信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜

揚惇命

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2章 オダ郡を一つにまとめる

137話 貴族の終焉

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 傷だらけのルルーニ・カイロが倒れている側にナイフが刺さった姿で血を流している側近のテクノ・ポッパーが居た。

「カイロ卿、ご無事か?」

「ハハハ。ステイシー卿、遅いですよ。見ての通りです。我が部隊は敗北しました。亡き、マーガレット様のために一矢報いたかったのですが。後は、ステイシー卿にお任せしますよ」

「カイロ卿!カイロ卿!そんな馬鹿な!?栄華を誇った三つの公爵家がこうもあっさりとあのクソガキに滅ぼされたというのか。なんたることだ。それに、マーガレット様が亡くなっていたとは。では、スエモリキャッスルを取り返したというのは嘘であったか」

 どうやら、上手くいったようです。
 これでステイシー卿は怒りのまま、ワシヅフォートとやらに突撃するでしょう。
 これにて、貴族の終焉です。
 これからは、サブロー様を支える士族の時代が来るでしょう。
 力無き者は淘汰され、力ある者は身分を問わず登用される。
 サブロー様が目指すアイランド公国の統一のために私はそれをマーガレット様と共に陰ながら見守るとしましょう。
 ロマーニ、サブロー様のことは頼みましたよ。
 この言葉を最後に仮死薬の効いたルルーニ・カイロは、眠りにつくのだった。

「絶対に絶対にこんなことは認めん!許さんぞクソガキ。全軍、あの目障りなキャッスルを蹂躙せよ!」

「しかし、ステイシー卿。三公ですら勝てなかった相手に我々如きが勝てるはずが。ギャァ」

「御乱心なされたかステイシー卿!」

「煩い。煩い。煩い。ワシに逆らう者は、斬る。どうせお前らはクソガキに許されることはない貴族である以上な。ワシに従い、運命を共にするしかないのだ!」

「だからといって、味方を斬り殺して良いわけが。ギャァ」

「まだ、ワシに物申す者が居るか?」

 他の貴族たちは、この惨状を見て、どっちにしても死ぬ運命なら従うことに決める。
 これを見ていたロー・レイヴァンドとテキーラ・バッカスは。

「あのステイシー卿ですら気が触れるとは」

「サブロー様は貴族だから許さないとは一言も言っておらんのだがな」

「テキーラ殿の言う通り、若は逆らう反乱貴族には容赦しないと言っただけのこと。貴族全てならテキーラ殿や友たちだけでなくおれですらも含まれますからな。そこに気付けぬ彼らには、やはり若と共に歩むことは、できんのでしょうな」

「殿と一緒ならもっと上の世界を見れたというのに、哀れな奴らの末路よ」

「ったく。テキーラのオッサンは、一歩間違えれば向こう側だったってこと忘れんなよな。さて、突っ込んでくるのは、ステイシー卿だったか?どんな奴なんだ?」

 ジャガ・イモの質問にロー・レイヴァンドが答える。

「ステイシー卿は、清廉潔白で実直な方だ。今でこそ若への復讐に燃えるあまり周りが見えていないがロルフ様が御存命の頃は、近衛兵を任されるほどの剛の者。得意な陣は」

「いや。もう良い。大体わかった。要は、今のポマドは、ただの猪ってことだ。猪を狩るのに、力は必要ない。絡め取って、とっとと終わらせる。この中で1番、一騎打ちに強いのは、ローのオッサンなんだろう?」

「イモの言う通りじゃ。ワシはレイヴァンド卿には勝てん」

「なら、狩るのはローのオッサンに任せるしかねぇな。いや罠に嵌めて、もっと安全に狩るか。そうと決まれば、罠に嵌める役は、おい嬢ちゃん。サブローにもっと褒められたいよな?」

 コクコクと目を輝かせて頷くトガクシのアヤメ。

「なら、もう一仕事、してもらうか。あの猪馬鹿が見えるか?」

「サブローのことをクソガキって言ったジジイ?」

「はっ?お前、あの距離で何言ってるか聞こえてんのか?」

「うん。わかるよ。昔から聴力だけは人一倍良いんだよ~」

「へぇ。それは良いこと聞いたな。厄介な敵が話してる内容がこっちに筒抜けとか色々と使い道が」

 ボツボツと呟きながらニヤケ顔を浮かべるジャガ・イモにロー・レイヴァンドとテキーラ・バッカスは、絶対に弱点を晒さないことを堅く決める。

「良し。じゃあ、作戦はこうだ」

 ジャガ・イモから聞いた作戦を実行に移すアヤメ。

「サブロー、早く帰ってこないかなぁ」

 大きなため息混じりの呟きに反応するポマド・ステイシー。

「待て、女!今、サブローと言ったか?」

「うん。私、内縁の妻なの」

「あのクソガキの妻だと。これは良い。女、人質になってもらうぞ」

「えっ!?ひょっとして、敵だったの?じゃあ、死んでもらうよ」

 仮面にマスクを付けた謎の者が現れる。

「お前のその姿は。ワメクをやった仮面の男か。ちょうど良い。その首、貰い受けるぞ」

「俺に気を取られ過ぎたな。猪よ」

 アヤメが男口調でそういうと。
 誘き出された上から見下ろせる窪地から弓を一斉に受け、貴族の悉くが討ち死にした。
 生きてる者は、息も絶え絶えで、助からないだろう。

「クソガキに一矢も報いれんとは。このポマド。一生の不覚。ロルフ様。あのようなクソガキがオダを治めることをお許しくだされ。グフッ」

 全身に矢を受けたポマド・ステイシーは息を引き取った。
 これで、反乱貴族のほとんどが討ち死にし、残った者たちは武器を捨てて、投降した。
 そして、スエモリ城では、サブロー・ハインリッヒがマーガレット・ハインリッヒと対峙していた。
 そう、ゼンショウジ砦を取り返し、ショバタ城を取り返したサブロー・ハインリッヒは、そのままスエモリ城へと向かったのだった。
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