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5章 天下統一
間者を疑われて
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司馬懿と曹丕の決別は、魏国内を二分させることとなる。
鍾繇・鍾会を中心とした司馬懿派。
逢紀・郭図を中心とした曹丕派。
曹丕は本拠地を鄴に定め、今一度天下分け目の官渡の戦いを起こすことを決断する。
対する司馬懿は、陳留を本拠地とし、官渡の決戦にて、曹丕を完膚なきまでに叩き潰すのではなく、できるだけ引き伸ばし引き伸ばし、劉義賢の寿命が先に尽きることを狙う。
曹丕と違い司馬懿は官渡の戦いを重要視していなかった訳ではなく、あくまで時間稼ぎの方法としてしか考えていなかった。
そう正史にて、五丈原の戦いにおいて宿敵である諸葛孔明の寿命が尽きるのを待った時のように、粛々とその時を待つ。
鍾繇「それにしても劉義賢ですか。我らの策を悉く看破して、逆手に取るとは、何者なのでしょうな」
司馬懿「わからん。だが、顔からは死相が溢れ出ていた。恐らくそうそう長くはあるまい。かのものさえ亡くなれば、蜀漢など恐るるに足らん」
鍾会「じゃあ、そんな回りくどいやり方じゃなくて、暗殺の方が早くないっすか?」
司馬懿「いや、蜀漢は劉備への暗殺を幾度となく防いでいる。余程、優秀な影がいるか。若しくは、それすら看破してしまっているかだ」
鍾繇「成程、仲達様は後者だとお考えなのか」
司馬懿「うむ。あの男には見た目平凡を超える底知れない何かを感じた。まるで、我らより別次元の存在であるかのような、な」
鍾会「いやいや。人間なんて、皆一緒っしょ。斬れば赤い血が流れ出てくるんだから」
司馬懿「そうかもしれんな。それにしても鄧艾はともかく昭まで、曹丕に付くとはな」
司馬師「父上、俺の監視が甘いばかりに申し訳次第もない」
司馬懿「別に構わん。別の見方をすれば、どちらが勝っても司馬の血は残るのだからな」
司馬師「しかし、曹丕が昭のことを重用するでしょうか?」
司馬懿「せんだろうな。寧ろ、我々の密偵だと疑っていよう」
その頃、曹丕陣営。
司馬昭「だから、何度も言ってるじゃないですか。密偵じゃなくて、本心から曹丕様に力を貸したいんですって」
曹丕「司馬の者は、もう信用ならん。だが、これはこれで何かの役には立とう。牢に繋いでおけ」
司馬昭「いやいやいや。待ってくださいって。父上に勝ちたくないんすか?」
曹丕「くどい!信用ならん。それだけで、牢に入れるのに十分な理由なのだ」
逢紀「ヒッヒッヒ。恨むんなら司馬懿殿を恨むんですな」
郭図「魏王様の命令だ。連れて行け」
こうして、牢に繋がれた司馬昭の前に鄧艾が現れる。
鄧艾「貴殿は、何故実の父を裏切る決断を?」
司馬昭「前々からおかしいなとは思ってたってのが1番大きいな。後は、実はさ蜀漢の女に恋しちゃったわけよ。いいとこ見せたいなってな。こちら側に付いたら、カッコいい素敵って思われるかもしれねぇしよ」
鄧艾「プププ。ハッハッハッハ。これは傑作だ。惚れた女のために実の父を裏切る決断をするなど。実に面白いではないか!俺は貴殿を気に入ったぞ。そこで聞きたい。司馬懿ならどんな手を打つと考える?」
司馬昭「父上なら、この戦争をできるだけ引き延ばすだろうな」
鄧艾「それは、また意外な回答だな。何故だ?」
司馬昭「俺はさ。父上の狙いは別にあると思ってんだよ。例えば、時間稼ぎをすることで優位な盤面を作れると判断したとかな」
鄧艾「魏王様の元には、続々と兵が駆けつけている状況で、待てば待つほど優位な盤面になるであろうか?」
司馬昭「まぁ、父上はそこに関しちゃ別に問題視してねぇよ。つっても可能性の話で恐らくだけどな。優秀な影がいるからよ。潜り込ませて、曹丕様を暗殺して仕舞えばいつでも終わらせられるって目算じゃねぇかって予想は付けてる」
鄧艾「ひょうきん者と言われている割に随分と深く考えているではないか」
司馬昭「まぁな。それに父上は焦ってるのさ。まさか蜀漢がここまで拡大するなんて想像してなかっただろうしな。今や世界の半分以上が蜀漢の領土だ。曹丕様と父上で争っている場合では、ないんだけどな」
鄧艾「それに関しては、同意だな。だが、大義を失った状況で国を守ろうと考えた時、それも仕方なかったのでは?」
司馬昭「まぁ。遥か昔に死んだとされていた雷帝が生きてましたって出てこられて、献帝まで蜀漢に奪還されたとあっては、大義もクソもねぇわな。ってことで、俺は曹丕様に魏を纏めてもらって、重臣同士の婚姻とかで、蜀漢と懇意になるのが理想だと思うわけよ。それのが多くの血が残るだろ?」
鄧艾「だから敢えて、実の父を裏切ったと?どちらが勝っても血は残るか」
司馬昭「まぁな。父上のやり方が気に食わないって思ってたしな。ちょうどよかったのさ。まぁ、曹丕様には信じてもらえねぇからこうして牢に繋がれてる訳だけどよ」
鄧艾「まぁ、いきなり曹丕様にお仕えしたいでは、間者を疑われても無理はなかろう。非常に有意義な時間だった。感謝する」
司馬昭「牢からは出してくれないわけね?」
鄧艾「そのようなことをすれば、俺まで間者として捕えられてしまうであろう」
司馬昭「まぁ、そうだよな。どうにかして、曹丕様に信用してもらうしかねぇんだけど。無理だよな」
鄧艾「無理であろうな。今の魏王様は、前にも増して、疑い深くなっている」
司馬昭「ハァ。俺どうするかな」
こうして、間者を疑われた司馬昭は牢に繋がれた。
司馬懿は、徹底的な防御陣形を敷き、曹丕の攻撃を受け止める姿勢。
曹丕は、これを見て何かあると予想。
戦局は膠着することとなる。
鍾繇・鍾会を中心とした司馬懿派。
逢紀・郭図を中心とした曹丕派。
曹丕は本拠地を鄴に定め、今一度天下分け目の官渡の戦いを起こすことを決断する。
対する司馬懿は、陳留を本拠地とし、官渡の決戦にて、曹丕を完膚なきまでに叩き潰すのではなく、できるだけ引き伸ばし引き伸ばし、劉義賢の寿命が先に尽きることを狙う。
曹丕と違い司馬懿は官渡の戦いを重要視していなかった訳ではなく、あくまで時間稼ぎの方法としてしか考えていなかった。
そう正史にて、五丈原の戦いにおいて宿敵である諸葛孔明の寿命が尽きるのを待った時のように、粛々とその時を待つ。
鍾繇「それにしても劉義賢ですか。我らの策を悉く看破して、逆手に取るとは、何者なのでしょうな」
司馬懿「わからん。だが、顔からは死相が溢れ出ていた。恐らくそうそう長くはあるまい。かのものさえ亡くなれば、蜀漢など恐るるに足らん」
鍾会「じゃあ、そんな回りくどいやり方じゃなくて、暗殺の方が早くないっすか?」
司馬懿「いや、蜀漢は劉備への暗殺を幾度となく防いでいる。余程、優秀な影がいるか。若しくは、それすら看破してしまっているかだ」
鍾繇「成程、仲達様は後者だとお考えなのか」
司馬懿「うむ。あの男には見た目平凡を超える底知れない何かを感じた。まるで、我らより別次元の存在であるかのような、な」
鍾会「いやいや。人間なんて、皆一緒っしょ。斬れば赤い血が流れ出てくるんだから」
司馬懿「そうかもしれんな。それにしても鄧艾はともかく昭まで、曹丕に付くとはな」
司馬師「父上、俺の監視が甘いばかりに申し訳次第もない」
司馬懿「別に構わん。別の見方をすれば、どちらが勝っても司馬の血は残るのだからな」
司馬師「しかし、曹丕が昭のことを重用するでしょうか?」
司馬懿「せんだろうな。寧ろ、我々の密偵だと疑っていよう」
その頃、曹丕陣営。
司馬昭「だから、何度も言ってるじゃないですか。密偵じゃなくて、本心から曹丕様に力を貸したいんですって」
曹丕「司馬の者は、もう信用ならん。だが、これはこれで何かの役には立とう。牢に繋いでおけ」
司馬昭「いやいやいや。待ってくださいって。父上に勝ちたくないんすか?」
曹丕「くどい!信用ならん。それだけで、牢に入れるのに十分な理由なのだ」
逢紀「ヒッヒッヒ。恨むんなら司馬懿殿を恨むんですな」
郭図「魏王様の命令だ。連れて行け」
こうして、牢に繋がれた司馬昭の前に鄧艾が現れる。
鄧艾「貴殿は、何故実の父を裏切る決断を?」
司馬昭「前々からおかしいなとは思ってたってのが1番大きいな。後は、実はさ蜀漢の女に恋しちゃったわけよ。いいとこ見せたいなってな。こちら側に付いたら、カッコいい素敵って思われるかもしれねぇしよ」
鄧艾「プププ。ハッハッハッハ。これは傑作だ。惚れた女のために実の父を裏切る決断をするなど。実に面白いではないか!俺は貴殿を気に入ったぞ。そこで聞きたい。司馬懿ならどんな手を打つと考える?」
司馬昭「父上なら、この戦争をできるだけ引き延ばすだろうな」
鄧艾「それは、また意外な回答だな。何故だ?」
司馬昭「俺はさ。父上の狙いは別にあると思ってんだよ。例えば、時間稼ぎをすることで優位な盤面を作れると判断したとかな」
鄧艾「魏王様の元には、続々と兵が駆けつけている状況で、待てば待つほど優位な盤面になるであろうか?」
司馬昭「まぁ、父上はそこに関しちゃ別に問題視してねぇよ。つっても可能性の話で恐らくだけどな。優秀な影がいるからよ。潜り込ませて、曹丕様を暗殺して仕舞えばいつでも終わらせられるって目算じゃねぇかって予想は付けてる」
鄧艾「ひょうきん者と言われている割に随分と深く考えているではないか」
司馬昭「まぁな。それに父上は焦ってるのさ。まさか蜀漢がここまで拡大するなんて想像してなかっただろうしな。今や世界の半分以上が蜀漢の領土だ。曹丕様と父上で争っている場合では、ないんだけどな」
鄧艾「それに関しては、同意だな。だが、大義を失った状況で国を守ろうと考えた時、それも仕方なかったのでは?」
司馬昭「まぁ。遥か昔に死んだとされていた雷帝が生きてましたって出てこられて、献帝まで蜀漢に奪還されたとあっては、大義もクソもねぇわな。ってことで、俺は曹丕様に魏を纏めてもらって、重臣同士の婚姻とかで、蜀漢と懇意になるのが理想だと思うわけよ。それのが多くの血が残るだろ?」
鄧艾「だから敢えて、実の父を裏切ったと?どちらが勝っても血は残るか」
司馬昭「まぁな。父上のやり方が気に食わないって思ってたしな。ちょうどよかったのさ。まぁ、曹丕様には信じてもらえねぇからこうして牢に繋がれてる訳だけどよ」
鄧艾「まぁ、いきなり曹丕様にお仕えしたいでは、間者を疑われても無理はなかろう。非常に有意義な時間だった。感謝する」
司馬昭「牢からは出してくれないわけね?」
鄧艾「そのようなことをすれば、俺まで間者として捕えられてしまうであろう」
司馬昭「まぁ、そうだよな。どうにかして、曹丕様に信用してもらうしかねぇんだけど。無理だよな」
鄧艾「無理であろうな。今の魏王様は、前にも増して、疑い深くなっている」
司馬昭「ハァ。俺どうするかな」
こうして、間者を疑われた司馬昭は牢に繋がれた。
司馬懿は、徹底的な防御陣形を敷き、曹丕の攻撃を受け止める姿勢。
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戦局は膠着することとなる。
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