えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章 天下統一

兗州北部、東郡の主要都市濮陽でのこと

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 ここは兗州北部、最前線の1つ東郡にある主要都市濮陽。
 ここにも間も無く華北の兵が押し寄せようとしていた。
 その数、10万。
 率いる将は、鄧艾である。

 鄧艾「その話は本当か?」

 賈詡の伝令兵「はっ。人間爆弾なる兵器によって、我が軍の被害は甚大。率いた兵の1万もの兵が再起不能となりました。賈詡様も足に被弾し、杖が無くては歩けない身体と」

 鄧艾「司馬懿殿は、人質を取っても人の命を無碍にする人とは思えない。これは鍾繇殿の策か。何にしても気をつけるに越したことはない。報告御苦労だった。足並みを揃えるべく、暫く泰山にて、静養するように伝えられよ」

 賈詡の伝令兵「はっ。賈詡様にそのようにお伝えします。では、これにて失礼します」

 軽くお辞儀をするとその場を後にする賈詡の伝令兵を見送ると鄧艾は兵を集めていた。

 鄧艾「よく集まってくれたな我が兵たちよ。早速本題に入ろう。賈詡殿程の知恵者が泰山にて、敵の罠に嵌り1万もの兵を失ったそうだ」

 鄧艾の兵A「馬鹿な!?泰山にいた兵は少ないと聞いておりましたが」

 鄧艾の兵B「あの賈詡殿が。鄧艾様が我らを集めてまで、話す議題。続きがあるのでは無いですかな?」

 鄧艾「流石、小さい頃から我が家に仕えてくれている爺やだ。その通りだ。では、続きを話そう。どうやら、交州で士徽という男が開発したという人間爆弾なる兵器が用いられたとのことだ」

 鄧艾の兵A「人間爆弾?」

 鄧艾の兵B「まぁ、鄧艾様に仕えて間もないお前が知らんのも無理はない。かつて、劉備が制した交州に士徽という男がいた。その男が開発した人間そのものを爆弾に変える秘術。悪魔のような所業に他でも使われかねない危険性を考慮して、全国に通達した。使ってはならない外道の術だ」

 鄧艾「劉備殿の懸念がまさか。この兗州にて密かに行われていたとは、考えたくない。俺が弟子として司馬懿殿のところにいた頃は、そんなことをする人には思えなかった。事実、司馬懿殿は人質を取っても殺す真似はしなかった。兵たちに自爆特攻させることなど」

 鄧艾の兵B「鄧艾様、そう思い悩みなさいますな。ここは主要都市の一つ濮陽。流石に、城内で自爆特攻をすることなど」

 前線の華北兵の伝令「報告!城内にて暴動した民衆が、兵たちに突っ掛かり、制圧のため囲んだ兵たちを前にニヤリと笑みを浮かべて爆発四散。巻き込まれた兵たちに被害が甚大。2万程の兵が再起不能になったかと。報告が遅れたこと申し訳。うっ。ゴホッ。ゴホッ。城内、への。と、つ、に、ゅ、う、は、き、け、ん、で、す」

 言葉を告げると事切れる華北兵の伝令。

 鄧艾「そんな身体で良く、報告してくれた。聞いた通りだ。我が軍は、賈詡殿の報告前に城内へと突入していた2万の兵を失った」

 鄧艾の兵A「嘘だろ。一瞬で、2万の兵が再起不能になったってのかよ」

 鄧艾の兵B「鄧艾様、相手を侮り過ぎたやも知れませんな。華北から増員を募るべきかと心得ますぞ」

 鄧艾「いや、これ以上の兵を失えば、その後蜀漢に魏国が食われて終わりだ。この兵だけでどうにかやりくりする(何ということを。こんな。こんな。悪魔の所業が許されて良いのか)」

 城内奥の玉座の間に座る男がいた。
 匈奴をこき使い、攻められたらすぐに逃げだし、鍾繇と合流。
 兗州北部の重要都市、濮陽の守りを任されたこの男の名を王累という。
 かつて、劉璋の元に鍾繇の命で潜入し、劉備と争わせた男である。
 そんな男が怪しげな男と会話をしていた。

 怪しげな男「ヒッヒッヒ。どうです。民衆の意思を操り爆弾とさせる秘術。かつて、士徽が開発した人間爆弾の応用型ですよ」

 王累「これが。これさえ、あれば鄧艾など恐れるに足らん。ここにいる民衆全てを爆弾に変えて、突撃させれば、10万の兵など木っ端微塵となる。呪術とは、こうもすごいものなのか」

 怪しげな男「えぇ。そして、この薬を飲めば、貴方様は無敵の身体を得ることができるのですよ。どうです?お買い上げなさいますか?」

 王累「勿論、買わせてもらう!」

 怪しげな男「お買い上げ、ありがとうございます。それでは、長居すると厄介な奴らに探知されますゆえ。これにて」

 王累「気をつけられよ。こんな素晴らしい力、欲しがる人ならもっといるはず。お助けくだされ」

 怪しげな男「勿論」

 怪しげな男は、この場を後にする。

 怪しげな男「不老不死を求めた余が最終的に辿り着いたのが呪術による転生。年老いた肉体を捨て、若い肉体へと乗り換え続ける。そして、余を危険視する厄介な天界の住人共に見つからぬようにこうして、遮断。ククク。于吉は本当によく暴れてくれた。黄皓の奴は、役立たずであったが呂壱は、あの薬の実験材料になってくれた。身体を悪魔の怪物へと変える秘術。悪魔転生のな。余は秦の始皇帝。この地に最初に君臨した王であり、絶対王である。余以外が王に立つことなど認めん。魏も呉も蜀漢も余の呪術を欲しがる者たちによって滅んでもらおう。ククク。ヒャーヒャヒャヒャ」

 そう、この怪しげな男、戦乱に明け暮れる民を憂いて、戦争を無くそうと立ち上がった青年だった心は、統一するにあたりどす黒く変容し、己の治世をずっと続けたいと不老不死に手を出し、かつて共に戦った臣下たちを毒殺や辺境に追いやり、死に追いやった悪魔である。
 その男の名を、秦の始皇帝、嬴政エイセイという。
 己の身体での不老不死の成就は叶わなかったがこうして、呪術により、老いた身体から若い身体へと転生を繰り返すことで今日まで生き抜いていた。
 黄竜が長年追い続けている悪鬼である。
 混沌と化す濮陽を前に鄧艾は慎重にならざるを得なくなり、この場は膠着することとなる。
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