122 / 140
2章 オダ郡を一つにまとめる
122話 ハザマオカ攻防戦
しおりを挟む
サブロー・ハインリッヒがスエモリ城を急襲していた頃、ここハザマオカでは、タルカ郡の兵と小競り合いが行われていた。
ハザマオカの防将は、かつてナバル郡の将軍で、サブロー・ハインリッヒに降伏した降将のマッシュ・キノッコ。
副将の2人にサブロー・ハインリッヒから直々に名を与えられた元奴隷兵のヤスと士族として騎兵を率いるタンダザーク。
タルカの将は、デイル・マルの信頼厚く、将軍となったリゼット。
その配下の多くが使い捨てであり、両親や妻、或いは子供を人質に取ることで逆らえなくしていた。
「お前らの役目はわかっているな?」
「タルカのためオダの兵に殺されること」
「良くわかっているじゃないか。それがデイル様より与えられたお前たちの責務だ。タルカの民にオダへの復讐心を芽生えさせること。そのためにお前たちは選ばれた。逆らえばどうなるかわかっていような?」
「大事な家族や愛する者が殺される」
「そういうことだ。せいぜい、タルカのために捨て石になってくれたまえ。ハーッハッハッハッ。お前たちの死で、タルカはオダを憎み、もっともっと強くなるのだ」
高笑いして、後方を強力な盾兵により、徹底ガードしているリゼット。
逃げようものなら容赦なく殺して、その死をオダの仕業にする。
そういう構えである。
「なぁ、なんとからならないのかよ。どっちみち、俺たちはもう愛する人に会えないわけだよな?なら、向こうに亡命するとか」
「馬鹿を言うな。そんなことすれば母さんや父さんが責任を取らされて殺される。デイルとは残忍な男だ」
「どうすりゃ良いんだよ。妻の腹の中には俺の子が居るんだぞ。なのにこんなところで死ぬなんてよ」
「泣き言を言うな。ここに居る皆が同じ気持ちだ。だがこんなことに巻き込まれる相手側も可哀想なことに変わりない。せめて、我らの死がサブロー・ハインリッヒとやらのせいじゃなくデイル・マルだと明かせられれば」
「死ぬことは前提なのかよ」
「それは何をしようとも覆らない」
これに対して、マッシュ・キノッコはとんでもない奇策に出た。
「で、デイル様!ハザマオカの城に交渉を求める白旗が!?如何なさいますか?」
「そんなの無視して、奴隷共に攻撃させるのですよ。ククク」
「しかし、万が一、そんなことをしたことがバレれば、タルカのアイランド公国での立場はさらに悪く」
「馬鹿な宰相のせいで、もう底辺ですよ。陛下にオダによるタルカの討伐を飲ませた時点で。だから、今更そんな体裁など考える必要などありませんよぉ。さっさと攻撃を命じなさい。さて、俺は優雅なティータイムでもして高みの見物をしていますからねぇ」
マッシュ・キノッコのお陰で、助かったと思っていた奴隷たちに絶望が突きつけられる。
「全軍、白旗など見ていない。良いな。攻撃を開始せよ!」
「う、嘘だろ。向こうは交渉のための白旗を振ってくれているのに、無視して攻撃しろって言うのかよ!」
「おい、口を慎め。我らは所詮捨て駒、己の責務を全うするのみ」
「フン。そこのやつと違って、理解できているようだな。では、行け!」
その頃、ハザマオカ砦では。
「マッシュ様に報告!敵が攻撃陣形を組み前進を開始しました!」
「やはり、聞く耳持たんか。やれやれ、突っ込んでくる敵兵は、間違いなく捨て駒。どうしたものか」
「マッシュ将軍、サブロー様がかつて行ったように窪地に大岩で閉じ込めるのは如何です?」
「ヤスよ。目の付け所がよいな。確かに時間稼ぎとはなろう」
マッシュ・キノッコは、ヤスの作戦を受け入れて、窪地に誘導した奴隷兵を閉じ込めることに成功。
「上から岩が降って来るぞ。奥に奥に逃げ込め」
「押すな押すな。って、ここ行き止まりだぞ!引き返せ。って岩が道を塞いで」
「俺たちは一体どうなるんだ!?妻はどうなる?」
「事、ここに至っては、どうしようもない」
リゼットはデイル・マルからこう言う罠があると聞いていた。
それを踏まえて、正解ルートを教えていた。
なのに、その正解ルートが窪地に行き当たるという不思議な罠に目を丸くしていた。
「ば、ば、ば、馬鹿な!?デイル様から聞いていた情報通りならあそこは正解のルートのはず。なのにどうして?どうして、窪地に?」
「わかりません。ですがひとつ言えることは、奴隷共が誰1人として、死なずに捕えられてしまったということです。この状況で、人質を殺せば、彼らは問答無用で我らを裏切ります。どうしますか?」
「少し、黙っていてくださいよ!今、考えてるんですから!(まさか、あの罠は入る度に構造が変わるとでも言うのか?だとしたら正解ルートを導き出したとしても安全に抜けることはできない。だとしたらどうするべきか?声を張り上げれば、相手にも奴らが捨て駒と気付かれる。チッ、厄介な真似を。とっとと殺してくれれば良いものを。こうなったら交渉に応じて、あの奴隷共をどさくさに紛れて。それが良い。それが)交渉の白旗を上げるのです!」
「はっ」
こうして、マッシュ・キノッコとリゼットとの交渉が行われるのだった。
ハザマオカの防将は、かつてナバル郡の将軍で、サブロー・ハインリッヒに降伏した降将のマッシュ・キノッコ。
副将の2人にサブロー・ハインリッヒから直々に名を与えられた元奴隷兵のヤスと士族として騎兵を率いるタンダザーク。
タルカの将は、デイル・マルの信頼厚く、将軍となったリゼット。
その配下の多くが使い捨てであり、両親や妻、或いは子供を人質に取ることで逆らえなくしていた。
「お前らの役目はわかっているな?」
「タルカのためオダの兵に殺されること」
「良くわかっているじゃないか。それがデイル様より与えられたお前たちの責務だ。タルカの民にオダへの復讐心を芽生えさせること。そのためにお前たちは選ばれた。逆らえばどうなるかわかっていような?」
「大事な家族や愛する者が殺される」
「そういうことだ。せいぜい、タルカのために捨て石になってくれたまえ。ハーッハッハッハッ。お前たちの死で、タルカはオダを憎み、もっともっと強くなるのだ」
高笑いして、後方を強力な盾兵により、徹底ガードしているリゼット。
逃げようものなら容赦なく殺して、その死をオダの仕業にする。
そういう構えである。
「なぁ、なんとからならないのかよ。どっちみち、俺たちはもう愛する人に会えないわけだよな?なら、向こうに亡命するとか」
「馬鹿を言うな。そんなことすれば母さんや父さんが責任を取らされて殺される。デイルとは残忍な男だ」
「どうすりゃ良いんだよ。妻の腹の中には俺の子が居るんだぞ。なのにこんなところで死ぬなんてよ」
「泣き言を言うな。ここに居る皆が同じ気持ちだ。だがこんなことに巻き込まれる相手側も可哀想なことに変わりない。せめて、我らの死がサブロー・ハインリッヒとやらのせいじゃなくデイル・マルだと明かせられれば」
「死ぬことは前提なのかよ」
「それは何をしようとも覆らない」
これに対して、マッシュ・キノッコはとんでもない奇策に出た。
「で、デイル様!ハザマオカの城に交渉を求める白旗が!?如何なさいますか?」
「そんなの無視して、奴隷共に攻撃させるのですよ。ククク」
「しかし、万が一、そんなことをしたことがバレれば、タルカのアイランド公国での立場はさらに悪く」
「馬鹿な宰相のせいで、もう底辺ですよ。陛下にオダによるタルカの討伐を飲ませた時点で。だから、今更そんな体裁など考える必要などありませんよぉ。さっさと攻撃を命じなさい。さて、俺は優雅なティータイムでもして高みの見物をしていますからねぇ」
マッシュ・キノッコのお陰で、助かったと思っていた奴隷たちに絶望が突きつけられる。
「全軍、白旗など見ていない。良いな。攻撃を開始せよ!」
「う、嘘だろ。向こうは交渉のための白旗を振ってくれているのに、無視して攻撃しろって言うのかよ!」
「おい、口を慎め。我らは所詮捨て駒、己の責務を全うするのみ」
「フン。そこのやつと違って、理解できているようだな。では、行け!」
その頃、ハザマオカ砦では。
「マッシュ様に報告!敵が攻撃陣形を組み前進を開始しました!」
「やはり、聞く耳持たんか。やれやれ、突っ込んでくる敵兵は、間違いなく捨て駒。どうしたものか」
「マッシュ将軍、サブロー様がかつて行ったように窪地に大岩で閉じ込めるのは如何です?」
「ヤスよ。目の付け所がよいな。確かに時間稼ぎとはなろう」
マッシュ・キノッコは、ヤスの作戦を受け入れて、窪地に誘導した奴隷兵を閉じ込めることに成功。
「上から岩が降って来るぞ。奥に奥に逃げ込め」
「押すな押すな。って、ここ行き止まりだぞ!引き返せ。って岩が道を塞いで」
「俺たちは一体どうなるんだ!?妻はどうなる?」
「事、ここに至っては、どうしようもない」
リゼットはデイル・マルからこう言う罠があると聞いていた。
それを踏まえて、正解ルートを教えていた。
なのに、その正解ルートが窪地に行き当たるという不思議な罠に目を丸くしていた。
「ば、ば、ば、馬鹿な!?デイル様から聞いていた情報通りならあそこは正解のルートのはず。なのにどうして?どうして、窪地に?」
「わかりません。ですがひとつ言えることは、奴隷共が誰1人として、死なずに捕えられてしまったということです。この状況で、人質を殺せば、彼らは問答無用で我らを裏切ります。どうしますか?」
「少し、黙っていてくださいよ!今、考えてるんですから!(まさか、あの罠は入る度に構造が変わるとでも言うのか?だとしたら正解ルートを導き出したとしても安全に抜けることはできない。だとしたらどうするべきか?声を張り上げれば、相手にも奴らが捨て駒と気付かれる。チッ、厄介な真似を。とっとと殺してくれれば良いものを。こうなったら交渉に応じて、あの奴隷共をどさくさに紛れて。それが良い。それが)交渉の白旗を上げるのです!」
「はっ」
こうして、マッシュ・キノッコとリゼットとの交渉が行われるのだった。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる