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3章 領地改革と帝国の襲来

第24話 アーサーから停戦交渉

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【アーサー軍視点】

聖騎士と持て囃されたこの俺がやられたままで終われるか。

数々の小国を滅ぼし次期国王に近づいていたのだ。

このまま帰れば病気で寝込む父上をさらに悪化させるだけそれだけはなんとしても阻止せねば。

「ガウェインは撤退路の確保のため残った重装歩兵と重装騎兵2千とここに残れ。私はここまで追い詰めてくれたクレオとやらの顔を見てくるとする」

「おれも一緒に」

「ダメだ。それに今回は一応停戦交渉だ」

「くっ、わかった。気をつけろよアーサー」

「あぁ、重曹騎兵3千付いてこい」

「オオオオオオ」

【クレオ視点】

これで諦めてくれたら良いけど諦めてくれるわけないよね。

先に帰還していたアランには、新たにリグレスト聖教国に対して偽報工作を仕掛けてもらっている。

「クレオ様、今戻りました」

「エレイン、おかえりってどしたのその怪我?」

「そのことで耳に入れたいことが」

エレインからグィネヴィアのことを聞き、呆然としてしまう僕。

まさか人間に魔素を取り込ませるそんな非人道的なことをやる人間がランスホース帝国内にいるということか?

ということは奴隷歩兵を全員生かしたまま捕まえられたのは良かったかもしれない。

グィネヴィアだけに投与していたとは考えられない。

戦後になるが聞き取り調査を行い、中和剤の開発をしなければならない事案だな。

「報告、ご苦労様。でもエレイン、たとえ中和できたとしても一度生命活動を止めたグィネヴィアが生き返るとは思えない。覚悟はしておいてくれ」

「あぁ、私は元に戻ってくれるならそれで構わない。精一杯戦い抜いたグィネヴィアがあんな悍ましい姿にされたのが許せないのだ」

「精一杯力を尽くすよ。それにしてもエレイン、僕はグィネヴィアを捕まえてって言ったのに討ち取るなんてさ」

「お互いの信ずるもののため戦うグィネヴィアの想いを無駄にできなかったのだ。すまない」

「それもまた将の生き様ってやつか」

「いやどちらかというとオンナの生き様だな」

「ん?」

「いや、私だけがわかっていれば良いのです。忘れてください」

「気になるけど、そういうことなら忘れるよ」

「親父殿、アーサーが面会を求めています」

「わかった。2人きりで会う」

「それは不用心すぎる私が妻兼護衛としてお側に控えます」

「私も~」

「エレインにアリッサ、相手を挑発しないようにね」

「クレオ様にだけは言われたくない」「同感だね」

「ハハハ、サモン、護衛2人と共に面会を受け入れると伝えよ」

「はっ、親父殿、セキトを連れていくのが良いかと何かあってもセキトなら3人を連れてここまで逃げ帰れますから」

「その言葉に甘えよう」

双方の軍勢から距離のある丘にて双方3人による交渉が行われた。

「初めまして、クレオ殿。アーサー・クラウンと申します。早速ですが、エレインを返すのであればこの戦でこれ以上の血は流さないとお約束いたしましょう」

「魔頂村の領主クレオ,・ヴラッドだ。アーサー殿初めまして。その言い方だとまるでオンナのために戦を起こしたように聞こえますが間違いないか?」

「魔族如きが神聖なランスホース帝国の騎士を隷属するなど許せるわけなかろう。元々エレインは俺の女だ。返すだけで全軍引くのだ。好条件だろう。さっさと返せ。エレインは俺の側にいてこそ輝くのだ」

「あのなぁ」

僕が言い返そうと言葉を紡ぐよりも前にエレインが言う。

「御言葉ですが私はアーサーの女だったつもりはありません。それに政略結婚だからと妻を蔑ろにするような懐の小さい男なぞごめんだ。私はクレオ・ヴラッドを愛している。貴様のような器の小さい男と我が主君を同列に語るなこの下衆野郎が。とっとと帰らぬのであれば戦場にて討ち取ってくれる」

「もうそこまで洗脳されているのか。全く嘆かわしい。君が僕のことを呼び捨てにして、さらに下衆野郎と罵るなど。よーくわかった。クレオ、貴様はここで討ち果たす。交渉は決裂だ」

「あぁ、大事なエレインをモノみたいに扱う貴様の言葉など交渉でもなんでもない。首を洗って待っているが良い」

「そうよ。そうよ。エレインはもう大切な家族なんだから、アンタなんかに渡さないんだからアッカンベェーだ」

「全く獣人族の娘まで洗脳完了しているとは、俺が君たちを救って見せるよ。クレオよ。そちらこそ首を洗って待っているが良い」

そう言って、アーサーは去っていった。

「エレイン、あんな男のところに居たなんて可哀想に」

そう言ってアリッサがエレインを抱きしめる。

「アリッサ殿、そのモフモフは気持ちいいのですがキツく抱きしめられると苦しいです」

「アリッサ殿じゃなくてアリッサで良いわよ。エレイン、あんな男、クレオ様がフルボッコにしちゃうんだから。フンフン」

「確かに勘違いの下衆野郎ですが油断ならぬ相手です。あの御方は戦場でのみ輝く生粋の戦人ですから」

「あぁ、だろうね。エレイン2人分を相手にしないとかな」

「2人分で済めば良いですが」

「そんな怖いこと言わないでよ。まぁ次も秘密兵器に頼るしかないかな。ゴブリットの息子のゴブリルにも見せ場を作ってあげないとね」

「あの高台拠点に移動させていたあの大きい物?あれって何なの?」

「もう暫く秘密だよアリッサ」

「えーーーー凄く気になる~」

「まぁ楽しみにしててよ。驚かせてあげるから」

「わかった」

聞き分けの良いアリッサの頭をポンポンしてナデナデ、このモフモフ具合最高。

アリッサも気持ちいいのかうっとりとした表情になる。

さて、元気も出たことだし、もう少し頑張りますか(笑)
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