転生したらオープニングで滅ぼされる村の子供?でした➖現代知識とゲーム知識とエッチな知識を駆使して生き残りたいと思います➖

揚惇命

文字の大きさ
上 下
1 / 142
1章 死亡フラグを回避せよ

ここは何処?

しおりを挟む
 初めまして、俺の名前は柳平友知ヤナギダイラトモカズ

 突然ですが死にそうになってます。

 どうしてこうなったのかを話したい。

 俺は、この日もいつものように仕事が立て込んでいたそれもこの目の前の先輩のせいである。

「おい柳平、聞いてんのか?俺はさ今日、彼女とデートなわけよ。俺の仕事の分も片付けてくれるよな?」

葛葉クズハ先輩、もう勘弁してほしいっす。毎日じゃないっすか。それに彼女じゃないっすよね」

「ウルセェな。先輩の言葉は絶対だっていつも言ってるだろ。縦社会って言葉わかる?わからねぇよな。じゃあ、そういうことで~」

「ちょっと待って」

「待てと言われて待つわけねぇだろ。学習能力が無いよな~柳平は。じゃあな」

 風のように俺に仕事を押し付けて去っていくクズ先輩。

 コイツのせいで俺はこれで丸々一ヶ月続けて残業だ。

 勿論、残業手当はない。

 それどころか残業として認めてくれない。

 この部長のせいで。

「はぁ、柳平君、また残業ですか。まぁサービス残業ということであれば問題ありませんよ。ほんと仕事ができない無能な部下を持つと辛いわね。少しは葛葉君を見習って欲しいわね」

「申し訳ありません田尻タジリ部長」

 この部長と葛葉先輩はデキてる。

 部長との濃密な時間のため先輩は俺に仕事を丸投げしているのだ。

 こんな職場なら辞めれば良いって?

 辞めたいのは山々だがこちらにもやめられない事情がある。

 俺の家は父子家庭で、早くに母を亡くした俺のために寝る間も惜しんで働きすぎた父は俺が無事に独り立ちをするのと同時に身体を壊して倒れてしまった。

 俺は今まで育ててくれた父のためにも働かなければならないのだ。

 そして、今日も1人、栄養剤を飲んで、パソコンと向き合って仕事をしていた。

 何度も眠たくなるのをその度に栄養剤を飲んで、誤魔化していた。

 これが良くなかった。

 用法要領はきちんと守らなければこうなる。

 今、俺は胸を抑えて苦しんでいる。

 間も無く命の灯火が消える気がした。

 こんな事ならもっとまともな職場に就職して、親父に美味しいものを食べさせてやりたかったな。

 ごめん親父。

 もう、意識が保たない。

 ふわっ。急に意識が戻されると俺は見知らぬ場所にいた。

「ここは何処?」

「おぅトモじゃねぇか。今日はどうした?えらく遅いじゃねぇか。とっとと手伝え」

 目の前に現れたオッサンの頬には十字に斬った傷があり、服装は熱を通さないような服の上からエプロンのようなものをつけ、汗が滴れないようにだろうか頭には布を巻いていて、手にはハンマーを持ち、鉄を打ち付けながらこちらを見ていた。

 トモ?

 確かに昔の俺のあだ名の一つだけどこんなオッサンに会ったことなんて勿論ない。

 困惑する俺をみて、そのオッサンは続ける。

「おいトモ。両親が死んで辛いのはわかるが弟や妹を養うんだろ。そういうお前の熱い心に共感して、まだ16歳のお前を雇ってやったんだ。仕事しねぇなら追い出すぞ」

 言葉は厳しいが俺のことを心底心配しているという想いは伝わる言い方だったが、急に弟や妹と言われても俺は一人っ子だ。

 全く意味がわからない。

 だが、この世界が何処かわからない以上、お金は必要だ。

 この目の前のオッサンが俺の新しい雇い主ということなら。

 ここは渋々でも働く必要があるだろう。

 だが仕事の内容がさっぱりわからない。

 渡された剣をどうしていいかわからず見つめる。

 できた防具に関してもそうだ。

 どうしていいかさっぱりわからない。

「おいトモ。お前どうしたんだ?まるで、武器や防具を触ったことがないみたいな顔しやがって、働いてもう1週間になるんだぞ。この武器と防具を王都エインヘリヤルに運ぶまでがお前の仕事だと言っただろう」

 王都エインヘリヤル?

 俺はその言葉に懐かしい気持ちになった。

 昔、親父が唯一娯楽として買ってくれたゲーム。

 今にして思えば、友達のいない俺に当時流行っていたゲームを買うことで友達作りのサポートをしたかったんだろう。

 めちゃくちゃ高いゲームソフトだったことは覚えている。

 そして、俺はこのゲームのお陰で友達ができた。

 そんな思い入れのあるゲームだったため、ソフトが擦り切れるまで、遊んだ。

 知ってるか?

 当時のゲームって、ゲームソフトにバックアップ用の電池が内蔵されてて、それが消えるとゲームが初期化されるんだ。

 俺はそうなるまでこのゲームを遊び尽くした。

 だから、王都エインヘリヤルと聞いて、すぐにここが俺が大好きだったゲーム『ダークドラゴンズ』の世界だと理解した。

 ははっ。

 嘘だろ。

 なろうのサイトでしか見たことがない異世界転生を俺がしてしまうなんて。

 そして、俺は偶然光が反射して、剣に映った俺の姿を見て愕然とする。

 てっきり勇者として転生したなどと楽観的に考えていた俺を絶望に突き落とすには十分だった。

 映った俺の姿は『ダークドラゴンズ』縮めてダクドラと呼ぶ。

 その世界でオープニングで滅ぼされる村の少年だった。

 えっ?

 この小ささで16歳なの?

 そう思わずには居られないほど。

 俺の身長は120センチといったところだろうか。

 それぐらいしかない。

 そもそもゲームが始まるまでに滅ぼされる村の人間に名前がある事すら知らなかったわけだが。

 いや、待て、確かオープニングムービーでは、何処かからの帰り道にリザードマンの部隊に見つかって、斬られて殺される。

 この何処かからの帰り道ってまさか王都エインヘリヤルから村への帰り道だったってことはないだろうか。

 そんな、まさか。

 もうすぐ俺はまた死ぬのか?

 嫌だ。

 なんとかしないと。

 そう決意するのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

悪役令嬢はバッドエンド回避で自由になり平穏に生きるはずだったのに、なぜこんなに求婚が!?

花草青依
恋愛
タイトル通りのギャグ短編小説/画像はChatGPT

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり
ファンタジー
望んで異世界へと来たわけではない。 望んで召喚などしたわけでもない。 ただ、落ちただけ。 異世界から落ちて来た落ち人。 それは人知を超えた神力を体内に宿し、神からの「贈り人」とされる。 望まれていないけれど、偶々手に入る力を国は欲する。 だからこそ、より強い力を持つ者に聖女という称号を渡すわけだけれど…… 中に男が混じっている!? 帰りたいと、それだけを望む者も居る。 護衛騎士という名の監視もつけられて……  でも、私はもう大切な人は作らない。  どうせ、無くしてしまうのだから。 異世界に落ちた五人。 五人が五人共、色々な思わくもあり…… だけれど、私はただ流れに流され……

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...