにできないので、郊外でペコラと待ってもらいながら僕はナイアを連れて、先に武器を王都に納品した。
その時に、大臣が魔族の奴隷を連れてくるなど何を考えているのかとブツブツ言ってたがどうでもいい。
気になったのは、天馬騎士団なるものを偵察から戻そうという話をしていた。
天馬騎士団、女性だけで構成された部隊で天馬ペガサスに乗るという王都の騎士団の一つだったはずだ。
確か、魔王城の偵察に失敗して、全滅するんだよな。
呼び戻すってことは魔王城の偵察からって事だよな?
ひょっとして、彼女たちが死ぬのも奇しくも村が滅ぶ日と同じだったってことはないよ、な。
だが。
もしも。
もしも、彼女たちの助力を得られれば、リザードマンの部隊を追い返せるかもしれない。
なら、なんとかして、彼女たちと接触しなければならない。
あの子供達と顔を合わせるわけにもいかないので、ミルクを飲んで、お腹を見せてくれている熊ちゃんに癒されながら、野営することにした。
名目は、デストラク村からの武器の運搬が重くて、魔族の奴隷を雇ったということにする。
先ずは、冒険者ギルドに向かって、奴隷の許可証を貰う。
「ようこそ冒険者ギルドへ。今日はどういった御用件ですか?成程、王様に届けるための武器の運搬のための奴隷の許可証ですね。では、2人で金貨1枚となります」
俺は、袋から金貨を取り出して払う。
この世界での通貨は銅貨→銀貨→金貨となっている。
銅貨10枚で銀貨1枚。
銀貨10枚で金貨1枚の価値だ。
この世界の村人たちの1ヶ月での稼ぎは金貨10枚稼げるかどうかなので、冒険者でない俺には大金だ。
だがしかし俺の親父は、王都に度々武器を納める鍛治師モノノフなのだ。
お金は問題なかった。
でも、そう考えるとこの王都の宿屋って超が付くほどの割高だな。
「確かにお預かりします。それでは、この許可証を首輪に付けてくださいね。御利用、ありがとうございました」
渡された許可証を首輪にひっかける。
これで2人とも魔族でありながらギルドの身元証明がある奴隷という扱いとなる。
問題を起こしたら俺の責任とはなるが。
まぁ、王都を歩く分には、お墨付きを得られたと思ってもらえれば良い。
その時、外から子供達の遊ぶ声が聞こえてきた。
「オラァ。喰らえジャーマンスープレックス」
「キャヒン」
「今度は俺様の番だな。パイルドライバー」
「キャイン」
プロレスの名前が飛び交うのが聞こえて、子供同士で遊んでいるのかと思ったが時折聞こえる犬のような鳴き声に違和感を覚える。
「御主人様、どうされましたか?」
ナイアが立ち止まって耳を澄ませている俺を見て、心配そうに尋ねてくる。
「いや、懐かしい気がしてな」
現世にいた頃の話なのだが結構プロレスが好きだったのだ。
まぁ好きと言ってもマニアではない。
技名を聞けば、あぁあの技だなみたいにわかる程度だ。
だからその危険性はわかる。
特にパイルドライバーなんて、こんなマットもないところで放ったら最悪首がポッキリなんてことになる。
パイルドライバーを知らない人に説明すると相手の身体を上下逆さまに抱え上げて固定し、その状態から座り込むことによってマットに叩きつける技なのである。
これだけ聞いたらわかるだろうマットがないここでそんなことしたらどうなるか?
子供の遊びとは言え、その危険性を知っているのだ。注意しなければ。
「どうだ参ったか」
「最後はダブルラリアットだ」
「キャヒーン」
「そこまでだ。遊ぶのはいいが怪我をしては元も子もないだろう」
「なんだよお前。俺たちの遊びに文句があんのか?」
「兄ちゃんと俺の遊びに文句あんのか?」
見たところ俺より若いだろう8歳と10歳の兄弟と言ったところだろうか?
だが、パイルドライバーやジャーマンスープレックスを喰らった割にはお互いピンピンしている。
その側でぐでーんと伸びている白と黒の熊がいた。
現世で熊として最も愛されているパンダのような見た目である。
なんてことだ。
この子供達はあろうことか動物を虐待していたのだ。
「兄ちゃん、コイツ俺たちを注意する割にはリザードマンと獣人の奴隷連れてるぜ」
「おっ、こいつにも飽きてきたからちょうど新しいオモチャが欲しかったんだ。お前、その奴隷を俺に売れよ。貧乏人なんだ金は欲しいだろ?ほらよ」
俺の足元に金貨を20枚ほど投げる兄の方。
弟の方はそれを見てゲラゲラと笑っている。
何処にもこういう腐っている奴らがいるものだ。
「金なんかいらないよ。その熊に飽きたって言うなら僕が貰っても良いかな?」
身近なものたちの前では、一人称を俺にしてるがこういう公の場では、一人称を見た目のような歳に見えるように僕にしている。
だが、俺の提案にコイツらは舌打ちしてきた。
「お前の意見なんか聞いてねぇんだよ。もう俺がこの奴隷どもを買うことに決めたっての。勿論、この熊も渡さねぇよ」
兄の方に踏みつけられて、キャインと鳴く熊。
「はぁ。君たちいい加減にしてくれないかな。この奴隷は僕の女なんだ。なんで、君に渡さないといけないのかなぁ?」
俺はそう言うと逆に兄弟の足元にこの度王都で色々と必要になるであろうと渡されていた全財産の50枚の金貨を投げてやった。
「僕が貧乏人だって?見た目で判断するなんて困るなぁ。子供はそれを持ってとっとと帰りな。あっ熊は置いていって」
「舐めやがって」
「兄ちゃん、俺も手を貸すぜ」
ダブルラリアットをしてきた2人にラリアットで切り返してやった。
なんだか本当に偶然にできてしまったのだ。
そして、やった後に後悔するこんなマットの無いところで、やってしまうなんて。
2人とも地面に頭を打ち付けて目を回している。
死んでないよな?
「御主人様に挑むからこうなるんです」
「僕ちゃん、それよりもこの熊、衰弱してるよ。早く何か食べさせてあげないと」
俺は手付金代わりに50枚の金貨をその場に置いて、後にした。兄弟の頭にはコブもできていなかったし、脈を確認したところ本当に反撃を喰らって、目を回しているみたいな感じだった。
一応、病院の先生には連絡した。
この悪ガキ共には困っていたらしく、注意はされたが起きたら厄介だから行きなさいと促された。
そして、この熊は流石に奴隷とかいう扱いにできないので、郊外でペコラと待ってもらいながら僕はナイアを連れて、先に武器を王都に納品した。
その時に、大臣が魔族の奴隷を連れてくるなど何を考えているのかとブツブツ言ってたがどうでもいい。
気になったのは、天馬騎士団なるものを偵察から戻そうという話をしていた。
天馬騎士団、女性だけで構成された部隊で天馬ペガサスに乗るという王都の騎士団の一つだったはずだ。
確か、魔王城の偵察に失敗して、全滅するんだよな。
呼び戻すってことは魔王城の偵察からって事だよな?
ひょっとして、彼女たちが死ぬのも奇しくも村が滅ぶ日と同じだったってことはないよ、な。
だが。
もしも。
もしも、彼女たちの助力を得られれば、リザードマンの部隊を追い返せるかもしれない。
なら、なんとかして、彼女たちと接触しなければならない。
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