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1章 死亡フラグを回避せよ

着々と死に向かって進んでいく

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 これでナイアも諦めると思ったが返ってきた言葉は意外な言葉だった。

「変幻自在の玉があれば、御主人様と離れなくて済むんですね。私、探してきます」

 えっ?

 なんで、ナイアが変幻自在の玉のことを知ってる?

 俺が心の中で思っていたことなのに。

 どうして?

「不思議そうな顔をしてますね~御主人様~。チッチッチ、私の心配をするなんて百年早いですよ。魂が結びついてしまった私には御主人様が思っていることがわかってしまうのです」

「なっ、何だって!?」

 あの淫紋に何か仕組みがあるのか?

「お腹のこの変な紋様のことですか。確かにサキュバスやインキュバスの使う淫紋に似てるけど違いますよ。これは、御主人様と私の絆です。文字通り霊が結びついたんです。御主人様が死ぬ時が私が死ぬ時です」

「えっ?」

「待っててください。すぐにその変幻自在の玉を見つけて帰ってきますから」

 それだけ言うとナイアは風のように去ってしまった。

「待って!!!!」

 何処にあるか聞かずに行っちゃったんだけど大丈夫なのか?

------------------

 御主人様に中に出された時、深く繋がった気がした後、私のお腹に不思議な紋様が浮かびました。

 サキュバスの淫紋とは少し違います。

 御主人様を身近に感じます。

 御主人様から聞いた話は衝撃でした。

 私が御主人様の村を滅ぼし、御主人様を殺しただなんて、ショックで昏倒しそうになるのを耐えながら、何か方法がないか聞きました。

 帰ってきた言葉な『ない』です。

 絶望してしまいそうになった時、私の頭の中に何か流れ込んできます。

 それは、御主人様が心に思っていることでした。

 方法はあったのです。

 私が御主人様と一緒に居られる方法が、その変幻自在の玉が何処にあるのかは知りませんが探せば良いだけです。

 私のことを必要としてくれる御主人様のため、2人の幸せのためです。

 私が必ず見つけ出してやります。

 御主人様が見えなくなるとさっきまで頭の中に流れていた御主人様の心の声は聞こえません。

 恐らく、離れすぎると聞こえないのでしょう。

 今のところ半径2メートルというところでしょうか?

 こんなの、まだまだ役に立ちません。

 もっともっと御主人様と交わって、より強い結びつきにならないと。

------------------

「お子さんで間違いありませんか?」

「はい」

 警察の遺体安置室に呼ばれた俺は、目の前で布をかけられている友知の確認をさせられていた。

 一応不審死というやつらしくて、遺体解剖をしたそうだが事件性は無いそうだ。

 そんなわけがあるか!

 高校の頃は、親孝行の仕方を間違える馬鹿息子だったが、就職が決まった時、身体を壊した俺にこれからはいっぱい親孝行するからというできた息子だ。

 栄養剤を致死量まで飲む理由があったはずだ。

 なんで、俺ばっかりこんな目に遭うんだ。

 大事な妻は、病弱の身体で子供を産めないと言われていたのに、出来た友知のことを諦められないって、産んだ後亡くなった。

 俺は残された友知のことを恨んでてもおかしくなかった。

 でも俺の手の中で泣くコイツを見てると妻が命をかけてまで産んだ忘れ形見だ。

 俺がなんとかしねぇと。

 そう覚悟を決めて、ガムシャラに働いた。

 包丁を作る仕事だけでは、稼ぎが少なくて、大工仕事もやった。

 親父の仕事を継ぐまでは、土建で働いてたからな。

 家を作るのも一流よ。

 こうして身体を酷使した俺は、死にはしなかったが、身体がいうことを効かなくなった。

 この杖が無ければ歩くこともままならんし。

 この杖があっても、歩けない時もある。

 なんで、こう動く時に限って、我が子の死を知らされるのだ。

 何故、友知が死ななければならんのだ。

 絶望感に打ちひしがれた俺は、それから間も無くして睡眠薬を多量摂取して、この命を断った。

 愛する妻も居ない。

 人生を賭けて育てた我が子も居ない。

 この世界から逃げたくなってしまったのだ。

------------------

 ナイアが変幻自在の玉を探しに出て2日が経過した。

「よーし、完成だ。トモ、それじゃあ、これを王都エインヘリヤルの武器庫に納品してきてくれるか?」

「あっ了解です」

「固いなぁ。まだ、記憶は思い出せねぇか?」

「はい。モノノフさん、こんなこと信じてもらえるか分かりませんが」

「お前が近頃、村の奴らに話してたことだな。リザードマンが村を滅ぼしに来るだったか?」

「はい。嘘じゃないんです」

「信じてやりたいのは山々だがな。いきなりそんなことを言われて、信じる奴は居ないだろうよ。まぁ、話はまた帰ってきてからだな。ほら、頼んだぜ」

「はい」

 俺は、リザードマンが村を滅ぼしにくると村中に触れ回った。

 そんな俺に対して、村の人が向ける言葉は『ほら吹き野郎』だった。

 信じてもらえない中、2日経過したこの日、王都に納品する武器が完成してしまった。

 兵士の剣100本である。

 それを、30日で完成させた。

 俺がこの世界にやって来て、4日だがモノノフさんが武器の依頼を受けたのは、もっと前だったのだ。

 俺は覚悟を決めて、1日かけて王都エインヘリヤルとやってきたのだった。
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