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2章 オダ郡を一つにまとめる
47話 祭りのことを聞き話し合う反サブロー連合
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祭りを行うので参加せよとの書状が届けられた反サブロー連合の面々は、困惑を浮かべていた。
「あのクソガキは何を考えているのだ?自分の立場を理解できていないと見えるな。舐め腐りよって、全軍を率いて、参加を表明して討ち果たしてくれるわ」
憤っているのは、マーガレット・ハインリッヒの父でありガロリング公爵家のレーニン・ガロリング、サブロー・ハインリッヒの祖父である。
「サブローが何を考えているのかわからないのは今に始まった事ではありませんわ」
父の言葉にこう返すのは、サブロー・ハインリッヒの母であり、反サブロー連合の盟主を務めるマーガレット・ハインリッヒ。
「まぁまぁ。ガロリング卿、憤るのはわかりますがこれがサブローの狙いとは考えられませんかな?」
陽気な口調で、レーニン・ガロリングを嗜めるのは、ハルト公爵家のモンテロ・ハルト。
「どういう意味だハルト卿」
「ガロリング卿はサブローの祖父だ。ガロリング卿がサブローのことを理解しているのと同等に向こうもガロリング卿のことをわかっていて、挑発して誘き寄せているのでは?」
「何だと!?あのクソガキめ。ハルト卿、止めてくれて感謝するぞ。勢いに任せて、兵を集めるところであった」
モンテロ・ハルトの言葉によって、冷静さを取り戻すレーニン・ガロリング。
「これが罠だとしてです。反サブロー連合に参加している貴族全員に送っているというのも」
新たな問題を指摘するのは、カイロ公爵家を継いで間もなく、サブローの3倍ほどの年齢に差し掛かろうかという青年、ルルーニ・カイロ。
「サブローのことです。これは、こちらの切り崩しを兼ねているのでしょう。参加する貴族が出るかもしれませんね」
その続きを受け、冷静に言葉を続けるのは反サブロー連合の盟主、マーガレット・ハインリッヒ。
「二心を抱く腑抜けなど我らが連合に必要ない」
「ハッハッハ。ガロリング卿、それはどうでしょうなぁ。知らず知らずのうちに二心を抱かれて、いざ戦となった時に背を討たれては、元も子もないのではありませんかなぁ。ここは、こちらも連合の引き締めに時間を割き、祭りのことは一旦放置されるのが良いでしょうな。幸いなことに祭り名がラルフ祭りですから。ロルフ様を忍んで祭りを行うというのであれば、こちらとしても静観する名目にはなるでしょうからなぁ」
ふざけているように見えて、的確に穴を突いた言葉でレーニン・ガロリングを嗜めるのは、モンテロ・ハルト。
「ハルト卿の言う通りです。ですが、この祭りに敢えて参加を表明して、サブロー様の陣容を把握する。可能ならこちらから貴族の切り崩しを行うという方法もあります」
敵となるサブロー・ハインリッヒを一度見ておこうと考えたルルーニ・カイロは、参加を表明して、調略戦を仕掛けるのも手だということを告げる。
「ふむぅ。カイロ卿にしては、珍しく良い意見ではないか?マーガレットが盟主となったから協力的になったのか?」
モンテロ・ハルトに訝しげに嫌味を言うのは、レーニン・ガロリング。
「いえ。敵を知ることも大事だと思ったまでのことです」
「良かろう。それは、お前に任せる。だが、行くからにはどんな些細な情報でも持ち帰るのだ。良いな?」
「承知しました」
レーニン・ガロリングが許したことに驚くのはモンテロ・ハルト。
「良いのですかな?カイロ卿がそのまま向こうに付かないとは言い切れませんからなぁ」
「ハルト卿は、そこまでお疑いか?」
「疑っていないと言えば嘘になりますなぁ。カイロ卿は、反サブロー連合に否定的でしたからな」
「戦を仕掛けるのなら負けたくなかっただけのことです。今やこちらはマーガレット様を担ぎ、日に日に勢力を増している状況です。裏切ろうとは、思いませんよ」
「その言葉を信じて良いのですな?」
「マーガレット様に誓いますよ」
尚もルルーニ、・カイロに詰め寄るモンテロ・ハルトをマーガレット・ハインリッヒが制する。
「モンテロ、それぐらいになさい。私は、ルルーニの忠誠心を信じましょう。しかし、私が反サブロー連合の盟主となったことで、サブローにはラルフ様の旧臣たちが加わる可能性があります。その辺りの情報も詳しく仕入れるのです」
「かしこまりました」
ラルフと聞き、顔を歪めるレーニン・ガロリング。
「あの男は好かん。思えば、ワシがあのクソガキと距離を取るようになったのもあのジジイと同じ事を言ったからだな。『奴隷は奴隷にあらず。同じ血の通った人間に上下を付けるのは間違いである』ムカつく言葉だ。何が奴隷は奴隷にあらずだ。奴隷の子供は奴隷。奴隷は一生奴隷として、貴族様にこき使われて有り難く死ねば良いのだ」
「そう思っているからこそ。多くの貴族が我々を支持してくれているのでしょうなぁ。ですが集まった有象無象の中にあわよくばどちらとも誼を通じておこうと考える輩がいないとも限りませんからなぁ。引き締めは宜しく頼みましたぞガロリング卿」
「無論だ」
モンテロ・ハルトの言葉を受けレーニン・ガロリングは、反サブロー連合に参加している貴族たちに書状を書いた。その内容は。
『サブローがロルフ祭りなどという。我々が愛したロルフ様の名を騙り、勝手な祭りをやると知り、憤っていることだろう。ワシも同じだ。だが、これはサブロー・ハインリッヒの汚いやり方だ。我々を誘き寄せ一網打尽にする計画なのだ。乗ってはならん。万が一乗ったことがわかったものには、我々が領土と地位を接収することをお忘れ無く。但し、例外として、こちらの指示で敵情視察に向かうルルーニ・カイロは除く』
要は、サブロー・ハインリッヒの言葉に乗って、祭りに参加したらどうなるかわかってるだろうなという脅迫文である。
この書状を受け取った反サブロー連合の面々は萎縮し、行動を起こすことはなかった。
結果として、レーニン・ガロリングは、反サブロー連合の引き締めに成功したのである。
「あのクソガキは何を考えているのだ?自分の立場を理解できていないと見えるな。舐め腐りよって、全軍を率いて、参加を表明して討ち果たしてくれるわ」
憤っているのは、マーガレット・ハインリッヒの父でありガロリング公爵家のレーニン・ガロリング、サブロー・ハインリッヒの祖父である。
「サブローが何を考えているのかわからないのは今に始まった事ではありませんわ」
父の言葉にこう返すのは、サブロー・ハインリッヒの母であり、反サブロー連合の盟主を務めるマーガレット・ハインリッヒ。
「まぁまぁ。ガロリング卿、憤るのはわかりますがこれがサブローの狙いとは考えられませんかな?」
陽気な口調で、レーニン・ガロリングを嗜めるのは、ハルト公爵家のモンテロ・ハルト。
「どういう意味だハルト卿」
「ガロリング卿はサブローの祖父だ。ガロリング卿がサブローのことを理解しているのと同等に向こうもガロリング卿のことをわかっていて、挑発して誘き寄せているのでは?」
「何だと!?あのクソガキめ。ハルト卿、止めてくれて感謝するぞ。勢いに任せて、兵を集めるところであった」
モンテロ・ハルトの言葉によって、冷静さを取り戻すレーニン・ガロリング。
「これが罠だとしてです。反サブロー連合に参加している貴族全員に送っているというのも」
新たな問題を指摘するのは、カイロ公爵家を継いで間もなく、サブローの3倍ほどの年齢に差し掛かろうかという青年、ルルーニ・カイロ。
「サブローのことです。これは、こちらの切り崩しを兼ねているのでしょう。参加する貴族が出るかもしれませんね」
その続きを受け、冷静に言葉を続けるのは反サブロー連合の盟主、マーガレット・ハインリッヒ。
「二心を抱く腑抜けなど我らが連合に必要ない」
「ハッハッハ。ガロリング卿、それはどうでしょうなぁ。知らず知らずのうちに二心を抱かれて、いざ戦となった時に背を討たれては、元も子もないのではありませんかなぁ。ここは、こちらも連合の引き締めに時間を割き、祭りのことは一旦放置されるのが良いでしょうな。幸いなことに祭り名がラルフ祭りですから。ロルフ様を忍んで祭りを行うというのであれば、こちらとしても静観する名目にはなるでしょうからなぁ」
ふざけているように見えて、的確に穴を突いた言葉でレーニン・ガロリングを嗜めるのは、モンテロ・ハルト。
「ハルト卿の言う通りです。ですが、この祭りに敢えて参加を表明して、サブロー様の陣容を把握する。可能ならこちらから貴族の切り崩しを行うという方法もあります」
敵となるサブロー・ハインリッヒを一度見ておこうと考えたルルーニ・カイロは、参加を表明して、調略戦を仕掛けるのも手だということを告げる。
「ふむぅ。カイロ卿にしては、珍しく良い意見ではないか?マーガレットが盟主となったから協力的になったのか?」
モンテロ・ハルトに訝しげに嫌味を言うのは、レーニン・ガロリング。
「いえ。敵を知ることも大事だと思ったまでのことです」
「良かろう。それは、お前に任せる。だが、行くからにはどんな些細な情報でも持ち帰るのだ。良いな?」
「承知しました」
レーニン・ガロリングが許したことに驚くのはモンテロ・ハルト。
「良いのですかな?カイロ卿がそのまま向こうに付かないとは言い切れませんからなぁ」
「ハルト卿は、そこまでお疑いか?」
「疑っていないと言えば嘘になりますなぁ。カイロ卿は、反サブロー連合に否定的でしたからな」
「戦を仕掛けるのなら負けたくなかっただけのことです。今やこちらはマーガレット様を担ぎ、日に日に勢力を増している状況です。裏切ろうとは、思いませんよ」
「その言葉を信じて良いのですな?」
「マーガレット様に誓いますよ」
尚もルルーニ、・カイロに詰め寄るモンテロ・ハルトをマーガレット・ハインリッヒが制する。
「モンテロ、それぐらいになさい。私は、ルルーニの忠誠心を信じましょう。しかし、私が反サブロー連合の盟主となったことで、サブローにはラルフ様の旧臣たちが加わる可能性があります。その辺りの情報も詳しく仕入れるのです」
「かしこまりました」
ラルフと聞き、顔を歪めるレーニン・ガロリング。
「あの男は好かん。思えば、ワシがあのクソガキと距離を取るようになったのもあのジジイと同じ事を言ったからだな。『奴隷は奴隷にあらず。同じ血の通った人間に上下を付けるのは間違いである』ムカつく言葉だ。何が奴隷は奴隷にあらずだ。奴隷の子供は奴隷。奴隷は一生奴隷として、貴族様にこき使われて有り難く死ねば良いのだ」
「そう思っているからこそ。多くの貴族が我々を支持してくれているのでしょうなぁ。ですが集まった有象無象の中にあわよくばどちらとも誼を通じておこうと考える輩がいないとも限りませんからなぁ。引き締めは宜しく頼みましたぞガロリング卿」
「無論だ」
モンテロ・ハルトの言葉を受けレーニン・ガロリングは、反サブロー連合に参加している貴族たちに書状を書いた。その内容は。
『サブローがロルフ祭りなどという。我々が愛したロルフ様の名を騙り、勝手な祭りをやると知り、憤っていることだろう。ワシも同じだ。だが、これはサブロー・ハインリッヒの汚いやり方だ。我々を誘き寄せ一網打尽にする計画なのだ。乗ってはならん。万が一乗ったことがわかったものには、我々が領土と地位を接収することをお忘れ無く。但し、例外として、こちらの指示で敵情視察に向かうルルーニ・カイロは除く』
要は、サブロー・ハインリッヒの言葉に乗って、祭りに参加したらどうなるかわかってるだろうなという脅迫文である。
この書状を受け取った反サブロー連合の面々は萎縮し、行動を起こすことはなかった。
結果として、レーニン・ガロリングは、反サブロー連合の引き締めに成功したのである。
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