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2章 オダ郡を一つにまとめる
87話 衝撃
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公爵家に次ぐ地位であった侯爵家の一つデビ家の滅亡は、反乱軍に動揺を与えた。
「あのクソガキは、1度ならず2度までも貴族を滅ぼしたのか。ぐぬぬ。ふざけるな!このスエモリと目と鼻の先の城に入ったマーガレットは何をしている!」
「落ち着いてください。総大将が怒りで我を忘れては、また皆がレーニン様よりもマーガレットを連合の当社にと騒ぎ立てますぞ」
「そんなことはわかっている!よもや、ルルーニがマーガレットをたぶらかしているのではあるまいな。直ぐに、眼下に見えるショバタを攻撃しろと伝えてこい!」
「はっはい」
伝令がマーガレット・ハインリッヒとルルーニ・カイロが制圧したゼンショウジ砦へとやってくる。
「そう。迷惑をかけたわね」
「いえ、レーニン様は、サブローの行いに対して怒り心頭で、お止めすることはできません。どうか。再び、我らに勢いをもたらせるためショバタを」
「お父様に伝えなさい。怒りで、我を失うのは結構だけど大局を見誤らないことねと」
「あの、それは?」
「何故、ここに私が布陣したと?ここが双方に取って、喉元だからよ。私がここを動けば、サブローはまたショバタを放棄して、この城に布陣するでしょうね」
「???」
「はぁ。流石お父様の部下ね。わかりやすく言うと。サブローにとって、シャバタは重要じゃ無いってこと。寧ろ、サブローのこと。私がここから動くのを虎視眈々と狙ってるでしょうね。お父様なら囃し立てるって読んでるんじゃ無いかしら」
「それは、動く気は無いということでしょうか?」
「えぇ、でも。そうね。軽く牽制だけで良いなら動きましょうか。ルルーニ、騎馬隊千で山を降りて、攻めるそぶりを見せなさい」
「かしこまりました」
「これで、貴方もお父様に良い報告ができるわよね?」
「はっはい。ありがとうございます」
伝令は満足して帰っていく。
「さて、サブローはどうするかしら。私の釣りに乗るのかしら」
サブロー・ハインリッヒの居城、ショバタ城。
「報告、ゼンショウジ砦の敵軍に動きあり、騎馬隊が山を駆け下り、こちらに進軍中、率いている将は、ルルーニ・カイロとのこと」
「であるか。大まかな数は?」
「多く見積もって、千程かと」
「千か。母上が動かしたにしては、少ないな。それに率いる将がルルーニというのもな。どうしたものか」
「サブロー様をここから釣り出すのが目的でしょう」
「ほぉ。何故、そう思うルイスよ」
「サブロー様がマーガレット様のことを熟知しているように、向こうもサブロー様のことを熟知しているはず。喉から手が出るほど欲しい要地がゼンショウジであるということも」
「であるか。その通りよ。そして、母上の事、あわよくばワシがそれほど重要視していないショバタを奪ってやろうと考えていよう。レイヴァンド卿、野戦の準備をせよ。迎撃するぞ」
「野戦を選びますか。その心は」
「ワシを釣り出すつもりならルルーニの役目は、恐らく囮、何処かに引き寄せるつもりであろう。それゆえ、野戦の構えをして、敵が引いたらこちらも引く」
「成程、乗ってきたと思った相手を逆に混乱させるわけですか」
「母上のことだ。ルルーニには、ワシが野戦を選んだなら、徐々に引いて、ショバタから遠ざけろとしか命じていないだろう。ゆえに出てきたワシが逆に引けば、罠だと警戒を強めよう。結果、ゼンショウジを取ることはできんがショバタを失うこともない」
ルルーニ・カイロは、サブロー・ハインリッヒが野戦を選んだことに心の中でガッツポーズした。
マーガレット・ハインリッヒがサブロー・ハインリッヒを上回ったと。
だが、次の行動に移ろうとした瞬間、衝撃で固まってしまった。
「これは、これは。ワシとしたことが野戦は、間違いであった。全軍、ショバタ城に撤退せよ」
「ルルーニ様、好機です。相手が逃げるというのならその背を。ルルーニ様?」
明らかにこれは罠だ。
サブロー様は、俺を誘き寄せて、何を考えている。
乗るのは、得策とは言えない。
ここは。
やはり。
「ルルーニ様、追撃の命令を」
「いえ、これはハインリッヒ卿の罠です。どうやら痛み分けのようです。こちらもマーガレット様の待つ城に戻りましょう」
「そんなことを気にしていては、少しの被害など」
「人が死ぬことに少しの被害と片付けて良いことはありませんよ。罠とわかっているなら潔く引く」
「ぐぐっ。申し訳ありませんでした」
ルルーニ・カイロは、マーガレット・ハインリッヒに事の次第を話す。
「フフッ。流石、サブローね。ハッタリで追い返すとは」
「ハッタリ!?」
「えぇ、罠を仕込む余裕なんか無いもの。恐らく、ルルーニならそう考えると読んで、思考を混乱させたのよ」
「やられました。追撃してれば、勝てていたわけですか」
「それもどうかしら。追撃してきたなら、ここぞとばかりに貴方を倒すか捕えるにかかるでしょうね。何にしても、被害を出さずに終えたのは正解よ。御苦労様ルルーニ、ゆっくり休みなさい」
「はい(マーガレット様は、レーニンと違い堂々としていて、それでいて、サブロー様との知恵比べを楽しんでおられる)」
「私の顔を見つめて、どうかした?あっ、恋しちゃダメよ。私はロルフ一筋だから。さて、グロスター卿によって、マルネキャッスルは落ちた。まぁ、あの無能親子で守れるわけないわね。クスクス。次はどうするのかしらサブロー」
その頃、タンゲ砦の目と鼻の先にある城では、問題が起こっていたのだった。
「あのクソガキは、1度ならず2度までも貴族を滅ぼしたのか。ぐぬぬ。ふざけるな!このスエモリと目と鼻の先の城に入ったマーガレットは何をしている!」
「落ち着いてください。総大将が怒りで我を忘れては、また皆がレーニン様よりもマーガレットを連合の当社にと騒ぎ立てますぞ」
「そんなことはわかっている!よもや、ルルーニがマーガレットをたぶらかしているのではあるまいな。直ぐに、眼下に見えるショバタを攻撃しろと伝えてこい!」
「はっはい」
伝令がマーガレット・ハインリッヒとルルーニ・カイロが制圧したゼンショウジ砦へとやってくる。
「そう。迷惑をかけたわね」
「いえ、レーニン様は、サブローの行いに対して怒り心頭で、お止めすることはできません。どうか。再び、我らに勢いをもたらせるためショバタを」
「お父様に伝えなさい。怒りで、我を失うのは結構だけど大局を見誤らないことねと」
「あの、それは?」
「何故、ここに私が布陣したと?ここが双方に取って、喉元だからよ。私がここを動けば、サブローはまたショバタを放棄して、この城に布陣するでしょうね」
「???」
「はぁ。流石お父様の部下ね。わかりやすく言うと。サブローにとって、シャバタは重要じゃ無いってこと。寧ろ、サブローのこと。私がここから動くのを虎視眈々と狙ってるでしょうね。お父様なら囃し立てるって読んでるんじゃ無いかしら」
「それは、動く気は無いということでしょうか?」
「えぇ、でも。そうね。軽く牽制だけで良いなら動きましょうか。ルルーニ、騎馬隊千で山を降りて、攻めるそぶりを見せなさい」
「かしこまりました」
「これで、貴方もお父様に良い報告ができるわよね?」
「はっはい。ありがとうございます」
伝令は満足して帰っていく。
「さて、サブローはどうするかしら。私の釣りに乗るのかしら」
サブロー・ハインリッヒの居城、ショバタ城。
「報告、ゼンショウジ砦の敵軍に動きあり、騎馬隊が山を駆け下り、こちらに進軍中、率いている将は、ルルーニ・カイロとのこと」
「であるか。大まかな数は?」
「多く見積もって、千程かと」
「千か。母上が動かしたにしては、少ないな。それに率いる将がルルーニというのもな。どうしたものか」
「サブロー様をここから釣り出すのが目的でしょう」
「ほぉ。何故、そう思うルイスよ」
「サブロー様がマーガレット様のことを熟知しているように、向こうもサブロー様のことを熟知しているはず。喉から手が出るほど欲しい要地がゼンショウジであるということも」
「であるか。その通りよ。そして、母上の事、あわよくばワシがそれほど重要視していないショバタを奪ってやろうと考えていよう。レイヴァンド卿、野戦の準備をせよ。迎撃するぞ」
「野戦を選びますか。その心は」
「ワシを釣り出すつもりならルルーニの役目は、恐らく囮、何処かに引き寄せるつもりであろう。それゆえ、野戦の構えをして、敵が引いたらこちらも引く」
「成程、乗ってきたと思った相手を逆に混乱させるわけですか」
「母上のことだ。ルルーニには、ワシが野戦を選んだなら、徐々に引いて、ショバタから遠ざけろとしか命じていないだろう。ゆえに出てきたワシが逆に引けば、罠だと警戒を強めよう。結果、ゼンショウジを取ることはできんがショバタを失うこともない」
ルルーニ・カイロは、サブロー・ハインリッヒが野戦を選んだことに心の中でガッツポーズした。
マーガレット・ハインリッヒがサブロー・ハインリッヒを上回ったと。
だが、次の行動に移ろうとした瞬間、衝撃で固まってしまった。
「これは、これは。ワシとしたことが野戦は、間違いであった。全軍、ショバタ城に撤退せよ」
「ルルーニ様、好機です。相手が逃げるというのならその背を。ルルーニ様?」
明らかにこれは罠だ。
サブロー様は、俺を誘き寄せて、何を考えている。
乗るのは、得策とは言えない。
ここは。
やはり。
「ルルーニ様、追撃の命令を」
「いえ、これはハインリッヒ卿の罠です。どうやら痛み分けのようです。こちらもマーガレット様の待つ城に戻りましょう」
「そんなことを気にしていては、少しの被害など」
「人が死ぬことに少しの被害と片付けて良いことはありませんよ。罠とわかっているなら潔く引く」
「ぐぐっ。申し訳ありませんでした」
ルルーニ・カイロは、マーガレット・ハインリッヒに事の次第を話す。
「フフッ。流石、サブローね。ハッタリで追い返すとは」
「ハッタリ!?」
「えぇ、罠を仕込む余裕なんか無いもの。恐らく、ルルーニならそう考えると読んで、思考を混乱させたのよ」
「やられました。追撃してれば、勝てていたわけですか」
「それもどうかしら。追撃してきたなら、ここぞとばかりに貴方を倒すか捕えるにかかるでしょうね。何にしても、被害を出さずに終えたのは正解よ。御苦労様ルルーニ、ゆっくり休みなさい」
「はい(マーガレット様は、レーニンと違い堂々としていて、それでいて、サブロー様との知恵比べを楽しんでおられる)」
「私の顔を見つめて、どうかした?あっ、恋しちゃダメよ。私はロルフ一筋だから。さて、グロスター卿によって、マルネキャッスルは落ちた。まぁ、あの無能親子で守れるわけないわね。クスクス。次はどうするのかしらサブロー」
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