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1章 死亡フラグを回避せよ

今度こそループからの脱却を目指す

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 2人が記憶を取り戻した俺の肩筋に甘噛みという罰を与えている。

「御主人様~心配したんですから。これは罰です~」

「僕ちゃん、私に記憶を思い出させた責任取ってね。うっすらと覚えてた私と違って全く忘れてたことは許さないけどね」

 2人とも加減はしてくれているがリザードマンと兎の獣人だ。

 傷跡は残った。

「この傷跡を思い出して、自分の愚かさを恥じてください」

「うんうん。ナイアちゃんの言う通りだよ。お姉さんは、僕ちゃんがまた無茶をしないか心配だよ。ということで、今日からナイアちゃんと一緒に僕ちゃんの家でお世話になるね」

「アハハ、お手柔らかに頼むよ」

 不思議と痛みはない。

 寧ろ俺のためにこんなに心配してくれている人たちを残して、自死を選び諦めた並行世界の俺に沸々と怒りが込み上がってきた。

 自分自身の事なので、怒ろうにも怒れないのだが。

 そして、家に帰ってきたら当然の如く親父にゲンコツを喰らって、抱きしめられた。

「この親不孝者が!現世だけでなくこげんファンタジーの世界でもワシを1人にしようとしおって!でも、本当に記憶が戻って良かったわい。ガハハ」

 笑っているが目からは涙が溢れている親父を見て、心配をかけたことを素直に謝る。

「ごめん親父。勝手に諦めたりなんかして、もう諦めない。どんなことになっても此処のみんなの運命を変える!」

「それでこそワシの息子じゃ。じゃが、事は簡単ではないぞ。堀に水を流すのは止めるとしてもじゃ。櫓を物理的に壊す部隊とあの盾兵を排除できなければ、あのループからは脱出できんじゃろう」

 確かに親父の言う通りだ。

 村まで逃げ切りリザードマンの部隊を迎え撃った並行世界での俺は、最初に死ぬ犠牲者としての運命は変えられたにしてもこの村と共に滅ぶ運命を変えることはできなかった。

 その大きな原因は、大楯を持ちながら規律ある行動で、前進してきた部隊とその後ろに控えていた櫓を壊すぐらいの圧倒的力を発揮した部隊によって、村への侵入を許すこととなり滅んだのだ。

 流石に弓で大楯を貫通するには至らなかった。

 なら殺傷力をあげればどうにかなるのか?

 いや、根本的に足りていないものがある騎兵隊だ。

 歩兵を踏み潰すならやはり馬がいる。

 しかし、馬を扱えるものが居ない。

 いや正確には、あのヤンキー青年の一家のように密かに適性がある人はいるのだろうが、10人程度では全く意味がない。

 親父もそれには思い至ったのだろう。

「うーむ騎兵が居れば、盾兵を踏み潰せるかもしれんがこの村で馬を取り扱っている奴らは居らん。そうじゃ!ワシは今から王都に頼まれた武器を作る。トモカズ、お前はそれを持って、王都に迎え。王都で助けてくれそうな騎兵隊を探すんじゃ。ここはワシ1人でも問題ないわい。子供にブーメラン、大人に弓とリザードマンの嬢ちゃんに教わる事は、なかったんじゃ。それに料理に関してもレシピを配ってくれればなんとかなるじゃろ」

 親父はそんなことを言う。

 確かにこの村でできることは前回やったので限界だとは思っている。

 間違えた箇所があるとすれば、堀に水を流して、リザードマンたちの移動速度を上昇させてしまったことだ。

 かといって、俺が王都に向かえば、展開が先に進んだと見なされて、進むことは無いだろうか?

「王都に私たち魔族は入れませんよ」

 ナイアとペコラが口を揃えたように言うがそれに関してはアテがある。

 変幻自在の玉の存在だ。

 アレがあれば2人を人間の姿に変化させて、王都に潜入することはできる。

 だが、これを手に入れるために日数がかかる。

 なら、きえさりの実を使うか?

 いや、効果が切れる直前に姿を見られれば、とんでもないことになる。

 やはり、そうなると変幻自在の玉が必要不可欠だ。

 それかもしくは2人を俺の奴隷って事にするか。

 幸い王都では奴隷売買が横行している。

 その中には、可愛らしい見た目をしているが獰猛な魔物が剥製用に買われたりしているのを知っている。

 何故なら、イベントアイテムとして、キングベアーの剥製を求められるクエストがあるのだ。

 このキングベアー、熊なのだがめちゃくちゃ可愛い、まぁ可愛いのは赤ちゃんの個体なのだが、それに名前も変わる。

 しかし、その愛らしさがとんでもない。

 だが、決して人には懐かず多くの人を食い殺したことから地獄の殺し屋と呼ばれている恐ろしい魔物だ。

 俺は覚悟を決めて、ナイアとペコラに言う。

「2人とも俺の奴隷になってくれ!」

 俺の唐突な言葉に目をまんまるとさせている2人とその横で、顔を強張らせている親父。

 そこで俺はようやく言い方が悪かったと思った時には遅く、ナイアとペコラからはビンタ。

 親父からはゲンコツが飛んできて、今こうして説明させられている。

「ふむぅ。成程のぉ。まぁ悪気はなかったようじゃがあの言い方はおなごに対して失礼じゃ」

「本当ですよ御主人様。まるで人を性奴隷みたいに。でも確かにその方法で王都に潜入する方が良いですね」

「僕ちゃん、お姉さんを本気で奴隷にしようとしてるのかと疑っちゃったよ。まぁ、確かにその方法なら私たちに危害を加えようとする人は居ないかもね。良いんじゃないかな」

「そうと決まれば、早速今から武器を仕上げる。明日には完成するじゃろ。前回より4日早いんじゃ。なんとか突破法を探してくるんじゃぞ」

「あぁ。村のことは親父に任せたよ」

「任されたわい」

 こうして、俺はナイアとペコラの首に奴隷の象徴となる首輪を付けて、俺がその鎖をまた主人という感じで、3人で王都へと向かうのだった。
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