魔族に転生したので魔族の頂点を目指したいと思います!

揚惇命

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最終章 第二幕

第18話 人魔戦争(エルフェアリーナ王国編)

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 東門を守るリグレスト国の首相を務めるザイールは、戦場を見渡していた。ザイールの隣には妻であるノエルと親友のフィーそして十字軍を率いるマクシムとティメールから派遣された聖剣を持たないザイールのためにイスルギが居た。
「うーん、全然攻めてこない相手というのも不気味さを感じますね」
「兄様、こちらから仕掛けるわけにも行きませんし、暫くは様子見になりそうですわね」
「ノエル、もう婚約もしたのにいつまでも兄様ってのは」
「私にとって兄様は兄様ですから」
「まぁ良いではありませんか。この戦は防衛がメインです。積極的に攻めてこない相手ならこちらも待つ姿勢で良いかと」
「フィーのいう通りなんだけどどうも胸騒ぎが」
「ザイール首相は心配性ですな。何事も起こりますまい」
「マクシムの旦那は少し楽観的やすぎませんかね」
「イスルギの坊主に言われたかないがの」
「坊主ちゃうわ」
 もう一度洗浄を見渡したザイールは気付いた。東門には全く暗黒軍団がいない事に。
「まさか、暗黒軍団を警戒するあまり配置ミスしてしまったというのか!?イスルギ、すぐにティメールの元に向かうんだ。ここはおそらく戦闘にはならない」
「はぁ、どういうことだよ」
「奴ら、ここにイスルギを釣り、ティメール様1人にしたんだ。西門は恐らく暗黒軍団に埋め尽くされてるはずだ」
「馬鹿な!?流石に大軍相手に1人じゃ団長が」
「あぁ、だからイスルギにはすぐに西門に向かってもらいたい。勿論相手に気づかれないようにこっそりと」
「了解だ」
 イスルギは内部を通り東門へと向かった。そうとは知らないガラハッドとガレスはのんびりと酒を飲んでいた。
「ガラハッドよ。お前はモルドレッドをどう見る?」
「どう見るとは?」
「ワシはな。この戦、負けじゃと思うとる」
「何を!?」
「だからな。ワシらの兵は暗黒兵ではなく一般兵だ。損害を抑えるために攻めない事にしたというのは表向きじゃ」
「アグラヴェインの兵を借り受けなかったのはまさか」
「あぁ、ワシはなぁ負け戦は嫌いじゃ。ガハハ。だからのう勝ち馬に乗る。ランスロットが万が一負けるようなことがあれば降伏する。お前もそうせよ」
「兄上を捨てよと申されるのか」
「いや、ランスロットをアーサーが殺すとは思えん。ガウェインと3人でずっと馬鹿やってきた間柄なのだからな。ワシはな。ランスロットを解放してやりたいと思ったのじゃ。ランスロットのためモルドレッドに付いただけじゃ。ガハハ」
「わかりました。俺もあんな闇に囚われた兄上をこれ以上見たくはありません。アーサーが兄上を解放することができたのなら俺もガレス殿と共に降りましょう」
「うむ。戦わずに降る。そんな役回りをさせてすまんな」
「いえ。俺だって本心を言えばウルゼ様とは戦いたくありませんでしたよ。だから東門だと聞いて、安堵したのですから」
「ワシも好き好んで従兄弟のガウェインと戦いたいとは思わんわい。似たもの同士じゃの」
「そうですね」
「まぁ、のんびりと南に放った斥候のほうこくをまつとしようや」
「はい」
 東門のガラハッドとガレスは一度も攻めることなく1年もの間、睨み合いをした。そしてやっといい知らせを持ってきた斥候からの報告を聞いたガレスは笑みを浮かべながら白旗を上げ、降伏の意思を示し、ザイールと会談した。
「降伏を受け入れてくださり感謝する。ランスホース帝国で将軍を務めているガレスじゃ」
「同じくガラハッドと申します」
「どうして一度も刃を合わせることなく降伏を?」
「やはり気になりますかな。一言で言うならば目的を達成したからですかな」
「目的?」
「ワシの目的はランスロットの救出じゃった。闇に囚われた奴を元に戻せるのならその時は降り、無理な時はワシも共に死ぬ。博打が好きな性分でな。勝手に賭けの対象としていたことをお許しいただきたい」
「ということは南門のウルゼ国王は防衛成功したということですか」
「うむ。完勝とはいかんかったようじゃが。そしてランスロットも光を取り戻した。よってワシも目的を達成したゆえなこうして降伏をすることにした」
「ランスホース帝国は自国の民や兵を暗黒兵にしておりました。ですが貴方方の兵にはそれらが見当たりません。どのようにして防いでいたのでしょうか?」
「これはこれは可愛らしいお嬢さんですな。そうですなぁ。ジャッカロープという伝説の魔物はご存知ですかな?」
「クレオ殿の従魔の」
「ほぅ、あの伝説の魔物を従魔にしておられる方が居ようとは驚きじゃが彼らのミルクには魔素を打ち消す効果があるのじゃ。ワシはジャッカロープたちを束ねる長老と契約を交わし分けてもらいそれを飲んで打ち消しておった」
「ジャッカロープの里がある!?」
「うむ、狩りの対象とされるため公にはできぬがな。ワシは偶然戦場での大きな傷を負った時にその里を見つけ、長老に助けてもらったのじゃ。今回も魔素の話をして、協力を願った。表向きはこんな仮面を付けておるがな」
「では、貴方がそれを外して素顔を晒していた1日目のあの行動も何かを伝えるためだったのですな」
「うむ。聖剣を持つ者がいるのならワシらの方には要らないとな」
「そのおかげで助かりました」
「うむ。それは良かった。ワシらは投降兵として扱ってくれて構わぬ」
「えぇ、この戦が終わるまでの間、苦労をかけると思いますが我慢してください」
「うむ。ガラハッドも皆も良いな」
「はい」
「ガレス様に従います」
「では参るとするか」
 東門はこうして終わりを迎えた。
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