514 / 633
5章 天下統一
血を吐く義賢
しおりを挟む
会談が終わり、宣言通り、蔡文姫は、匈奴と魏の面々を速やかに涼州から撤退し、その行き先は、司馬懿のいる許昌だと思われた。
義賢「ゴホッ。ゴホッ」
馬超「劉丁殿!?血を?横に横になるのだ」
義賢「流石に少し、疲れましたな」
馬超「あのような挑発する態度など貴殿らしく無い」
義賢「フッ。最も信頼している相手にずっと騙され続けている蔡文姫殿が、哀れでしてな。ゴホッ。ゴホッ」
馬超「例え、劉丁殿の考えている通りだとして、司馬懿という男がそのようなわかりやすい証拠を残すだろうか?」
義賢「フッ。だから今だったのだ。鍾繇が王累に涼州を任せて、とっとと逃げた。行き先は、どこであろうな」
馬超「まさか!?」
義賢「流石に思い至ったようだな馬超将軍」
馬超「しかし、だとして。戦が始まって、半月は経とうとしている。いや、充分間に合うか」
義賢「流石、同じ騎馬民族だな」
馬超「一緒にしないで貰いたいのだが。我々の率いる西涼鉄騎こそ最強と自負している」
義賢「そう考えてるのと同じように、彼らとて、匈奴の騎馬こそ最強と考えていよう。ゴホッ。ゴホッ」
馬超「劉丁殿!?また血を。すまない、話はまたの機会に」
義賢「構わん。この涼州のことは、馬超将軍に任せる。漢中の応援に兵を派遣するのも。長安の先、洛陽まで兵を進めるのも、な」
馬超「劉丁殿!劉丁殿!劉丁殿ーーーーー!!!」
義賢「煩いわい!やれやれ。まだ死なぬわ。休ませてくれい」
馬超「し、失礼した」
全く、心配されるのがこうもありがたいとはな。
この世界に来て、もうすぐ40年にもなるか。
やれやれ、還暦近いこの身体が悲鳴をあげるのも無理はないか。
いや、正確には死んでいたのだったな。
少し、疲れた。
休ませてもらおう。
遠い意識の先で、話し合う声が聞こえる。
???「先生、いったいいつになったら目が覚めるんです?」
???「わからないんですよ。外傷は見当たらない。頭にも致命的なダメージを受けた形跡がないんです。ですが現状を見る限り、植物状態としか」
???「貴方じゃ埒が開かないわ。転院の手続きをさせてください。彼は、大事な私の生徒なんです。親御さんも来れないこんなところにいつまでも置いておけない」
???「ですが、どこの病院でも結果は同じだと思います。医学的には、意識が戻る可能性は限りなく低いとしか」
???「そんな。嘘。私、何て報告したら良いのよ。劉君、お願いだから戻ってきてよ」
???「今は、そのように話しかけ続けて様子を見るしか」
???「うっ。うぅ。私が優勝旅行だなんて、はしゃいで。劉君の好きなこの国を選ばなければ。こんなことには。ごめんね。先生のせいで、本当にごめんね」
涙が顔に当たっている。
そんなに泣かないで。
董先生のせいじゃないから。
俺が不注意で、足を滑らせて、墓の中に落ちただけだから。
もうちょっとだけ。
もうちょっとだけ、待ってて。
絶対に俺、そっちに帰るから。
義賢「ハァハァハァ」
士仁「劉丁様、目を覚まされましたか?」
義賢「士仁か。何日寝ていた?」
士仁「匈奴が涼州より撤退して、間も無く1週間になります」
義賢「そうか。そんなに寝てたか。全く、歳に病とは、つくづく辛いものだ。戦局は、どうなっている?」
士仁「弘農は、甘寧将軍が落とされ、河南尹《かなんいん》は、徐庶軍師が謀略にて、献帝様の奪取に成功し、洛陽を占拠。そこを足掛かりに攻略。京兆尹《けいちょういん》では、田豊軍師が人質の救出に成功し、長安を奪取。足掛かりに制圧に成功したと」
義賢「そうか。皆、よくやってくれたな。あの三郡が落ちたとなれば、司隷の制圧に時間はかかるまい」
張達「おぅ。目ぇ冷めたか殿。輸送の方も滞りなくできてるぜ。安心しな」
義賢「苦労をかけた。さて、司隷をとれたとて、まだ半分。華北のほとんどは、魏の勢力下であるからな」
范疆「劉丁様、目ぇ覚ましただか。オラ、心配しただ」
義賢「お前のキンキン声も久々に聞くと心地良いものだ。あ、兄上は!?」
麋芳「ひっ。ぎ、義弟なら大丈夫だ。関羽と張飛殿が取り押さえた」
義賢「そうか。ところで、お前はまた雲長のことを呼び捨てとは」
麋芳「嫌いなんだから仕方ないじゃ無いか。ガミガミガミガミと上から目線でネチネチネチネチといびりやがって、お前の部下じゃねえってんだ」
義賢「そうだな。お前は俺の部下だ。何か文句があるなら上司に言ってくださいと逃げれば良いものを。ククク」
麋芳「かぁぁぁぁ。その手がありましたか。今度から使わせて」
義賢「ダメだ」
麋芳「ヒィぃぃぃぃ。そんなぁぁぁぁぁ」
義賢「ハッハッハ。制圧した後の戦局はどうだ?」
士仁「はい。弘農より甘寧将軍が河東郡に。長安から田豊軍師が丘力居殿と共に左馮翊《さひょうよく》へ。同じく長安から袁三兄弟が右扶風《ゆううふう》の堅城と名高い陳倉《ちんそう》へ。徐庶軍師は馬超将軍と合流し、河内郡へ。それぞれ兵を進めました。眠る前に劉丁様が言っていた通りに通達しておきました」
義賢「苦労をかけた。奉先の豫州攻略の方はどうだ?」
士仁「そちらは、心強い援軍が到着されたようで、許昌を足掛かりに順調に攻略しているとのことです」
義賢「そうか。豫州・司隷の攻略が終わり次第、青州・兗州の攻略へ取り掛かる。ワシも長々と寝てる場合では無いな」
士仁「一気に歳を取られましたな劉丁様」
義賢「言葉尻かの?」
士仁「はい」
義賢「まだまだ董白と愛し合っておる現役じゃ」
董白「何、言ってんのよこの馬鹿!そりゃ私の方が年下なわけだからまだ30後半だし、営みもねって、何言わせんのよ」
義賢「フォッフォッフォッ。董白のツンデレはいつ見ても可愛いのぉ」
董白が士仁に耳打ちする。
董白「士仁、あの人のこと宜しくね。ほっておいたら無茶して、今にも死んでしまいそうで不安なのよ」
士仁「心得ております董白様。しかし、止まりはしないでしょう。あの御方は、その命をこの蜀漢のために燃やし尽くされる覚悟なのですから」
董白「そうね。欲を言えば、ずっと隣にいて欲しい。でも、それはきっと今世では、叶わないのでしょうね。彼は、この世界の人間じゃ無いのだから」
士仁「ですが、我々の行く末を案じてくださっていることだけは、痛いほど伝わります。劉丁様の言う平和が訪れると信じて、この武をふるうのみ」
董白「そうね。きっと来る。そんな気がしてるわ」
劉義賢が眠っていた1週間の間に何があったのか。
義賢「ゴホッ。ゴホッ」
馬超「劉丁殿!?血を?横に横になるのだ」
義賢「流石に少し、疲れましたな」
馬超「あのような挑発する態度など貴殿らしく無い」
義賢「フッ。最も信頼している相手にずっと騙され続けている蔡文姫殿が、哀れでしてな。ゴホッ。ゴホッ」
馬超「例え、劉丁殿の考えている通りだとして、司馬懿という男がそのようなわかりやすい証拠を残すだろうか?」
義賢「フッ。だから今だったのだ。鍾繇が王累に涼州を任せて、とっとと逃げた。行き先は、どこであろうな」
馬超「まさか!?」
義賢「流石に思い至ったようだな馬超将軍」
馬超「しかし、だとして。戦が始まって、半月は経とうとしている。いや、充分間に合うか」
義賢「流石、同じ騎馬民族だな」
馬超「一緒にしないで貰いたいのだが。我々の率いる西涼鉄騎こそ最強と自負している」
義賢「そう考えてるのと同じように、彼らとて、匈奴の騎馬こそ最強と考えていよう。ゴホッ。ゴホッ」
馬超「劉丁殿!?また血を。すまない、話はまたの機会に」
義賢「構わん。この涼州のことは、馬超将軍に任せる。漢中の応援に兵を派遣するのも。長安の先、洛陽まで兵を進めるのも、な」
馬超「劉丁殿!劉丁殿!劉丁殿ーーーーー!!!」
義賢「煩いわい!やれやれ。まだ死なぬわ。休ませてくれい」
馬超「し、失礼した」
全く、心配されるのがこうもありがたいとはな。
この世界に来て、もうすぐ40年にもなるか。
やれやれ、還暦近いこの身体が悲鳴をあげるのも無理はないか。
いや、正確には死んでいたのだったな。
少し、疲れた。
休ませてもらおう。
遠い意識の先で、話し合う声が聞こえる。
???「先生、いったいいつになったら目が覚めるんです?」
???「わからないんですよ。外傷は見当たらない。頭にも致命的なダメージを受けた形跡がないんです。ですが現状を見る限り、植物状態としか」
???「貴方じゃ埒が開かないわ。転院の手続きをさせてください。彼は、大事な私の生徒なんです。親御さんも来れないこんなところにいつまでも置いておけない」
???「ですが、どこの病院でも結果は同じだと思います。医学的には、意識が戻る可能性は限りなく低いとしか」
???「そんな。嘘。私、何て報告したら良いのよ。劉君、お願いだから戻ってきてよ」
???「今は、そのように話しかけ続けて様子を見るしか」
???「うっ。うぅ。私が優勝旅行だなんて、はしゃいで。劉君の好きなこの国を選ばなければ。こんなことには。ごめんね。先生のせいで、本当にごめんね」
涙が顔に当たっている。
そんなに泣かないで。
董先生のせいじゃないから。
俺が不注意で、足を滑らせて、墓の中に落ちただけだから。
もうちょっとだけ。
もうちょっとだけ、待ってて。
絶対に俺、そっちに帰るから。
義賢「ハァハァハァ」
士仁「劉丁様、目を覚まされましたか?」
義賢「士仁か。何日寝ていた?」
士仁「匈奴が涼州より撤退して、間も無く1週間になります」
義賢「そうか。そんなに寝てたか。全く、歳に病とは、つくづく辛いものだ。戦局は、どうなっている?」
士仁「弘農は、甘寧将軍が落とされ、河南尹《かなんいん》は、徐庶軍師が謀略にて、献帝様の奪取に成功し、洛陽を占拠。そこを足掛かりに攻略。京兆尹《けいちょういん》では、田豊軍師が人質の救出に成功し、長安を奪取。足掛かりに制圧に成功したと」
義賢「そうか。皆、よくやってくれたな。あの三郡が落ちたとなれば、司隷の制圧に時間はかかるまい」
張達「おぅ。目ぇ冷めたか殿。輸送の方も滞りなくできてるぜ。安心しな」
義賢「苦労をかけた。さて、司隷をとれたとて、まだ半分。華北のほとんどは、魏の勢力下であるからな」
范疆「劉丁様、目ぇ覚ましただか。オラ、心配しただ」
義賢「お前のキンキン声も久々に聞くと心地良いものだ。あ、兄上は!?」
麋芳「ひっ。ぎ、義弟なら大丈夫だ。関羽と張飛殿が取り押さえた」
義賢「そうか。ところで、お前はまた雲長のことを呼び捨てとは」
麋芳「嫌いなんだから仕方ないじゃ無いか。ガミガミガミガミと上から目線でネチネチネチネチといびりやがって、お前の部下じゃねえってんだ」
義賢「そうだな。お前は俺の部下だ。何か文句があるなら上司に言ってくださいと逃げれば良いものを。ククク」
麋芳「かぁぁぁぁ。その手がありましたか。今度から使わせて」
義賢「ダメだ」
麋芳「ヒィぃぃぃぃ。そんなぁぁぁぁぁ」
義賢「ハッハッハ。制圧した後の戦局はどうだ?」
士仁「はい。弘農より甘寧将軍が河東郡に。長安から田豊軍師が丘力居殿と共に左馮翊《さひょうよく》へ。同じく長安から袁三兄弟が右扶風《ゆううふう》の堅城と名高い陳倉《ちんそう》へ。徐庶軍師は馬超将軍と合流し、河内郡へ。それぞれ兵を進めました。眠る前に劉丁様が言っていた通りに通達しておきました」
義賢「苦労をかけた。奉先の豫州攻略の方はどうだ?」
士仁「そちらは、心強い援軍が到着されたようで、許昌を足掛かりに順調に攻略しているとのことです」
義賢「そうか。豫州・司隷の攻略が終わり次第、青州・兗州の攻略へ取り掛かる。ワシも長々と寝てる場合では無いな」
士仁「一気に歳を取られましたな劉丁様」
義賢「言葉尻かの?」
士仁「はい」
義賢「まだまだ董白と愛し合っておる現役じゃ」
董白「何、言ってんのよこの馬鹿!そりゃ私の方が年下なわけだからまだ30後半だし、営みもねって、何言わせんのよ」
義賢「フォッフォッフォッ。董白のツンデレはいつ見ても可愛いのぉ」
董白が士仁に耳打ちする。
董白「士仁、あの人のこと宜しくね。ほっておいたら無茶して、今にも死んでしまいそうで不安なのよ」
士仁「心得ております董白様。しかし、止まりはしないでしょう。あの御方は、その命をこの蜀漢のために燃やし尽くされる覚悟なのですから」
董白「そうね。欲を言えば、ずっと隣にいて欲しい。でも、それはきっと今世では、叶わないのでしょうね。彼は、この世界の人間じゃ無いのだから」
士仁「ですが、我々の行く末を案じてくださっていることだけは、痛いほど伝わります。劉丁様の言う平和が訪れると信じて、この武をふるうのみ」
董白「そうね。きっと来る。そんな気がしてるわ」
劉義賢が眠っていた1週間の間に何があったのか。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。補足説明と登場人物の設定資料
揚惇命
SF
『えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。』という作品の世界観の説明補足と各勢力の登場人物の設定資料となります。
本編のネタバレを含むため本編を読んでからお読みください。
※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。




Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる