魔族に転生したので魔族の頂点を目指したいと思います!

揚惇命

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最終章 第二幕

第41話 人魔戦争(吸血鬼領編)

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 気絶したルグスを数人がかりで縛り上げ捕虜として、吸血鬼領に連れ帰るレオンダイト。その道中で目を覚ましたルグスであったが特に抵抗するそぶりも見せず素直にそのままであった。吸血鬼領に入るとサイクロプスのルグスに心無い言葉や石が投げつけられる。だが吸血鬼たちにとっては当たり前の行動である。多くの吸血鬼を死に至らしめ捕虜となった吸血鬼も殺した。彼自身では無かったとしても許されることではない。ルグスも石を投げつけられても心無い言葉を浴びせられようとも何もしなかった。その目は魂を失った虚な表情を浮かべるのみであった。
「よくもうちの旦那をこの木偶の坊」
「お前のせいで、娘がこの魔族殺しが死ね」
「父ちゃんを返せよ。これでも喰らえデブ」
「アンタのせいでこの子が親なしよ。この木偶の坊」
「テメェの裁きが楽しみだぜ。オラァ」
「お前が」
「テメェが」
「アンタが」
「ぜってぇ。酷い目に合わせてやる」
「苦痛に歪ませてやるからな」
 レオンダイトが村人たちを静止する。
「その辺にしておいてくれぬか?お前たちの怒りはもっともだ。だが今のコイツは捕虜なのだ。何をしても良いというわけではない。それではコイツがした事と何も変わらぬとは思わぬか?それに石を投げるなら俺にだろう。お前たちから旦那や娘や父を借り受け戦場に向かわせたのは党首であるこの私だ。責めはこの私が受けよう」
「そんなレオンダイト様にそんなこと」
「何を言っている数十年前は遠慮なく投げてきたではないか?それとも何か俺には投げれない理由があるのか?」
「あの時はレオンダイト様が俺たちを危険に晒したと思って、だがそれは違うとアーロン様から聞いた」
「相手によってコロコロと態度を変えるのか?お前たちも十分浅ましいではないか?だが人間というものはそういう愚かな生き物なのだ。お前たちの多くが元は人間。彼が我らにやった事となんの違いがある。我らはそうして人から吸血鬼へと転生させ増やした。彼は魔王国の将軍なのだ。敵対している我らを殺す。当然のことだ。怒りを向けるのは構わない。だが彼の人権を傷付ける行為はやめるのだ。わかってくれるな」
 民衆たちが防いでいた道を開ける。
「わかってくれたようで何よりだ。行くぞ」
 レオンダイトは民衆たちの間を歩きラーキア城へと入っていく。地下の牢屋へとルグスを入れるとさっきまで虚だったルグスが話しかけてくる。
「オラのためにあんなに怒ってくれるなんてアンタ優しいんだなぁ。少し昔話を聞いてくれだよ」
「まぁ良いであろう。私もまだ傷が治ってなくてな。安静にしていろといつも妻に怒られているのだ。お前の昔話とやらを聞いてやろう」
「あんがとなぁ。オラはサイクロプス族の中で力だけが強くて他は何もできねぇグズでノロマとして産まれただ。そんなオラに兄ちゃんが居ると知ったのは、先代の魔王様が亡くなりアンドレ様に変わった頃なんだなぁ。オラは兄ちゃんに会うために兄ちゃんも受けるって聞いた魔王国幹部候補試験ってのを受けただ。オラは力の試験を1番で突破して、見事幹部候補に選ばれただ。そこでオラは兄ちゃんに再会しただ。嬉しかっただ。産まれてすぐ出て行ったと聞いていた兄に出会えて、兄とともにアンドレ様をお支えする。そのためにオラは兄が言うことになんでも従ってきただ。だがオラのやってたことってそれと引き換えに誰かを傷付けていたんだなぁ。吸血鬼の女の子たちに本当に酷いことしただ。オラはどんな罰でも受けるだ。抵抗もしねぇだ」
 レオンダイトは話を聞きながら疑問に思う点が何箇所もあったので、問いただした。
「待て。ということはお前は最近まで兄がいる事を全く知らなかったのか?」
「んだ」
「じゃあ、それを誰から教えてもらった?」
「誰だったべかな。確か村に来たローブを羽織った男だべ」
「そいつがロバトだったんだろ」
「どういうことっぺ?」
「ロバトはお前に自分が兄だと思わせる幻影魔法をかけていたんだろう。エレインから最後に聞いたロバトの死んだ時の姿はサイクロプスとはかけ離れた姿であり、インプの姿だったらしい。アイツは死ぬ最後まで自身をサイクロプス族と名乗っていたらしいが」
「じゃあ、オラが信じてきたものってなんだったんだべ」
「全ては力の最も強いお前を操り、我らを滅ぼす手駒としたかったのだろうな」
「まんまとはまっていたわけだべな。罪深きオラだべ。殺して欲しいっぺ」
「死ねば楽になれるだろう。だがそれは償いとは言わない。生きて、どんな蔑みにも耐え、生き続けることが本当の償いだ。オレはお前の命など要らん。この戦が終わるまで捕虜とし、それからは自由だ。我が民たちはこの裁きを認めぬだろうが」
「わかっただ。オラどんな蔑みにも耐えるだ。だからオラを吸血鬼軍に迎え入れて欲しいだ。アンタ、いやレオンダイト様」
「そうか。わかったお前の加入を認めよう。どんな蔑みにも耐えサイクロプスと吸血鬼の融和のためその役目果たして見せよ」
「感謝するだ。レオンダイト様」
 ルグスは自分の知らぬところのこととはいえ吸血鬼に対しての酷い所業を敢えて吸血鬼軍に置くことで、怒りや蔑みやどんな感情も受け止め償っていこうと考えた。やがて、それは身を結び吸血鬼たちからは守護神と呼ばれ、ある吸血鬼の女の子と結ばれ、サイクロプス族初めての眷属吸血鬼となるのだがそれは遠い未来のことである。ルグスは絶望から立ち直り一歩踏み出す決心をしたのである。
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