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2章 オダ郡を一つにまとめる
93話 4郡会談
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タルカ郡のデイル・マルの元に、ナバル郡のドレッド・ベアの代理としてサム・ライ、チャルチ郡を治めるアダムス・プリスト、その弟でマリーカ郡を治めるリチャード・パルケスが集まった。
「ヒヒッ。この度はきてくれて感謝するよ。アダムスにリチャード」
「ハインリッヒ卿のことで、火急の要件と聞けば、来るしかあるまい。あの御仁は、危険ゆえな」
「相変わらず白々しいねマル卿。こちらの弱みを陛下に告げると脅しつけておいて」
「ヒヒッ。脅しつけたなど心外ですなぁ。この国が禁止している宗教を熱心に」
「弟が申し訳なかった。それぐらいにしてくれるかデイル様」
「ヒヒッ。リチャード君もアダムス君みたいに従順じゃ無いと。うっかりと話しちゃうかもしれないねぇ。ヒヒヒ」
「ハァ。失礼しましたデイル様」
「わかれば良いんだよリチャード君、早速本題にはいるとしようかなぁ。陛下の御前で、うちを一方的に悪者にしたオダ郡のクソガキに痛い目にあってもらおうと思っていてねぇ。内乱に乗じて、攻めることにしたよ。ヒヒッ。アダムス君とリチャード君は、ドレッド殿と共にハザマオカを迂回して、攻め込んでもらおう。ハザマオカは、こちらに任せてもらうよ。ヒヒッ」
「デイル様、お一人で大丈夫ですか?」
「アダムス君の心配は有難いけどねぇ。ハザマオカは、何が起こるかわからないからねぇ。これも僕の優しさとおもってくれたまえよ」
「どうせ、こちらに任せて自分は睨み合いでもして、口実を作る算段なだけでしょ」
「ハァ。リチャード君、僕を目の敵にするのはやめたまえよ。うっかり口を滑らせて、あんなことやこんなことまでぶちまけちゃうかもしれないよ?それでも良いのかなぁ?ヒヒッ」
「リチャード、お前は言われたことだけをやっていれば良いのだ!一々、口を出すな無礼者!」
「兄さん。わかったよ」
「アダムス君、弟の躾は頼むよ。じゃないとあのことを陛下にうっかりと話してしまうからねぇ」
「承知しました」
リチャード・パルケスは、体裁を守るあまり、時世の読めない兄の説得は不可能だと感じた。
かと言って、兄を簡単に見捨てる事もできない。
デイル・マルに良いように使われて、捨て駒として使われることを許容して良いのか。
そこで、リチャード・パルケスはキチョウ・プリストの言っていた言葉を思い出す。
サブロー・ハインリッヒが私の思う人であれば、今味方についた人を悪く扱いはしないと。
しかし、それは兄を見捨てる事と同じ。
果たして、本当にそうであろうか。
兄を助けるために敵方とあえて通じることもできるのでは無いか。
いや、やはり不義には変わり無いか。
「リチャード、さっさと来い!」
「今行くよ兄さん」
「全く、トロ臭くて、ダメな弟を持つと兄は苦労する」
「アダムス君、本当のことを言ったら彼が可哀想じゃ無いかい。ヒヒヒ」
「いえ、この馬鹿には一度きちんと上下関係を叩き込む必要があります。デイル様の言葉に口答えせぬように」
「ヒヒッ。徹底的に頼むよ。アダムス君には期待しているからねぇ」
「有難き幸せ。陛下の御前では、あの体たらく失礼した。我が家の汚点のことを黙っていてくださり、本当に感謝しております」
「良いんだよ。今思えば、あれは出来レースみたいなものさ。クソガキがどうやって宰相殿を味方に付けたのかは知らないけどねぇ」
「全くです。しかし、陛下の言葉を違えて協力するのだ。ベア卿の強力なカードは、よほど信頼できるのであろうなサム殿」
「アダムス殿。期待して良い。それに我らは血判状で結ばれた兄弟となった。生きるも死ぬも同じぞ。協力は惜しまん。今、内乱に荒れるオダ郡へと攻めかかれば、その地を得られよう」
「では、頼んだよサム殿」
「そちらも二の足は踏まぬように」
「わかった。わかった」
こうして、アダムス・プリスト、リチャード・パルケス、サム・ライが席を外す。
「ヒヒッ。ハザマオカの前線に派兵した駒に働いてもらうとしますかねぇ。リゼット君に指令を届けてもらえますかな?」
「イエッサ!」
オダ郡、ハザマオカに急造された城の牽制のため、国境線の兵士詰所を任されているリゼットの元に、本部からの指令が届けられる。
「ふむ。ふむ。な、なんと!?ハザマオカに駒を動かせと。しかし、あそこは首を飛ばす風が吹く地。対策が無ければ、駒が減るだけですが。まぁ、駒の心配など必要ありませんな。わかりました」
デイル・マルは、厳格な上下関係で民を縛る独裁者である。
領主のデイル・マルが王。
イエスマンである幹部が監視員。
その下に兵士、奴隷兵、駒であり、彼らには尊厳が与えられない。
即ち生きるも死ぬも王であるデイル・マルの機嫌次第なのである。
その中でも駒というのは特に酷い扱いで、家族を人質に使い捨てにできる人間たちのことを指している。
「喜べお前たち。我らが王から命令が降った。こちらからハザマオカを攻める。駒共、栄えある先陣を任す。大いに働くのだ。逃げ出そうとしたり、敵に降ろうとすれば、どうなるかわかっておろうな」
リゼットは、こう脅して、駒共をハザマオカへと進ませたのである。
「ヒヒッ。この度はきてくれて感謝するよ。アダムスにリチャード」
「ハインリッヒ卿のことで、火急の要件と聞けば、来るしかあるまい。あの御仁は、危険ゆえな」
「相変わらず白々しいねマル卿。こちらの弱みを陛下に告げると脅しつけておいて」
「ヒヒッ。脅しつけたなど心外ですなぁ。この国が禁止している宗教を熱心に」
「弟が申し訳なかった。それぐらいにしてくれるかデイル様」
「ヒヒッ。リチャード君もアダムス君みたいに従順じゃ無いと。うっかりと話しちゃうかもしれないねぇ。ヒヒヒ」
「ハァ。失礼しましたデイル様」
「わかれば良いんだよリチャード君、早速本題にはいるとしようかなぁ。陛下の御前で、うちを一方的に悪者にしたオダ郡のクソガキに痛い目にあってもらおうと思っていてねぇ。内乱に乗じて、攻めることにしたよ。ヒヒッ。アダムス君とリチャード君は、ドレッド殿と共にハザマオカを迂回して、攻め込んでもらおう。ハザマオカは、こちらに任せてもらうよ。ヒヒッ」
「デイル様、お一人で大丈夫ですか?」
「アダムス君の心配は有難いけどねぇ。ハザマオカは、何が起こるかわからないからねぇ。これも僕の優しさとおもってくれたまえよ」
「どうせ、こちらに任せて自分は睨み合いでもして、口実を作る算段なだけでしょ」
「ハァ。リチャード君、僕を目の敵にするのはやめたまえよ。うっかり口を滑らせて、あんなことやこんなことまでぶちまけちゃうかもしれないよ?それでも良いのかなぁ?ヒヒッ」
「リチャード、お前は言われたことだけをやっていれば良いのだ!一々、口を出すな無礼者!」
「兄さん。わかったよ」
「アダムス君、弟の躾は頼むよ。じゃないとあのことを陛下にうっかりと話してしまうからねぇ」
「承知しました」
リチャード・パルケスは、体裁を守るあまり、時世の読めない兄の説得は不可能だと感じた。
かと言って、兄を簡単に見捨てる事もできない。
デイル・マルに良いように使われて、捨て駒として使われることを許容して良いのか。
そこで、リチャード・パルケスはキチョウ・プリストの言っていた言葉を思い出す。
サブロー・ハインリッヒが私の思う人であれば、今味方についた人を悪く扱いはしないと。
しかし、それは兄を見捨てる事と同じ。
果たして、本当にそうであろうか。
兄を助けるために敵方とあえて通じることもできるのでは無いか。
いや、やはり不義には変わり無いか。
「リチャード、さっさと来い!」
「今行くよ兄さん」
「全く、トロ臭くて、ダメな弟を持つと兄は苦労する」
「アダムス君、本当のことを言ったら彼が可哀想じゃ無いかい。ヒヒヒ」
「いえ、この馬鹿には一度きちんと上下関係を叩き込む必要があります。デイル様の言葉に口答えせぬように」
「ヒヒッ。徹底的に頼むよ。アダムス君には期待しているからねぇ」
「有難き幸せ。陛下の御前では、あの体たらく失礼した。我が家の汚点のことを黙っていてくださり、本当に感謝しております」
「良いんだよ。今思えば、あれは出来レースみたいなものさ。クソガキがどうやって宰相殿を味方に付けたのかは知らないけどねぇ」
「全くです。しかし、陛下の言葉を違えて協力するのだ。ベア卿の強力なカードは、よほど信頼できるのであろうなサム殿」
「アダムス殿。期待して良い。それに我らは血判状で結ばれた兄弟となった。生きるも死ぬも同じぞ。協力は惜しまん。今、内乱に荒れるオダ郡へと攻めかかれば、その地を得られよう」
「では、頼んだよサム殿」
「そちらも二の足は踏まぬように」
「わかった。わかった」
こうして、アダムス・プリスト、リチャード・パルケス、サム・ライが席を外す。
「ヒヒッ。ハザマオカの前線に派兵した駒に働いてもらうとしますかねぇ。リゼット君に指令を届けてもらえますかな?」
「イエッサ!」
オダ郡、ハザマオカに急造された城の牽制のため、国境線の兵士詰所を任されているリゼットの元に、本部からの指令が届けられる。
「ふむ。ふむ。な、なんと!?ハザマオカに駒を動かせと。しかし、あそこは首を飛ばす風が吹く地。対策が無ければ、駒が減るだけですが。まぁ、駒の心配など必要ありませんな。わかりました」
デイル・マルは、厳格な上下関係で民を縛る独裁者である。
領主のデイル・マルが王。
イエスマンである幹部が監視員。
その下に兵士、奴隷兵、駒であり、彼らには尊厳が与えられない。
即ち生きるも死ぬも王であるデイル・マルの機嫌次第なのである。
その中でも駒というのは特に酷い扱いで、家族を人質に使い捨てにできる人間たちのことを指している。
「喜べお前たち。我らが王から命令が降った。こちらからハザマオカを攻める。駒共、栄えある先陣を任す。大いに働くのだ。逃げ出そうとしたり、敵に降ろうとすれば、どうなるかわかっておろうな」
リゼットは、こう脅して、駒共をハザマオカへと進ませたのである。
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