えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

文字の大きさ
上 下
511 / 644
5章 天下統一

武都を巡る攻防の行方

しおりを挟む
 馬超と共に涼州の玄関口武都を攻撃している劉義賢。
 その軍に同行する張紹と関索。

 張紹「叔父上、それでは、我らはここで」

 関索「叔父上、調子悪いなら無理しないように」

 義賢「甥っ子に心配されるとは、歳を取ったものだ。早く行き、徐庶の助けとなるのだ良いな?」

 張紹「わかりました。どんなことを頼まれるのか聞いてませんが、できる限り、やってみます」

 関索「あー、叔父上。帰ったら、鮑三娘ホウサンジョウとのこと取り持ってくださいよ。絶対に俺が打ち負かして、妻に迎えるんですから」

 義賢「わかった。わかった。鮑凱ホウガイ殿には、俺の方から関索と打ち合って欲しいと掛け合ってみよう。それにしてもお前もあんなじゃじゃ馬を好むなど。何というか」

 関索「だって、カッコ良いじゃ無いですか。自分より強い男じゃ無いと結婚しないだなんて。あー、待っててね。君を打ち負かして、僕が君を妻に迎えるから」

 義賢「顔は良いんだがこのナルシストぶりは。やれやれ。先が思いやられるな。全く。さっさと行け」

 関索「はいはい。行ってきますよ。叔父上、本当に頼みましたからね~」

 義賢「まぁ、鮑凱殿の娘は美人だからな。いや、雲長も面食いだったか。ゴホッ。ゴホッ」

 馬超「あまり無理をされるな劉丁殿。甥っ子のことが心配なのはわかるが」

 義賢「この程度のこと。無理とは言わんよ。さて、武都を奪うとしようか馬超将軍」

 馬超「わかった。もう何もいうまい。頼りにさせてもらうぞ益州総司令官殿」

 益州総司令官とは、益州総督である劉循の補佐官という役職であり、益州総督が益州における統治の最高責任者なのに対して、益州における軍事の最高責任者である。

 義賢「一気に勝負を決める」

 涼州を曹丕より任されていたのは、鍾繇である。

 鍾繇「まさか、漢中を無視して、この武都を狙おうとは。相手は馬超のようだが頼みましたぞ。匈奴の皆々様、それに王累殿」

 劉豹「これも盟約ゆえ。従うが。貴殿はどうされるつもりだ?」

 鍾繇「漢中の方にようがありますのでな。ここのことは王累に任せておりますゆえ」

 王累「引き継ぎはできている。しっかり働くのだな匈奴よ。では、お任せくだされ」

 鍾繇「うむ(やれやれ、まだここで死ぬわけにはいかんのでな。王累よ。せいぜい、最後まで踊るが良い。カッカッカ。さて、ここでの俺の役目は終わった。許昌に向かうとしようか)」

 蔡文姫「鍾繇殿、曹丕様が人質を取るなど誰かの入れ知恵があったことは明らか。貴方が関わっていたりはしませんよね?」

 鍾繇「さて、何のことですかな。せいぜい父君のように獄中で殺されぬように身の振り方は考えられよ文姫殿」

 蔡文姫「!?まさか、貴方が父を。許さない」

 鍾繇「カカカ。何のことか全く身に覚えも無ければ知らぬが俺を殺したいのなら。先ずは、目の前の脅威を打ち破ることですな。こう見えて、俺は忙しいのでな」

 蔡文姫「待ちなさい。逃げるの。この卑怯者」

 蔡文姫はその場で膝を折る。
 劉豹はそんな蔡文姫を抱きしめる。

 蔡文姫「劉豹。私。私」

 劉豹「お前のためなら覚悟はできている。お前を泣かせたのがあの男だというのなら俺が殺してやろう」

 王累「それは聞き捨てなりませんな。野蛮な匈奴は、自分たちの立場がわからないと見える。大事な子供がどうなっても構わないのですかな?」

 笑っている羌渠と於夫羅と違い呼廚泉は、握り拳を作っていた。

 呼廚泉「(確かに俺は匈奴の頭を目指していた。だが、これは違う。父も於夫羅もこんなやり方で、劉豹から頭を奪うつもりなのか。俺は俺は)」

 何かを言おうとした呼廚泉を遮るように離したのは、劉豹である。

 劉豹「重々、承知しているつもりだ。子供のため、今は貴様に従う。だが俺は文姫を傷つけたこと、絶対に許さんぞ!」

 王累「ひぃっ。お、脅しても無駄ですからな。力関係はこちらの方が上なのですからな。羌渠殿・於夫羅殿、頼みましたぞ」

 羌渠「やれやれ。劉豹。そういうことだ。匈奴の指揮権は俺が貰う。良いな?」

 劉豹「あぁ、わかった。俺は頭を冷やすことにする」

 於夫羅「それが良いですぜカシラ」

 劉豹の勢力は力を弱め、羌渠の勢力が力を増していた。
 匈奴とは、全員が親兄弟、親戚の集まりなのだがとにかく誰が覇権を握るかで、常に揉めているのである。
 子供であろうが上の人間には、カシラと言う。
 劉豹も例外ではなく、於夫羅の子なのだが現在匈奴の頭なのでカシラと呼ばれている。
 その辺りは徹底している。
 心の中は、常に誰もが上を目指す野蛮な集まりゆえ、足の引っ張り合いなのだが。
 これ以外にも羌渠の弟である去卑クヒ劉猛リュウモウ、去卑の子である劉訓兜リュウクントウ、劉猛の子である劉副侖リュウフクリン、劉猛の参謀を務める李恪リカクなどがいた。
 その誰もが匈奴のカシラを狙っているのである。
 だが、彼らは身内を殺したりはしない。
 失敗を追及して追い込んで、その地位を剥奪するのである。
 劉豹は蔡文姫との間に双子の男女を授かった。
 その双子が王累によって人質に取られているのである。
 王累は匈奴のことを理解していなかった。
 カシラさえ抑えておけば大丈夫な奴らでは無い。
 だが、羌渠派は、これを好機と捉えて、劉豹排除の動きに移った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。補足説明と登場人物の設定資料

揚惇命
SF
『えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。』という作品の世界観の説明補足と各勢力の登場人物の設定資料となります。 本編のネタバレを含むため本編を読んでからお読みください。 ※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」 中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。 ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。 『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。 宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。 大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。 『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。 修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

処理中です...