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3章 領地改革と帝国の襲来

第26話 魔素の解毒を試みる

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【クレオ視点】

エレインとアリッサを連れて高台拠点組の労いとシュテンが対峙している魔素に侵されたグィネヴィアの様子を見るため向かう。

不安そうなエレインとそれを宥めるアリッサ。

そんなやりとりが何度か行われた後高台拠点に着く。

「お待ちしておりましたぞ殿」

「シュテン出迎えありがとう。それにゴブリル、フレイム、ハピネス、みんなのおかげでランスホース帝国に壊滅的な打撃を与えることに成功したよ。本当にお疲れ様。数名を残して魔頂村に撤収して構わないよ」

「親父に良い土産話ができるってもんだべ」
「やっと帰ってハピネスとイチャイチャボン」
「まぁフレイムったら」

「ハハハ、シュテンは魔素に侵されたグィネヴィア嬢のところへ案内を頼む」

「はっ殿、ついてきてください」

シュテンの案内に従い、地下牢に到着する。

魔素に侵されたグィネヴィア嬢は美しく整っていた形が肥大化により悍ましい姿に変貌していた。

それを貼り付け上にして上の縄は腕を持ち上げてバンザイの形、下の縄は足を引っ張る形で大股開きの形にしている。

女性に対しこんなことをしなければならないのは心苦しいが魔素に侵されたものは見境なく暴れるらしいので今は許してもらう。

「殿、先程まで暴れておりましたが一通り暴れた後眠り、今は落ち着いております」

「うん。先ずは魔素がどういうものか教えてくれる?シュテンはその辺りのこと詳しいんだよね?」

「まぁもう良いでしょう。魔素とは魔族の素となる薬で、人間を簡単に魔族に変貌させることができるのです。グィネヴィアの投与されたものは恐らくオーガになる薬、昔我のことを好いていた女子の嫉妬により投与された薬と同じかと」

「えっ、それじゃあシュテンも元は人間だったの?」

「えぇ、我の人間名は八岐外道丸やまたげどうまるれっきとした元人間ですぞ」

「だがシュテン殿は制御できているではないかとても信じられぬ」

「エレイン様がそう思われるのも無理ない。我も昔は見境なく暴れておった。いつものように暴れて襲った魔物の乳を喰らった時に理性を取り戻したのです」

「それはどんな魔物?」

「クレオ様も良く知るジャッカロープなのです。我も確証が無かったのでエレイン様には殿になら治せるかもしれないと伝えるしかできなかったのです」

「なるほど、自身も魔素で魔族になった元人間であったから対処できていたのだな」

「ミミの乳ならグィネヴィアに理性を取り戻させることができるということか。ここにはミミから手渡された万能薬の小瓶しかないんだけど。ミミを呼び戻すしかないか」

「殿、それを少し見せてもらっても構いませんか?」

「まぁ良いけど」

僕は小瓶をシュテンに手渡した。

シュテンは手に一滴垂らすとそれを舐め味を確認した後、笑みを浮かべて言う。

「殿、ミミ様に感謝しなければなりませんな。これこそ紛れもなくジャッカロープの乳、魔素に対抗できうる薬ですぞ」

「えぇーーーーーーーー、これ料理にバンバン使ってたんだけど」

「ハハハ、この世界のことに無知な殿らしい。ですがこれを常に身体の中に少量でも入れていたからかもしれませんなぁ。我も殿と出会ってから人間だった頃の記憶を完全に取り戻したのです。ガハハ」

「同じ魔素に侵されたことのあるシュテンが言うのなら間違い無いのだろう。グィネヴィア嬢に飲ませれば良いのかな」

「殿、どうぞ」

僕はシュテンから万能薬の小瓶を返してもらうと中に残っていた全てを磔にされているグィネヴィア嬢に飲ませた。

するとみるみるうちにサイクロプス並みに肥大化していた身体は人間より一回り大きい程度のオーガぐらいになり、意識を取り戻したグィネヴィア嬢が取り乱していた。

「私は一体何を、うっ頭が痛い。確かエレインとの一騎討ちに敗れて死んだはず。うっ一体何が。どうしてこんな姿に。こんな姿ではランスロット様に逢えない」

ひとしきり思いの丈を言うと今度は泣き出してしまった。

「グィネヴィア」

エレインはグィネヴィアに駆け寄り抱きしめる。

「エレイン?」

「敵同士になったとはいえ、仲の良かったグィネヴィアを手にかけてしまったことに罪悪感を抱いていた」

「エレイン、お互い戦場で会ったのよ。あなたが躊躇していれば私は貴方を斬り捨てていたわ。お互い様よ」

「グィネ、済まない。生きててくれてありがとう。そう言う意味では魔素とやらに感謝しなければならないのかもしれないな」

「エレン、私はこの姿になってしまって愛しい人に逢えなくなったのよ。もーう」

「あのガサツなランスロット殿のどこがそんなに好きだったのだ?」

「まぁガサツよね。でも私のことを戦略結婚の道具としてしか見ないアーサーと違って一途に愛してくれたわ。女はいつだって愛されたいものよ。違うかしら」

「うっ確かにそうだな」

「まぁグィネヴィア殿が元に戻られて良かったではないか。ガハハ」

「貴方は、私が人を襲うのを必死に止めて下さった方ですわね。その節はありがとうございました」

「覚えておられるのですか?」

「えぇ、うっすらとですが暴れていた頃の記憶もあります」

「よほど高い精神力の持ち主のようですなぁ。我は暴れていた時の記憶など全然覚えておりませんわい。ガハハ」

「まぁそれはそれでやばいんじゃないかしら。でも貴方も魔素に侵された元人間だったのね。あの小瓶の中身を全部飲み干して思い出したことがあるの。昔枝垂桜海洋国家に留学していたときに世話になったカッコいい男の子が居たの。私は一目惚れをして、その方に贈り物をしたの魔族と親しかった父から惚れ薬と渡された物を」

「待ってくれ」

「えっ」
「殿、どうかしましたか?」

「俺はシュテンから名前を聞いた時にシュテンの出身国は枝垂桜海洋国家だと思った。そこに留学していたグィネヴィア嬢が惚れ薬として渡したのが魔素だったのではないか?グィネヴィア嬢、貴方の父が親しかった魔族の名前はわかりますか?」

「確かドレッド様だったかと」

「ここで繋がるのか?あのクソ魔王がぁ」

「まさか現魔王が魔素を作っていた張本人であり我の仇敵だったとは。ますます面白い殿とおると全く退屈しませんわい」

「そんな私の渡した惚れ薬であの男の子が魔族となり今目の前にいるシュテン殿だなんて、私はどう償えば」

ポロポロと涙を流すグィネヴィア嬢をシュテンは優しく抱きしめた。

その行動に驚くグィネヴィア嬢。

「えっ」

「気にすることはないのだグィネヴィア。初めこそ恨んだが今は良き殿に出会えたのだ。悔いはない。其方もその重荷を下ろすのだ。もう良い。もう昔のことで苦しまなくて良いのだ」

「うっうっうっごめんなさい本当にごめんなさいシュテン」

いやさっきまで忘れてたらしいしずっと苦しんでたわけではないと思うんだとまぁ2人が良いならいっかとツッコミするのはやめといた。

「クレオ殿でしたね。私決めましたグィネヴィアという名前を捨て、オーガとしてシュテンのお側で働きたいと思います。付きましては新しい名前を名乗る許可を頂きたいのです」

「あぁ構わないよ」

「ありがとうございます。今日より私はタマヒメと名乗ります」

「グィネ、どうしてタマヒメなのですか?」

「あらエレン、枝垂桜海洋国家に留学してたのよ。シュテンに似合う名前にしたいじゃない。そしたら私がお世話になっていた珠姫神社が思い浮かんできてそこから取ったのよ」

「なるほど、ランスロット様のことは吹っ切って新しい恋に邁進するということか。グィネらしい」

「あらエレン、2人きりの時以外公の場ではタマかヒメと呼んでくださいな」

「わかったよタマ」

「エレンやればできるじゃない」

「元気になって良かった」

「魔王は許せませんわ。それに恐らく私に魔素を飲ませたのはモルドレッドですわ。あっまずい。奴隷兵士たちを決して殺してはなりません。彼らにも栄養剤と称して、モルドレッドが投与しているのを見ましたわ」

「その心配なら必要ないクレオ様は奴隷兵士全員を生かしたまま捉えた。帰るまで手出し無用と言明している。破ってクレオ様に嫌われることをする奴は魔頂村にいないからな」

「それなら良かったですわ」

「では帰るとしますか殿?」

「あぁ」

こうして魔素の解毒にまさかミミが役に立つとは思わなかったが無事解決して魔頂村への帰途に着く。

帰ってからも問題は山積みだ。
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