118 / 140
2章 オダ郡を一つにまとめる
118話 トガクシの協力
しおりを挟む
マリーがダンジョンの魔物の間引きをあらかた済ませて、トガクシの里に帰るとすっかり元気になった頭領のモリトキが起き上がっていた。
「話は娘と妻から聞いた。俺を助けるためとはいえ、トガクシの掟を破ったことは、許すことはできん。連帯責任として全員に罰を与える」
「御自身の命よりも掟が大事と言うのですか?」
「それが我らトガクシの務め。余所者は黙っていてもらおう。それに、ダンジョンの魔物の間引きを放り出して、暗殺任務などを受けていたなど。見過ごすことはできん」
「それが恩人に対するトガクシのやり方だと捉えて良いのですね」
「なんとでも言うがいい。助けてくれたことには感謝する。騙されていたとはいえ、あのような得体の知れない薬を飲んだことは俺の落ち度だ。だが、どのような理由があろうとトガクシの掟を破ることは許さん」
「私はトガクシの掟よりもパパが大事だよ。パパは、ママや私が同じ状態で、救える方法があるのにトガクシの掟を優先するの?」
「当然だ。それがトガクシの掟。先祖代々、受け継いできたトガクシの掟なのだ。我らは、この地にて魔物を決して外に出さないように守り抜く。そのためのトガクシの掟だ」
「ですが大旦那様。我らにとって、貴方様は里の長であると同時に行き場を失った我らを迎え入れてくださった恩人じゃ。辛そうなお姿をずっと見ていられなかったゆえ、全ての罪は里を臨時で預かる身であったワシにある。せめて、若いもんへの罰は不問にして貰えまいか?」
「ならんと言いたいところだが相手がエルフとなれば話は別だ。聞きたいことが山程ある。ゆえに皆への罰は、2度とダンジョンの魔物を溢れさせぬように間引きを徹底することだ。良いな」
「は。ははぁ」
「では下がれ。俺は、このエルフの女性と話がある」
頭領の言葉に集まっていたトガクシの忍者たちが解散し、この場には頭領のモリトキ、妻のチヨメ、娘のアヤメが残った。
「ふぅ。お客人、見苦しいところを見せた。威厳を保つためには仕方のないことなのだ理解せよ」
「では、先ほどのは表向きの体裁だと捉えて良いのですね」
「うむ。俺の命を救ってくれたこと感謝する。それにしても噂に聞くエルフと逢えようとは、俺が死んで、向こうに行く時ご先祖様に良い土産話ができたというものだ」
「パパ。じゃあ、さっきのは全て」
「嘘ではない。俺は家族よりもトガクシの掟を重要視しておる。ご先祖様より託された想いゆえ、それを放り出すことはできんのだ。しかし、家族を見捨てることもまたできんだろう。だが天秤にかけるほどトガクシの掟は、俺にとって大事なことなのだ。許せ」
「アヤメ、我儘を言わないの」
「でも。でも。ママは、それで良いの?」
「パパのできないことをするのが私の務めだもの。パパがトガクシの掟を優先するというのならママである私がアヤメの命を優先するわ」
「ママ!」
「足りない部分を補い合うのが夫婦ですもの」
「そういうことだ。今回、俺のことだけを優先したせいでダンジョンの魔物の量が膨れ上がったのだ。この御方が居なければ、おそらくこの里だけでなく、この世界が混沌に飲み込まれていただろう。今後、このようなことにならぬように、徹底しなければならん」
「ダンジョンの魔物は、完全に駆逐したつもりでも何処からか湧きます」
「!?やはり、完全に魔物を消し去ることはできんのだな。噂に聞くエルフなら可能かと期待したのだが」
「ダンジョンを完全に崩壊させることができるのは聖剣に選ばれた勇者のみだと私の生まれたところでは、言われていました。その勇者も今は既に亡く」
「やはり、ご先祖様の書いた手記は本当であったか。魔王とやらと相打ちとなり勇者は倒れ、魔王が死んでも魔物の数は一向に減らず。そこを逃げ出すしか無かったと」
「えぇ。あのような悲惨なことをここで起こしてはなりません。今まで、水面下で守り続けてくれたことエルフの代表として、御礼を言わせていただきます」
「そのようなこと。頭を上げられよ。この地に生きるものとして当然のことをしているだけだ。しかし、困ったものだ。ダンジョンを完全に滅することのできる勇者は既に亡く。間引くことしかできんとは、歯痒いものだ」
「そうでもありません。私は既に勇者はこの世界にいると考えています。まだ小さな光ですがいずれ大きな光となると」
「そのような御方がいると?」
「まだ小さな光ですが。私が御仕えしているサブロー・ハインリッヒ様は、かつて私が居た大陸の勇者と似た雰囲気を漂わせています」
「ふむぅ。その者ならいずれダンジョンを完全に破壊できるかも知れないと?」
「可能性の話ですが。私はそう信じております。無茶をなされる方ですので、御守りするのがとても大変ですが」
「ハハッ。小さな光ならそれぐらいが良いのであろう。しかし、そうか。噂に聞くエルフが入れ込む程のそれほどの御仁が居るのか」
「サブローにはね。不思議な魅力があるの。プロポーズされたし」
「アヤメよ。今、なんと申した?」
「プロポーズされたの!私の勘違いだったけど」
「なんだ勘違いか。危うく、殺しに行こうかと思ったぞ。だが不思議な魅力か。エルフ殿」
「マリーで構いません」
「うむ。では、マリー殿、我らトガクシ。その小さき光を守るため協力させてもらいたい。貴殿に同行しても構わないか?」
「是非、お願いします」
はぁ。
これでひとまず私の役目は果たせましたね。
若様にこれ以上無茶をさせるわけにはいきませんからダンジョンのことは伏せて、トガクシの協力を取り付けたことを報告して、モリトキ殿を紹介するとしましょう。
「話は娘と妻から聞いた。俺を助けるためとはいえ、トガクシの掟を破ったことは、許すことはできん。連帯責任として全員に罰を与える」
「御自身の命よりも掟が大事と言うのですか?」
「それが我らトガクシの務め。余所者は黙っていてもらおう。それに、ダンジョンの魔物の間引きを放り出して、暗殺任務などを受けていたなど。見過ごすことはできん」
「それが恩人に対するトガクシのやり方だと捉えて良いのですね」
「なんとでも言うがいい。助けてくれたことには感謝する。騙されていたとはいえ、あのような得体の知れない薬を飲んだことは俺の落ち度だ。だが、どのような理由があろうとトガクシの掟を破ることは許さん」
「私はトガクシの掟よりもパパが大事だよ。パパは、ママや私が同じ状態で、救える方法があるのにトガクシの掟を優先するの?」
「当然だ。それがトガクシの掟。先祖代々、受け継いできたトガクシの掟なのだ。我らは、この地にて魔物を決して外に出さないように守り抜く。そのためのトガクシの掟だ」
「ですが大旦那様。我らにとって、貴方様は里の長であると同時に行き場を失った我らを迎え入れてくださった恩人じゃ。辛そうなお姿をずっと見ていられなかったゆえ、全ての罪は里を臨時で預かる身であったワシにある。せめて、若いもんへの罰は不問にして貰えまいか?」
「ならんと言いたいところだが相手がエルフとなれば話は別だ。聞きたいことが山程ある。ゆえに皆への罰は、2度とダンジョンの魔物を溢れさせぬように間引きを徹底することだ。良いな」
「は。ははぁ」
「では下がれ。俺は、このエルフの女性と話がある」
頭領の言葉に集まっていたトガクシの忍者たちが解散し、この場には頭領のモリトキ、妻のチヨメ、娘のアヤメが残った。
「ふぅ。お客人、見苦しいところを見せた。威厳を保つためには仕方のないことなのだ理解せよ」
「では、先ほどのは表向きの体裁だと捉えて良いのですね」
「うむ。俺の命を救ってくれたこと感謝する。それにしても噂に聞くエルフと逢えようとは、俺が死んで、向こうに行く時ご先祖様に良い土産話ができたというものだ」
「パパ。じゃあ、さっきのは全て」
「嘘ではない。俺は家族よりもトガクシの掟を重要視しておる。ご先祖様より託された想いゆえ、それを放り出すことはできんのだ。しかし、家族を見捨てることもまたできんだろう。だが天秤にかけるほどトガクシの掟は、俺にとって大事なことなのだ。許せ」
「アヤメ、我儘を言わないの」
「でも。でも。ママは、それで良いの?」
「パパのできないことをするのが私の務めだもの。パパがトガクシの掟を優先するというのならママである私がアヤメの命を優先するわ」
「ママ!」
「足りない部分を補い合うのが夫婦ですもの」
「そういうことだ。今回、俺のことだけを優先したせいでダンジョンの魔物の量が膨れ上がったのだ。この御方が居なければ、おそらくこの里だけでなく、この世界が混沌に飲み込まれていただろう。今後、このようなことにならぬように、徹底しなければならん」
「ダンジョンの魔物は、完全に駆逐したつもりでも何処からか湧きます」
「!?やはり、完全に魔物を消し去ることはできんのだな。噂に聞くエルフなら可能かと期待したのだが」
「ダンジョンを完全に崩壊させることができるのは聖剣に選ばれた勇者のみだと私の生まれたところでは、言われていました。その勇者も今は既に亡く」
「やはり、ご先祖様の書いた手記は本当であったか。魔王とやらと相打ちとなり勇者は倒れ、魔王が死んでも魔物の数は一向に減らず。そこを逃げ出すしか無かったと」
「えぇ。あのような悲惨なことをここで起こしてはなりません。今まで、水面下で守り続けてくれたことエルフの代表として、御礼を言わせていただきます」
「そのようなこと。頭を上げられよ。この地に生きるものとして当然のことをしているだけだ。しかし、困ったものだ。ダンジョンを完全に滅することのできる勇者は既に亡く。間引くことしかできんとは、歯痒いものだ」
「そうでもありません。私は既に勇者はこの世界にいると考えています。まだ小さな光ですがいずれ大きな光となると」
「そのような御方がいると?」
「まだ小さな光ですが。私が御仕えしているサブロー・ハインリッヒ様は、かつて私が居た大陸の勇者と似た雰囲気を漂わせています」
「ふむぅ。その者ならいずれダンジョンを完全に破壊できるかも知れないと?」
「可能性の話ですが。私はそう信じております。無茶をなされる方ですので、御守りするのがとても大変ですが」
「ハハッ。小さな光ならそれぐらいが良いのであろう。しかし、そうか。噂に聞くエルフが入れ込む程のそれほどの御仁が居るのか」
「サブローにはね。不思議な魅力があるの。プロポーズされたし」
「アヤメよ。今、なんと申した?」
「プロポーズされたの!私の勘違いだったけど」
「なんだ勘違いか。危うく、殺しに行こうかと思ったぞ。だが不思議な魅力か。エルフ殿」
「マリーで構いません」
「うむ。では、マリー殿、我らトガクシ。その小さき光を守るため協力させてもらいたい。貴殿に同行しても構わないか?」
「是非、お願いします」
はぁ。
これでひとまず私の役目は果たせましたね。
若様にこれ以上無茶をさせるわけにはいきませんからダンジョンのことは伏せて、トガクシの協力を取り付けたことを報告して、モリトキ殿を紹介するとしましょう。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。


【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる