上 下
2 / 138
1章 第六天魔王、異世界に降り立つ

2話 日の本とは別世界だった

しおりを挟む
 よくわからない異国の地に輪廻転生した織田信長であったが、先ずは成長して読み書きができるようになることが急務だと考え、聞こえる言葉、目にする文字を覚えようと神経を尖らせる。

 どんな言葉も聞き逃さずどんな文字も見逃さず。

 そして、一つわかったことは、バテレンの宣教師たちの話していた言語によく似ているということだった。

 確かバテレンのルイス・フロイスであったか?

 奴の話していた言葉に似ておるな。

 ところでワシの名前なのだが何の因果かワシの通称であった三郎サブロウに似た発音でサブローとなった。

 そして、もう一つわかったこともある。

 どうやらワシの両親は、貴族といって、位が高いらしい。

 サブロー・ハインリッヒ、それがワシの新たな名前である。

 ハインリッヒと言うのは、日の本で言う苗字みたいなものだ。

 ハインリッヒ家のサブローと言われれば、ワシのことと思ってもらえれば良い。

 そして、ワシの住むこの小さな郡の名前なのだがこれも何の因果か知らぬがオダ郡というらしい。

 まぁ、その分愛着は沸くのじゃがな。


 ~~~~~3年後~~~~~


 3年も経つと言葉もわかり文字もそれなりにかけるようになるものじゃ。

 そして、この頃からこの辺りの地図や歴史を読み漁った結果、ここはワシの住む国と全く別の世界であることがわかった。

 ヴァルシュラ大陸というらしい。

 このヴァルシュラ大陸には7つの国があり、戦争が絶えないそうじゃ。

 1番北に遊牧民を中心に最大勢力を誇るノルマディック王国。

 ノルマディック王国に接する魔法大国のマジカル王国。

 マジカル王国とノルマディック王国に接する騎士国家のガルディアン王国。

 マジカル王国とガルディアン王国に接していて、最も小さい島国、アイランド公国。

 このアイランド公国がワシの住む国らしい。

 この他に3つの国があるようじゃがここにある資料では詳しくは、わからなかった。

 弓の扱いと高度な魔法に長ける耳の長い者たちの国。

 力と物作りの技術は並ぶものがないと言われている小人ばかりが住む国。

 見た目は人間でありながら獣のような耳と尻尾を持つ集団と古の龍を彷彿とさせる姿をした人間が治める国があるそうだ。

 どうやら彼らをまとめて亜人族というらしく、それらの国の情報は、この程度しか書かれていなかったのだ。

 そして、ワシの住むアイランド公国を取り巻く環境であるがハッキリ言うとかなり悪い。

 アイランド公国を治めるルードヴィッヒ14世は、騎士王国のガルディアン王国と同盟を結んでいるようだが、とても対等な同盟とは言えない。

 ガルディアン王国の従属国としての扱いなのである。

 これで、国として維持していると言えるのかは全く理解できぬが。

 そのため度重なるマジカル王国との戦によって、疲弊している。

 このままでは近い未来アイランド公国は滅びの道を辿ることとなろう。

 やれやれ、輪廻転生してまで、すぐに死にたくはない。

 必死に生きてこそ、その生涯は光を放つ。

 ならばワシがやるしかなかろう。

 そのためには、人材発掘が急務じゃ。


 そんなことを考えていた信長の部屋をノックする音が聞こえる。


「入るが良い」

「失礼する。ここに居られましたか若。探しましたぞ。また、書斎にて本を読みあさっておられたのですかな?マリー、居るのはわかっている」

「はわわわわ。ロー様、すみません、すみません、すみません」

 ワシのことを威厳のある声で若と呼ぶのは、父のロルフがワシの傅役に付けてくれた。

 銀髪のオールバックで至る所に戦傷があり、筋肉隆々のロー・レイヴァンド。

 祖父の代から戦に出続けている猛将だ。

 といっても35歳じゃ。

 この国は戦続きで、当主の討ち死になど日常茶飯事だ。

 だから男児は持ち上げられて、甘やかされる。

 甘やかされて育った子供が戦時で生き抜くことなどできると思うか?

 答えは否じゃ。

 その中で、祖父の代から生き抜いているこの男がどれだけ優秀かよくわかるであろう。

 ワシは親しみを込めてロー爺と呼んでいる。

 その度に、ワシがうつけと言われても信じて、その振る舞いが間違っていれば叱りつけ、ワシのためにその命をも差し出した平手政秀ヒラテマサヒデのことを思い出すのじゃが。

 此奴の性格は、アヤツそっくりじゃ。

 このワシのことを思って、厳しく接してくれる。

 此奴には政秀のようになっては欲しくないものじゃ。

 アヤツ程、家を取りまとめるのに長けていた男はおらんかったからの。

 そのロー爺に怒られているのは、父がワシにあてがったメイドというワシの身の回りの世話をしてくれているマリーという女じゃ。

 この世界、兎に角、上下社会が厳しい。

 領主→貴族→士族→商人→職人→農民→女→奴隷といった感じで徹底されている。

 だが女の扱いまでは、まぁ許容範囲と言えなくもないがその下の奴隷の扱いはとても酷いものじゃ。

 元の名は捨て去られ、戦では逃げることを許されない最前線の人盾として使われる。

 人を盾に使うなど何を考えておるのかワシには全く理解できん。

 奴隷と聞くたびにバテレンのクソみたいな宣教師どものことを思い出す。

 奴らの目的は布教などと言っておきながらその実は日本の女子供を拉致することであった。

 それらから守るためワシは奴らの布教を認める代わりに条件を出した。

 およそ人の所業とは思えなことをすれば、覚悟せよとな。

 その頃には、ワシは神や仏も恐れぬ第六天魔王と恐れられておったからな。

 大いに役に立った肩書きであったわ。

 いかんいかん。

 脱線してしもうたな。

 マリーも例外ではない。

 メイドというのは元奴隷が多い。

 このマリーもそうじゃが女の方がまだマシな扱いと言える。

 こうして、名を与えられるほどにはな。

 さて、マリーの容姿じゃがかつて日の本でバテレンが持ってきた丸眼鏡なるものを付けて、髪を後ろで束ねて結び、白く透き通る肌。

 鼻は高くて、唇はぷるぷる。

 フリフリの服と服が汚れないための前掛け。

 この世界ではエプロンというのであったか?

 そういうのを付けておる。

「ロー爺、そう怒ってくれるな。マリーはワシに付き合ったまでじゃ。それにしてもロー爺がワシを探しておったということは、稽古の時間であったか?」

「まぁ、マリーの件は、いつも通り目を瞑っておきましょう」

「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます」

 しきりにペコペコと頭を下げるマリー。

「ロー爺、いつもすまないな。では、練兵場に参るとするか。今日こそは一本取らせてもらうぞ」

「まだまだ若には負けられませんな」

「マリー、書斎の片付けは任せたぞ」

「はい。かしこまりました若様」

 マリーをその場に残して、ワシはロー爺と練兵場へと向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

処理中です...