転生したらオープニングで滅ぼされる村の子供?でした➖現代知識とゲーム知識とエッチな知識を駆使して生き残りたいと思います➖

揚惇命

文字の大きさ
上 下
18 / 142
1章 死亡フラグを回避せよ

村を守るために

しおりを挟む
 ダクドラの世界にないはずの弓はあっという間に村人たちに広まった。

 今や持ってない人が居ないぐらいに普及はしたのだ。

 そして親父は子供にはこれだろと言わんばかりに更なる新たな武器を制作していた。

 投げたものが手元に返ってくるブーメランという武器だ。

「モノノフおじちゃん、これなーに?」

「これはのぅ。こうやって投げる物じゃ」

 親父が投げたブーメランが手元に帰ってくるのを見て目を輝かせる子供たち。

「何、これ。なんで手元に戻ってくるの。面白そう」

「これを君にあげよう。子供たちみんなに広めてくれるかのぅ?」

「うん。こんな楽しそうなの皆、喜ぶよ。モノノフおじちゃん、ありがとう」

「坊主、たくさん広めてくれよなぁ」

「うん」

 そう言って、子供が別の子供に遊び方を教えて、目を輝かせた子供達が親父の元に集まり、みんなブーメランで遊んでいた。

「親父、ブーメランで敵を追い払えるわけが」

「トモカズ、魔族を追い払うためとかじゃねぇやい。娯楽が無さそうな子供達にちょっとな遊び道具を作ってやっただけやけんのぉ」

「なるほど」

「女たちにもなんか作ってやらんとな。見たところこの世界は戦いにしか武器を使わんようやな。料理の多くが硬いパンや野菜が丸々入ったスープやらで食べづらくてかなわんなぁ。そしたらアレやな料理包丁一式、作ったろ」

 親父はそういうと手際よく作り上げて、モニター要員とばかりに、何人かの女性にプレゼントしていた。

「モノノフさん?これなんですか?私たちに武器は必要ないかと」

「武器ちゃうで、料理包丁って言うてな。食材を食べやすい形に切ったりするもんや。まぁ、タダで差し上げるけん。試しにつこうてみてや」

「はぁ、まぁ、使うことないと思いますけど、まぁ受け取っておきます」

 しかし、その日からこの包丁を受け取った家では、パンが食べやすくなったとか野菜に味がよく染みるようになったとかで、口コミのように一気に広がり、一家に一台料理包丁なんて言われるまでになったのは言うまでもない。

 親父がモノノフさんに転生したことで、建築や武器だけでなく生活の役に立つ物や娯楽道具まで、幅広く作り、民たちは大喜びだった。

 そして、リザードマンが攻めてくるまで、残り日数は少なくなった。

 俺が王都エインヘリヤルへ出来上がった武器を届ける日である。

 この日、俺は村のみんなに親父を通じて、話す。

「集まってもらってすまんな」

「何を言ってんだよモノノフさん。皆アンタのお陰で、暮らしが楽になったって喜んでんだ」

 口々からそうよそうよと声が聞こえる。

「ありがとう。そんな皆に隠していたことがある。ワシがどうして、急にこの村を砦化したり、櫓という見張り台兼攻撃拠点を作ったのには訳がある」

 親父は大事な話をするときは真面目になる。

「どういうことなんだモノノフさん?」

 民のみんなの顔が不安に満ちていく。

「魔族がこの村に攻めてくる。ワシを殺しにな。どうやらワシは魔族にとって危険因子だそうだ」

「そんな、そんなこと」

「モノノフおじちゃんが死ぬのなんて嫌だよ!なんとかならないの?」

「そうよ。モノノフさんのお陰で、最近料理をするのも楽しいんです。私たちに何かできることはありませんか?」

「モノノフさんのお陰で狩りが効率的になったんだ。なんでも手伝うぜ。言ってくれ」

 親父は皆の言葉を受けながら涙を浮かべながら言葉を続ける。

「本当にありがとう。みんなをこんなことに巻き込んでしまって申し訳ない。最近出入りしてる獣人族の女性とこのリザードマンの女性もこの村を守るために戦ってくれるそうだ。君たちにも共に戦って貰いたい。この村を守るために」

「水臭いこと言うんじゃねぇよ!モノノフさんはこの村を豊かにしてくれたんだ」

「そうよ。畑作業は効率化され、狩も断然楽になりましたわ。その上、料理を作るのがこんなに楽しいなんて知りませんでしたわ」

「モノノフおじちゃんを守るためなら僕、このブーメランで敵を追い返すよ!」

 口々にそういう言葉が聞こえてくる。そして、ヤンキー青年の言葉がトドメをさした。

「モノノフさん、全て計画通りなんだろ?おかしいと思ったんだ。あの櫓ってのはこの弓の威力をさらに高めるためのものなんじゃねぇのか?この弓ってのは、真っ直ぐ飛ぶわけじゃねぇ。風の影響や重力をモロに受けてる。あの高さから打ち込めば非力な俺たちでも魔物にダメージを与えられる。そう考えたんじゃねぇのか?アンタはずっとこの村を守るためだけに頭を使ってきたんだ。俺たちにも背負わせてくれ。この村に今まで代表者なんていなかった。皆、どうだモノノフさんが代表者で」

 皆んなが口々に意義なしと言う。

「だったら俺たちにとって大事な村長を守るのは当然だよな。男衆は弓を持って、あの櫓に上がれ、いつ攻めてくるかわからねぇんだ。交代で見回りすっぞ」

 おーーーーーと男衆がそれに応える。

「ペコラさんでしたわよね?」

「あっはい。そうです」

「あの私たちは戦うことはできません。ですが料理で男衆たちを元気付けてやれると思うんです。料理指導をお願いできませんか?」

 ペコラは少し考えたそぶりの後言った。

「私なんかで良ければ」

 子供たちは集まって何やら密談しているが大きい声なので筒抜けだ。

「違う、あの草むらで隠れて、足元目掛けてブーメランを投げつけたら転ばせられるだろ」

「でも、転ばなかったら危機に陥るのは私たちなんだよ」

「だから弓の届く範囲でやるんだ。そしたら、パパたちが弓を打ち込んでくれている間に逃げれるだろ」

「そうかもしれないけど」

「モノノフおじちゃんのためなんだ」

「もーう、わかったわよ。やるわよやってやるんだから」

 逞しいったらありゃしない。

 でもここまで村人が団結できたのも親父のおかげだ。

 親父がダクドラに転生してきてくれなければ、俺はまた死ぬだけだったかもしれない。

 俺は親父から王都に届ける武器を持たされる。

「トモカズ、そう心配するな。結局、村が滅ぶ運命ってことは、コイツらかって死ぬ運命やった。それをひっくるめて、ひっくり返そうってんだからな」

「あぁ、ありがとう親父。今回は絶対に生き残るよ」

「そうや。その意気や。みんなで頑張ろう」

 こうして俺はこの世界に来て2度目の王都エインヘリヤルへと武器を届けに向かう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました

ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。

悪役令嬢はバッドエンド回避で自由になり平穏に生きるはずだったのに、なぜこんなに求婚が!?

花草青依
恋愛
タイトル通りのギャグ短編小説/画像はChatGPT

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果  異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。  実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。  異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。  そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。  だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。  最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。

処理中です...