124 / 140
2章 オダ郡を一つにまとめる
124話 セルの胸騒ぎ
しおりを挟む
サブロー・ハインリッヒは、トガクシの案内に従い安全なルートで、アヅチ城へと向かう。
多くの反乱貴族がサブロー・ハインリッヒがいるワシヅ砦へと進軍し、アヅチ城を守る防衛戦力はそんなに多くない。
電光石火の奇襲にて、一気に攻め落とし、反乱貴族の退路を断つ。
「それが本作戦の目的である」
サブロー・ハインリッヒの言葉にセル・マーケットが口を開く。
「サブロー様の読み通り、スムーズに行けば良いのですが」
「セルが不安に思うのも無理はない。だが、反乱貴族の多くが出たという情報に嘘はない。アヅチを落とすは今」
「でも、何だか胸騒ぎがするんです」
「副長がそこまで不安に思うんならよ。兵を分けるってのはどうだ?」
「マタザさん!兵を分けるったって、どう分けるんです?サブロー様の護衛の方に多く割かないといけませんし」
「それは、副長に」
親衛隊の隊長を務めるポンチョ・ヨコヅナが口を挟む。
「セルの胸騒ぎは、よく当たるでごわす。ここは、親衛隊であるおいどんたちでサブロー様の周りを固めるでごわす」
忍びの里トガクシの頭領であるモリトキが口を挟む。
「いや待たれよ。セル殿と言ったか?その胸騒ぎ、どういうものだ?」
「あっはい。モリトキさん。何というか僕の胸騒ぎというのは、敵がサブロー様に対して、罠を張ってそうな。そんな気がして、ならないんです」
「罠か。ダンゾウは居るか!」
「ここに大旦那様」
「至急、ルート上で、暗殺に向いている地形を探れ。そこに恐らく敵が隠れていよう。先に制し、正確な情報を封鎖。ワシヅフォートへと攻め寄せる敵に偽の情報を流せ」
「ははっ!」
このやり取りにマタザが口を挟む。
「副長の胸騒ぎを信じてくれんのか?」
「人には他のものに見えない第六感というものが存在する。そういうのは大事にすべきだ。セル殿、またそういう何かを感じた時は遠慮なく言ってもらいたい。我らとて殿を守りたいのは同じゆえ」
「は、はい。宜しくお願いしますモリトキさん」
「うむ。こちらこそ宜しく頼むセル殿」
セル・マーケットの感じた胸騒ぎのように一つだけ安全ルートに少し逸れる形で身を隠しやすい森があった。
そこにマーズ・グランによって雇われた盗賊団が潜んでいた。
「オカシラ、それにしても盗人の俺らが暗殺とかできるんすかね?」
「アタイに聞くんじゃないよ。暗殺なんて、したことないのはアンタたちがよく知ってるじゃないかい。それにしても暗殺対象が子供だなんて、世も末だね。まぁ、金を受け取っちまった以上、やるしかないのは変わらないさね。気を抜くんじゃないよ。アンタたち」
「ヘイ」
金さえ積めばどんな宝でも盗み出す有名な盗賊団である。
それを何を勘違いしたかマーズ・グランは、金さえ積めばどんなことでもやると認識していた。
これは、マーズ・グランがトガクシに暗殺を依頼してすぐ後のこと。
「暗殺者は、多い方がいいよな。俺をコケにしやがったあのクソガキを殺すためにはよ。他に誰かいねぇのか?」
「マーズ様、金さえ積めば何でもする盗賊団が居ると聞いたことが」
「へぇ。盗賊か。バレずに宝を盗むってんならあのクソガキも簡単に殺せるかもしれねぇな。おい、そいつとコンタクトを取れ」
「承知しましたマーズ様」
顔も名前も知らない相手と連絡を取る手段は限られていて、手紙にてやり取りをした。
盗んで欲しい宝と聞いて二つ返事で引き受けたことを後悔する盗賊団のオカシラ。
「チッ。アタイとしたことがまさか盗むお宝が人の命だなんてね」
「オカシラにしては、珍しく気が緩みすぎてやしたね」
「ハァ。これでもアタイは悪人から盗む義賊だったってのにさ。よりにもよって、オダをよくしようとしている領主様の命だなんてね。ままならないものさね」
「オカシラの夢のためには仕方ありやせんよ」
「ハァ。だから憂鬱なんじゃないかい。アタイの夢を叶えてくれそうな相手を暗殺することがね」
「女だ男だと誰もが差別されない世界でやすか」
「話しすぎたね。今日は、こなさそうだね。さっさと寝るよアンタたち」
「ヘイ」
眠りにつく盗賊団をその場に置いて、そこし離れるオカシラ。
「誰だい?さっきから付けてんのはさ?」
「!?やれやれ、音も気配も消していたつもりですが気付かれるとは?我らが護るべき主のため、貴殿らには消えてもらいますぞ」
「主ときたかい。アンタたち、サブロー・ハインリッヒの手のものだね。良い腕利きを抱えているもんさね」
「知られたところで貴殿のお命は頂戴致す」
「構わないさね。やはり子供を暗殺するのは気が引けるもんさ。ホラ、一思いに。但し、アイツらのことは見逃してやってくれないかい?」
その言葉を聞いて、悪い人間では無いと判断したダンゾウは、小刀を鞘に収める。
「何やら訳がありそうな様子とお見受けした」
「へぇ。話のわかる人もいたもんさね。なーに、よくあるありきたりな夢の話さね。それを叶えるための資金がこれで得られるのさ。アタイの夢は男だの女だのと差別されない世界を作ることさ。そのためには、そういう人たちが集まる街を作る必要がある。それには金がかかるのさ。だから悪人から騙し取られたって人たちから依頼を受けて、取り返した3割を報酬として、貰ってたのさ。バチが当たったのさ。ホラ。ロクでもないだろう?さぁ、一思いに」
「貴殿を我らが主と引き合わせたい。貴殿らを雇った奴らは我らの頭領を嵌めた奴と同一人物かも知れぬゆえ」
「それは、面白い冗談!ってわけじゃないってのかい。全く、面白いね。良いさ。そういうことなら挨拶しようじゃないかい。案内してくれるかい」
「うむ。承知した」
マーズ・グランとは、つくづく脇の甘い男である。
自らが蒔いた種で、トガクシも盗賊団もサブロー・ハインリッヒに引き合わせたのだから。
こうして、トガクシに続き盗賊団まで、サブロー・ハインリッヒに取り込まれるかも知れない状態となるのだった。
多くの反乱貴族がサブロー・ハインリッヒがいるワシヅ砦へと進軍し、アヅチ城を守る防衛戦力はそんなに多くない。
電光石火の奇襲にて、一気に攻め落とし、反乱貴族の退路を断つ。
「それが本作戦の目的である」
サブロー・ハインリッヒの言葉にセル・マーケットが口を開く。
「サブロー様の読み通り、スムーズに行けば良いのですが」
「セルが不安に思うのも無理はない。だが、反乱貴族の多くが出たという情報に嘘はない。アヅチを落とすは今」
「でも、何だか胸騒ぎがするんです」
「副長がそこまで不安に思うんならよ。兵を分けるってのはどうだ?」
「マタザさん!兵を分けるったって、どう分けるんです?サブロー様の護衛の方に多く割かないといけませんし」
「それは、副長に」
親衛隊の隊長を務めるポンチョ・ヨコヅナが口を挟む。
「セルの胸騒ぎは、よく当たるでごわす。ここは、親衛隊であるおいどんたちでサブロー様の周りを固めるでごわす」
忍びの里トガクシの頭領であるモリトキが口を挟む。
「いや待たれよ。セル殿と言ったか?その胸騒ぎ、どういうものだ?」
「あっはい。モリトキさん。何というか僕の胸騒ぎというのは、敵がサブロー様に対して、罠を張ってそうな。そんな気がして、ならないんです」
「罠か。ダンゾウは居るか!」
「ここに大旦那様」
「至急、ルート上で、暗殺に向いている地形を探れ。そこに恐らく敵が隠れていよう。先に制し、正確な情報を封鎖。ワシヅフォートへと攻め寄せる敵に偽の情報を流せ」
「ははっ!」
このやり取りにマタザが口を挟む。
「副長の胸騒ぎを信じてくれんのか?」
「人には他のものに見えない第六感というものが存在する。そういうのは大事にすべきだ。セル殿、またそういう何かを感じた時は遠慮なく言ってもらいたい。我らとて殿を守りたいのは同じゆえ」
「は、はい。宜しくお願いしますモリトキさん」
「うむ。こちらこそ宜しく頼むセル殿」
セル・マーケットの感じた胸騒ぎのように一つだけ安全ルートに少し逸れる形で身を隠しやすい森があった。
そこにマーズ・グランによって雇われた盗賊団が潜んでいた。
「オカシラ、それにしても盗人の俺らが暗殺とかできるんすかね?」
「アタイに聞くんじゃないよ。暗殺なんて、したことないのはアンタたちがよく知ってるじゃないかい。それにしても暗殺対象が子供だなんて、世も末だね。まぁ、金を受け取っちまった以上、やるしかないのは変わらないさね。気を抜くんじゃないよ。アンタたち」
「ヘイ」
金さえ積めばどんな宝でも盗み出す有名な盗賊団である。
それを何を勘違いしたかマーズ・グランは、金さえ積めばどんなことでもやると認識していた。
これは、マーズ・グランがトガクシに暗殺を依頼してすぐ後のこと。
「暗殺者は、多い方がいいよな。俺をコケにしやがったあのクソガキを殺すためにはよ。他に誰かいねぇのか?」
「マーズ様、金さえ積めば何でもする盗賊団が居ると聞いたことが」
「へぇ。盗賊か。バレずに宝を盗むってんならあのクソガキも簡単に殺せるかもしれねぇな。おい、そいつとコンタクトを取れ」
「承知しましたマーズ様」
顔も名前も知らない相手と連絡を取る手段は限られていて、手紙にてやり取りをした。
盗んで欲しい宝と聞いて二つ返事で引き受けたことを後悔する盗賊団のオカシラ。
「チッ。アタイとしたことがまさか盗むお宝が人の命だなんてね」
「オカシラにしては、珍しく気が緩みすぎてやしたね」
「ハァ。これでもアタイは悪人から盗む義賊だったってのにさ。よりにもよって、オダをよくしようとしている領主様の命だなんてね。ままならないものさね」
「オカシラの夢のためには仕方ありやせんよ」
「ハァ。だから憂鬱なんじゃないかい。アタイの夢を叶えてくれそうな相手を暗殺することがね」
「女だ男だと誰もが差別されない世界でやすか」
「話しすぎたね。今日は、こなさそうだね。さっさと寝るよアンタたち」
「ヘイ」
眠りにつく盗賊団をその場に置いて、そこし離れるオカシラ。
「誰だい?さっきから付けてんのはさ?」
「!?やれやれ、音も気配も消していたつもりですが気付かれるとは?我らが護るべき主のため、貴殿らには消えてもらいますぞ」
「主ときたかい。アンタたち、サブロー・ハインリッヒの手のものだね。良い腕利きを抱えているもんさね」
「知られたところで貴殿のお命は頂戴致す」
「構わないさね。やはり子供を暗殺するのは気が引けるもんさ。ホラ、一思いに。但し、アイツらのことは見逃してやってくれないかい?」
その言葉を聞いて、悪い人間では無いと判断したダンゾウは、小刀を鞘に収める。
「何やら訳がありそうな様子とお見受けした」
「へぇ。話のわかる人もいたもんさね。なーに、よくあるありきたりな夢の話さね。それを叶えるための資金がこれで得られるのさ。アタイの夢は男だの女だのと差別されない世界を作ることさ。そのためには、そういう人たちが集まる街を作る必要がある。それには金がかかるのさ。だから悪人から騙し取られたって人たちから依頼を受けて、取り返した3割を報酬として、貰ってたのさ。バチが当たったのさ。ホラ。ロクでもないだろう?さぁ、一思いに」
「貴殿を我らが主と引き合わせたい。貴殿らを雇った奴らは我らの頭領を嵌めた奴と同一人物かも知れぬゆえ」
「それは、面白い冗談!ってわけじゃないってのかい。全く、面白いね。良いさ。そういうことなら挨拶しようじゃないかい。案内してくれるかい」
「うむ。承知した」
マーズ・グランとは、つくづく脇の甘い男である。
自らが蒔いた種で、トガクシも盗賊団もサブロー・ハインリッヒに引き合わせたのだから。
こうして、トガクシに続き盗賊団まで、サブロー・ハインリッヒに取り込まれるかも知れない状態となるのだった。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。


【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる