魔族に転生したので魔族の頂点を目指したいと思います!

揚惇命

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4章 聖血戦争とクーデターの結末

第11話 計算違い

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リグレスト聖教国軍の軍師ザイールは、戦場を見渡し明らかにおかしいことに気付く。まさか、俺の計算に狂いが生じている。だとしたらまずいかもしれない。当初の予定通りなら冒険者がライトデスガンを取り戻し、ヴァンパイアハンターと傭兵を率いたビッグスが疲弊した三悪を討ち取り、傭兵団により疲弊した新手の吸血鬼を捕虜としているはずだった。だが、全くと言っていいほど情報が流れてこないのだ。これは俺がライトデスガンとライトキャノンの情報を統制したのと同じだ。このまま攻めれば甚大な被害を受けかねない。負けぬ戦が我が信条。ここは早期の撤退を進言しよう。
「法皇様、敵の動きが想定外かも知れませぬ。ここは傭兵共と用無しになりつつあるヴァンパイアハンター共を使い潰すとしましょう」
「確かに、ライトデスガンの量産が可能となった今であれば、銀の弾丸しか使えぬヴァンパイアハンター共は用無しであるな。傭兵共とヴァンパイアハンター共に進軍を命じるとしよう」
「それが良いかと」
「勇敢なる傭兵諸君と高貴なヴァンパイアハンターたちよ。尖兵隊となり吸血鬼共を駆逐するのだ。そうすれば褒美は思いのままぞ」
「オオオオオオ」
「ククク。餌に群がるハエのようだな」
「えぇ」
すまない。傭兵にヴァンパイアハンターよ。だが貴君らの勇姿無駄にはせぬ。今日負けぬ戦のため利用することをどうか許してくれ。ザイールは心で謝ると勝ち戦であった盤面をひっくり返された戦場を苦々しく見つめる。

トーマスは、突撃してきた傭兵とヴァンパイアハンターをナターシャ、ジールと共に薙ぎ払っていた。
「クレオ坊やの予想と違わないかい?」
「あぁ、敵の軍師はどうやら孫弟子殿以上の策士であるということだろう」
「うむ。被害を最小限に負けぬ戦で終わらせる腹積りだろうな」
「ハッハッハッ殿を上回る策士であったとは、これだから戦はやめられぬ」
「シュテンちゃん、口を動かしてる暇があるなら手を動かして殲滅してくれるかしらん」
シュテンが金棒を振り回すと傭兵たちが吹き飛ぶ。
アランも投げナイフで銀の弾丸を込め撃とうとするヴァンパイアハンターを狙い撃ちする。
「まさかオーガとコボルトと共に戦う日がくるとはねぇ。長生きするもんだねぇ」
「うむ。武器の扱い方も見事。研鑽の賜物よな」
「それに見事な横隊からの薙ぎ払い一閃。クレオ様はワシから陣形を学びたいと言っておったがワシが学びたいくらいであるわ」
「褒められると照れちゃうなぁ。でも、敵の本陣から、ライトキャノンによる砲撃、でも前線に来てるのは精鋭の十字軍を除く、傭兵とヴァンパイアハンターのみ。ここで精鋭の十字軍を殲滅して、攻めてくる気力を削ぐつもりだったんだけどなぁ。せめて敵の軍師であるザイールに一眼会ってみたかったけど叶いそうにないなぁ。ここまで用心深い性格だ。恐らく敵本陣はもう撤退を始めているだろうからね」
「クレオ様の推察通りであるとするならば、もう間も無く終わりなのではありませんか?」
「シュタインさん、相手は負けぬ戦を狙っているんだよ。最後にとんでもないことをやってくるはずだ。まぁこれは予想通りであって欲しいけどね」
「なるほど。では、ミミ殿頼みましたぞ」
「わかったの~魔法障壁を展開なの~」
ミミの魔法障壁で光の炸裂魔法をガードすることは容易だろう。ミミは回復魔法に光魔法の使い手なのだ。戦では恥ずかしがり屋の性格が災いして、後方支援に甘んじているが本来は伝説の魔物ジャッカロープなのだ。その強さは並の魔物を凌駕する。だが優しいミミのままでいて欲しいからあくまで防衛重視で頑張ってもらう。

ザイールは、傭兵たちとヴァンパイアハンターたちがやられるのをただ見ているだけしかできないことに歯痒さを感じていた。あのオーガの群れにコバルトの群れは何だ?あり得ない、オーガの横隊陣形もそうだがコボルトが後ろから的確に銀の弾丸を込めるため一時無防備になるヴァンパイアハンターを狙い撃ち、ヴァンパイアハンターたちの援護のため突撃する傭兵たちはオーガの群れが見事な薙ぎ払い一閃にて吹き飛ばす。隙がないのだ。精鋭の十字軍を向かわせていれば何とかなったかも知れないが被害は甚大だっただろう。産まれてくる我が子のためにもここはできるだけ精鋭たちは残さなければならない。愛しきノエルよ。必ずお前の元に兄は戻るぞ。今の腐り切ったリグレスト聖教国を変えるため俺の子を身籠ったノエルにバーン8世と愛人契約を結ばせたのだ。バーン8世はノエルの胎の子を我が子だと信じている。ランスホース帝国の腹黒い男と誼を通じたのは間違いであったな。だが収穫もあった、魔族にも陣形を使い策を練り覆しうる存在がいるということだ。バーン8世のままのリグレスト聖教国では、近い将来それらの魔族に飲み込まれ滅ぶだろう。俺はこの国を変える。傭兵とヴァンパイアハンターとリグレスト聖教国が独立している今の状態ではなく統合する。法皇様の元、傭兵は憲兵となり、ヴァンパイアハンターは狙撃手となる。俺が目指す未来のリグレスト聖教国の形だ。そのためにもこの戦に負けるわけにはいかない。だがひっくり返された盤面を元に戻すのは不可能だろう。ならばせめて、一矢報いさせてもらうぞ。
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