魔族に転生したので魔族の頂点を目指したいと思います!

揚惇命

文字の大きさ
上 下
118 / 220
5章 束の間の平穏

第5話 召集令状

しおりを挟む
焦った様子でクレオに話しかけるモネ。
「クレオ様、魔王からこんなものが」
クレオはモネから渡された書簡に目を通す。
『スレイブシティの領主モネに次ぐ、今より魔王領に従い、奴隷たちの引き渡しを命ずる。従わない場合は、5年後に武力によって攻め滅ぼす。無駄な力を使いたくはない。英断を求む。新魔王アンドレより』
クレオは書簡を見てほくそ笑んだ。
「モネさん、心配しなくて大丈夫ですよ」
クレオの言葉に納得できないと首を傾げるモネ。
「どういうことでしょうか?」
「今日よりホープシティは魔頂村に加わります。よって全ての人民は奴隷ではありません。引き渡しの義務ももちろんありません」
「そんなこと可能なのですか?」
「まぁ、そうですね。返事はこう書いてください。『ランスホース帝国に攻められた時に魔族の方に救われ、この街の名前をホープシティと改めました。現在は、魔頂村に属しています。魔頂村は、魔王領ですが独立国家です。奴隷に関しても全員解放しています。この街に奴隷は居ません。話をしたいのなら魔頂村の領主クレオ殿を通してください』」
「それでなんとかなるでしょうか?」
「自分たちのルールで他国への侵攻ができない以上、ここが自分たちが見捨てたクレオの村所属ということで攻められませんから歯痒い思いをするでしょうねぇ」
クレオはニヤニヤしている。
「その笑みは怖いですわ」
「まぁ、どう出るか見ものですね」
クレオは魔王城の方角を見てほくそ笑む。

数日後魔王城にスレイブシティより書簡が届いた。
「モネはどう返答してきたドラムス?」
「なんとそのようなことが。ぐぬぬ。魔王様失敗にございます」
「どういうことだ」
アンドレはドラムスから書簡を奪い取り内容に目を通すと笑った。
「ハッハッハッ。クソ親父とクソ丞相は、どうやら優秀な奴を追い出したようだな」
クレオか。忌々しい名だ。現実世界のアイツを思い出す。まぁ良い。面白いじゃないか。独立国家の宣言までしてくるとは、5年後真っ先に踏み潰してやる。圧倒的武力を用いてな。
「惜しいことをしましたな」
「いや、競争相手がいることがわかり逆に燃えた。返事には一言『それなら問題ない』とだけ書いて送れ」
「口惜しいですが仕方ありませんな。ですが、流石は魔王様です。先代とは全然違いますな」
「あれはあれで良かったのだが。力も無く振りかざすのでは何も意味はない。母上を呼べ」
「はっ」
連れてこられる先代の魔王ドレッドに人前で殴られたり乳を吸われたりしていた鬼人族の女性がやってくる。
「母上」
甘えるアンドレ。
「まぁまぁ、どうしたの?」
「君は美しい、あのクソ親父に穢されて本当に可哀想だ。必ず俺が守ってあげるよ」
アンドレはそう言いながら赤ちゃんらしく鬼人族の女性の乳を吸う。
「あぁん」
「母上の乳は美味だ」
「あっダメそんな気持ちいい」
先代の魔王の躾により、触れるだけで感じる身体になってしまっている。
アンドレは一通り吸い終わると口を離し、母上を抱きしめる。
「アンドレ」
恍惚の顔を浮かべている鬼人族の女性。
「母上、忌々しい父上との子である我が身をこの世に産んだいただき感謝致します」
「アンドレに罪はないもの」
「お部屋にてお休みくださいツキヤマ様」
「えぇありがとうドラムス。アンドレのことよろしく頼むわね」
「この身に代えましても」
「俺はお前が死ぬと悲しいぞ。優秀な人材は宝だ。ファミリーは大事にしないとな」
「勿体なき御言葉です」
「謙遜するな。お前も下がれ。身体を酷使する時ではないからな。作戦の失敗も気負うな。クレオとやらが一枚上手だっただけのこと。バーン8世とモルドレッドにも頑張ってもらわねばならんしな」
「はっ」
アンドレは、現実世界の人間。所謂転生者だ。現実世界では、表の世界では、超大手輸送会社の社長で、年収数億を稼いでいた。だがその裏では、暗殺稼業を生業とするBOSSでファミリーのためにターゲットを暗殺しまくった。同じ転生者であるクレオとは因縁がある。その因縁がこちらの世界での大戦争を招くことをこの時の2人はまだ知らない。

クレオは手紙の返事をモネに言った通りに書かせた手前。返事が来るまでホープシティにて滞在していた。
「クレオ様、俺綺麗?」
「ユタ、揶揄ってるの?」
「ぷぅ~」
頬を膨らませるユタ。6歳になり少し大きくなったかと思えば全然身長は変わっていない。
ひょいと抱っこし、膝に座らせる。
「ユタはまだまだ子供だな」
「子供じゃないもん。クレオ様の妻になるんだもん」
「うーん、後10年は先かなぁ」
「そんなに待てないもんねーだ」
そう言いキスをしようとするユタを制する。
「なんでよ~」
「子供はそんなことしない」
「ユタは、子供じゃないもん。大人だもん」
「はいはい」
軽くあしらうクレオの元にモネが手紙を持ってやってきた。
「魔王から返事が来ました」
クレオはモネから受け取り中身を確認する。
「それなら問題ない?」
呆気ない一言だけの文章にクレオは底しれない不安を感じた。
「何か問題でしょうか?」
「いえ、あっさりと引き下がり、魔頂村の独立とホープシティの魔頂村への帰属を認めたことに少し不安を覚えまして」
「でも、これで魔王の支配から完全に独立できました。ホープシティにとってのこれからは明るいはずですきっと」
「えぇ、そうですね」
クレオはモネを安心させるために頷いたが先代魔王とは違う意味で女を道具として使おうと考えていた新魔王があっさり引いたことに別ルートでの奴隷の確保の当てがあるというのだろうか?まさか、ランスホース帝国か?なるほど、モルドレッドのクーデターが成功した時点で、ホープシティを切っても問題はなかったんだとしたら。これはホープシティが魔頂村に所属していたことを確定させるための確認が含まれていたんだ。まんまと乗せられた?ハハハ。困ったな。でも先ずは、魔頂村に戻り、だが他の問題の片付けを行うとしよう。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

処理中です...