信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜

揚惇命

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2章 オダ郡を一つにまとめる

101話 マーガレットを巡る攻防

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 タルカを治めるデイル・マルは、ナバルのドレッド・ベアの切り札を知り、どうやって先にマーガレット・ハインリッヒを奪取するかを考えていた。

 ここからオダに侵攻するには、ハザマオカを通らねばなりませんねぇ。
 しかしあの地は、宰相のお墨付きを得て、どう考えても魔法としか思えない方法での惨殺が風の仕業ということで、許可されてしまいましたからねぇ。
 いやはや、どうやってドレッドの奴を出し抜くのが良いか頭を悩ませてしまいますよ。
 アダムス君は娘を養女に出して、関係ないと切り捨てられるようにするなど情よりも実を取る人間ですから問題ないですがねぇ。
 それに引き換えリチャード君は、俺に対して嫌悪感を隠すこともしませんでしたから厄介この上ないと言えますよ。
 ヒヒッ。
 まぁ、守るものがある分、手玉に取りやすいので、構いませんが。
 取り敢えず、目眩しの役割はリゼット君に担ってもらうとしましょうか。
 俺は、この隙にマーガレット・ハインリッヒが何処にいるか調べるとしますか。

 そう考えて、デイル・マルはハザマオカを避けて、道なき道を顔を隠してフードを深く被り、1人で進軍していた。
 その頃、ナバルを治めるドレッド・ベアは、配下のサム・ライを総大将にすることで、自身の預かり知らぬところで、サム・ライが勝手にやったことだと言い逃れできる情報を作りつつ、周りを囲まれて、風前の灯であるレーニン・ガロリングと接触するかを考えていた。

 ふむぅ。
 タルカに参戦させるために俺様自身も動かざる終えなかったとはいえ、我ながら素晴らしい策ではないか。
 万が一の時は、全ての責任をサム・ライに取らせて、陛下、いや宰相からの追求を回避する。
 宰相がサブロー・ハインリッヒの肩を持ったのは、恐らくハインリッヒ家が我ら諸侯貴族と違い、開拓王と言われた初代ルートヴィッヒ1世陛下の血を引くと言われている王侯貴族の中でも位が高いからだろう。
 所詮、宰相殿は外様の我らのことを疎ましく思っているということだ。
 あんな小さい土地の王侯貴族よりも我らの方がマジカル王国との戦において、兵も金も使ってやってると言うのに、全く気に食わん。
 そんな俺様にも運が向いてきたというものだ。
 マーガレット・ハインリッヒさえ手に入れば、陛下の信頼は鰻登り、サブロー・ハインリッヒの言など取り下げられ、タルカを飲み込むこともない。
 あのようなクソガキに領土を増やされては、堪らんからな。
 折を見て、デイルの奴にも消えてもらって、俺様の意のままになる奴を据えて、裏から操れば良い。
 ククッ。
 何れは、その方法でオダも。

 ドレッド・ベアは、そう考えを纏めるとオダ郡の方を見ながらニヤリと笑みを浮かべるのだった。
 その頃、追い詰められたレーニン・ガロリングは、焦っていた。

「まだか。まだ。マーガレットの奴は、動かんのか!」

「はい。この期に及んでも私がここにいることの意味がわからないなんて、お父様も耄碌したのでは、と」

「ふざけるな!マルネキャッスルに続きナルミキャツスルまで落ち、難攻不落と言われたオオタカキャッスルまで、ものの数日で落ちたというのに。それ程、その地が重要ならば、それこそマーガレットお抱えのルルーニにでも任せて、こちらに来れば良いと言うのだ!もしも、もしもドレッドにマーガレットがここに居ないことがバレては、どのようなことになるか」

「もう一度、もう一度、説得に当たります」

「何としても。最悪引っ張ってでもここにマーガレットを連れてくるのだ!良いな?」

「はっ。必ず」

 こうして、勝手に交渉材料にされているマーガレット・ハインリッヒはというと。

「タルカにしては、動くのが遅かったわね。狙いは私かしら。クスクス。モテる女は辛いわね」

「(サブロー様の知謀は、間違いなくマーガレット様譲りだろう。ここまで、ご一緒して、確信に変わった。流石、女性として産まれなければ、将軍になれたかもしれないと称されるお人だ。人を率いるカリスマ性だけでなく、全てにおいて、ガロリング卿など足下にも及ばない。この方を死なせることは、オダ郡の弱体化に繋がる。何としても私が守り通さねば)」

「ルルーニ。気負う必要は無いわ。サブローのことだもの。これも全て、計算付くでしょう」

「しかし、タルカを取られることに危機感を覚えたナバルが参戦するのはともかく、チャルチやマリーカまで、出てくることを流石のサブロー様でも判断できないのでは?」

「そうね。計算外のことが起きていて、今必死に情報を集めているんじゃないかしら?特に後方の城に関しては、最悪見捨てることも視野に入れているでしょうね。当主として、難しい決断を迫られているのは間違いないわ。でもサブローのことだもの。即断即決、狙うのはお父様の首じゃないかしら。さて、ここからはどこまでサブローを支援できるかよ。この機に乗じて、残りの邪魔な貴族にも動いてもらうとしましょうか」

「どうするつもりです?」

「そんなの決まってるじゃない。サブローのいなくなったショバタキャッスルを掠め取るのよ。落ちたと知れば、後先考えられない馬鹿な貴族連中だもの。こぞって、勝ち馬に乗ろうとするでしょうね。負けが決まっている戦とも知らずに。だって、その頃にはサブローのことだからお父様を追い詰めてるでしょうし。だから私たちが動くのは3日後よ。それまでお父様の使者をのらりくらりで宜しくね」

「か、かしこまりました」

 こうして、マーガレット・ハインリッヒは、自室へと籠ったので、レーニン・ガロリングからの使者をやり込めるのは、ルルーニ・カイロの仕事である。
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