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5章 天下統一

本来の匈奴

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 劉豹の父である於夫羅は、王累の前でニタニタと笑っていたがその心中は。

 於夫羅「父上、俺は劉豹にはやはり匈奴のカシラは荷が重かったと思います」

 羌渠「ワシがアヤツに期待したばかりに迷惑をかけたな於夫羅よ。しかし、やはり魏とやらは信用ならん。劉猛のところに李恪なんぞを送り込んできたこともだが。恐らく匈奴を分裂させようと狙っているのじゃろう」

 去卑「兄上、なら匈奴は今まで通りに行くか」

 劉猛「俺が不甲斐ないばかりに兄貴に迷惑をかける」

 羌渠「うむ。我らは強き者に従う。ゆえに1番強いものがカシラを務めてきた。そうして強い血を残してきたのじゃ。劉豹には、何としても幸せになってもらわんとな。我らは、これより心を鬼にして、アヤツを村八分にする」

 於夫羅「父よ。我が子のためにすまぬ」

 羌渠「良い良い。アヤツは、ワシにとっても可愛い孫じゃ。ひ孫を人質に取る輩なんぞ。信用ならん。我らは、表向きは従順なフリをして、隙を見せた王累から人質を取り戻すのじゃ。於夫羅よ。父として、子を無視するのは辛かろう。お前まで加わる必要は」

 於夫羅「父よ。心遣い、感謝する。だが、可愛い我が子のためなら鬼となろう」

 羌渠「そうか。辛い思いをさせるな」

 こんなことがあったのだが状況は一瞬で変わる。

 馬超「武都の皆よ。馬孟起が帰ってきたぞ。門を開門せよ!」

 武都兵「本当に馬孟起様だ。馬孟起様が涼州に帰ってきたぞ」

 涼州には熱心な馬超信者が沢山いたのである。
 門などあってないようなもの。
 次々と開門された。

 王累「ひぃっ。匈奴よ。後は任せましたぞ」

 王累は裸足で隣の漢陽へと逃げ出したのである。

 羌渠「まさか。こんな事で目的が達せられようとはのぉ。劉豹よ。祖父として、命じる。人質となっているひ孫を探し出すのじゃ」

 劉豹「爺様。まさか、それがバレないためにあのようなことを?」

 羌渠「何のことじゃ。ワシらは強い血を好む。お前は、弱くなったわい。ゆえにカシラは解任じゃ。後任には、そうじゃな呼廚泉、お前がなると良い」

 呼廚泉「俺にはとても務まらん。劉豹が束ねるからこその団結略のある匈奴となろう」

 羌渠「そうか。ふむぅ。残念じゃ。ならば、馬超とやらに勝ったものにカシラを務めてもらうというのはどうじゃ?」

 去卑「異議なし」

 劉猛「燃えますな」

 李恪「人質の解放などさせてたまるか」

 於夫羅「しまった」

 飛び出していく李恪は何者かにぶつかる。

 李恪「そこを退け!」

 ???「君も千万と同じなのか?僕は、もう大事な人が一時でも心因的要因で壊されることには我慢ならないんだよ。我が名は、馬柳。馬超が弟、馬柳。君の首を貰い受ける」

 李恪「雑魚がナマ言ってんじゃねぇ。そこを退けぃ!」

 馬柳「警告はした」

 李恪の突き出された剣をガキーンと火花を飛ばしながらまるで剣の上を滑るように、馬柳の剣が李恪の腹を切り裂いた。

 李恪「ぐぼえ。俺様に血が血ガァァァァァァァァァァァ。許さねぇ。許さねぇぞぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 馬柳「浅かったか。やっぱり、兄上のように上手くは行かないな。苦しめてごめんよ。次は、確実に仕留めるよ」

 李恪「調子に乗るなァァァァァァァァ。クソガキィィィィイィィィィ」

 手負の獣となった李恪はもう一本の剣を抜き、2本で、交互に突きを繰り出す。

 李恪「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」

 馬柳「剣は確かに突きが1番強いよ。でもね。単調な動きじゃ。馬家の者の中で1番身軽な僕は捉えられないよ。鬼さん、こっちだよ」

 李恪「ゼェ。ハァ。ゼェ。ハァ。クソッ。イテェ。絶対に絶対にお前は殺す。殺す」

 馬柳は冷静に勝負を焦らない。
 対する李恪は血を流しているにも関わらず頭に血が上りすぎて、動き続けた。
 その結果。

 李恪「ゴポポ。ちょこまかちょこまかと。ゴポポ」

 馬柳「あーあ、すぐに止血してたら助かる命だったのに、君の敗因は、頭に血が昇って、勝負を逸ったことだよ。まぁ、さっきの話を聞く限り、同情も容赦もしないけどね」

 馬柳は血を流しすぎて膝を付いた李恪の脳天から剣を振り下ろした。

 馬柳「えーっと。君、誰だっけ?まぁいっか。僕でも討てるんだから小物だろうし」

 羌渠「見事な腕前よな。氐族の若き長よ」

 馬柳「えーっと、貴方は誰?敵?」

 羌渠「今はまだ敵ではあるな。羌族と氐族の血を引く馬超殿は居られるか?」

 馬柳「兄上?勿論来てるけど」

 馬超「おぅ馬柳。よくやったな。おぅ。コイツは、李恪じゃねぇか。敵将の首取るなんて、やるじゃねぇか。にぃちゃん、鼻が高いぞ」

 馬柳「あっ兄上。コイツ、敵将だったの?単調で、蜀漢の兵士さんの方が強かったけど」

 馬超「まぁ、蜀漢の兵士と比べるんじゃねぇ。アイツらはそのなんだ。関羽殿や張飛殿の訓練を見りゃわかるだろ。毎日死んでるようなもんだ」

 馬柳「あー、成程。それって修練が足りてないってことだよね兄上?」

 馬超「いや、アレを修練なんて言って、良いのか。地獄か。耐えれてる兵がおかしいんだが」

 馬柳「皆、これが終わったら張飛様特製の肉料理が食えるぞーって、叫んでるやつ?」

 馬超「あ、あぁ。肉なんて、食えれば、何でも良いと思うんだが」

 馬柳「えっ?兄上、張飛さんの焼いた肉食べたことないの?」

 馬超「へっ?お前、食ったのかよ?」

 馬柳「うん。あれは、いつも食べてる肉なんかと比べ物にならない美味さだったよ。トロトロで肉厚で霜降りみたいな。もうね。一言で言えない味だった」

 馬超「お前、あの地獄の特訓、やったの?」

 馬柳「うん。霧毯を守るための力が欲しくて、張飛さんに鍛えてもらったんだよ。お陰で、もっと身軽に」

 馬超「あ、そうなんだ。あの特訓をね。うちの兵で耐えられんのいるかな?いや、無理だな。馬柳の奴、根性あるんだな」

 馬柳「何、ぶつぶつ言ってんの兄上?この人が兄上に用があるらしいよ」

 馬超「テメェは、羌渠。丘力居から聞いてるぜ。烏桓を裏切って、その背を容赦なく討ったクズども。そんな奴らが俺に何のようだ?」

 羌渠「その節は申し訳ないことをした。こちらにもやむにやまれぬ事情があったのでな」

 馬超「どんな事情があれば、懇意にしている奴らの背を討つことになるのかしらねぇが」

 羌渠「我らとて、献帝様の宗室なのじゃ。こう言えば、わかるであろう。あの時の献帝様は危うかったということじゃ」

 馬超「へぇ。献帝様を出されちゃ。話を聞かないわけには行かないな。良いぜ。聞いてやるよ」

 羌渠「感謝する」

 こうして、匈奴と馬超による会談が実現することとなる。
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