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5章 天下統一
洛陽のクーデターのあらまし
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話は少し遡り、徐庶がなぜ洛陽に居たのか。
これは、伏寿がクーデターを起こす少し前に戻る。
洛陽に深々とフードを被って顔を隠した男が伏寿を訪ねる。
この男こそ蜀漢の軍師の1人、徐元直である。
徐庶「皇后様に拝謁できて、光栄にございます。俺は、蜀漢で軍師を務めています徐元直と申します」
伏寿「本当なら魏に世話になっている私が言うべきは、蜀漢の軍師が何のようですなのでしょう。ですが董承が亡くなった今、訪ねてきたのには理由があるのでしょう?」
徐庶「流石、聡明と言われる皇后様です。世間話はやめて、本題に入りましょう。皇后様に反乱を起こして貰いたいのです。勿論、こんなことを頼む以上、俺も力の限り手を貸します。ですが血が流れることは、避けられないかと」
伏寿「曹丕が漢中に赴く今が好機だとお考えなのですね?」
徐庶「はい。董承殿を亡くされ、鎮痛で献帝様がお倒れになったことは、聞いております。そんな状況での」
伏寿「良いでしょう。それで、私は何をすれば良いのかしら?」
徐庶「躊躇われるのは、わかります。ん?良い?本当に?」
伏寿「何を驚いてるのかしら?蜀漢の軍師も大したことないのね。元より、董承と反乱の算段は、していたのよ。露見して、董承が殺されたのは、私の落ち度。董瑶にも申し訳なく思っているわ。このまま、何もしなければ、次に董瑶が危険に晒されるのは時間の問題でしょう。曹丕のこと、これを機に徹底的に私たちを排除するように動くでしょうし」
徐庶「はぁ。俺の周りは何で、いつも肝の座った女性しか居ないのかな。やれやれ、では。先ず、敵の懐に献帝様と一緒に董貴人様を送り込みましょうか。いや、曹丕の妹たちも一緒が良いですね」
伏寿「成程、いやらしい手を考えるものね。私の乱心によって、献帝様を守って逃げ出したことにするわけね。でも、曹丕が董瑶を殺さない確信なんて、あるのかしら?」
徐庶「無いとは言えないでしょうが献帝様の重要度が増していることは理解しているはず。反乱から逃げ出した献帝様を保護した者を逃がさないかと。それに」
伏寿「董承と繋がっていたのが私だと印象付けたいわけね?」
徐庶「あっ。えぇ」
伏寿「いちいち驚いた顔してると間抜けに見えるわよ?それとも、無能を装っている軍師なのかしら?」
徐庶「ハハハ。俺は孔明や士元に比べたら無能ですよ」
伏寿「そういうことにしておきましょうか。それで、反乱を起こすとしてもこちらに付かない者たちもいることはわかっているのよね?」
徐庶「はい。徹底的に排除するように動きます」
シュッと影から2人の男が現れた。
翔「話は済んだのかよ」
蓮「皇后様の前で、そんな口の聞き方」
伏寿「成程、影を使って、制圧していくわけね」
翔「フン。何でも知ってるようなそぶりだな」
蓮「翔がごめんなさい。ごめんなさい」
伏寿「ちょっと影として不安なのは、殺気を隠しきれていないことかしら?恨んでる相手がいるのでしょう?」
翔・蓮「!?」
伏寿「顔に出しちゃダメよ。影は、殺気を完全に消さないと手練れには気付かれちゃうからね」
突然投げられたナイフを寸前で交わす翔と蓮。
翔「その身のこなし」
蓮「皇后様も」
伏寿「暗器術よ。皇后は、献帝様を守る最後の砦でもあるのよ。クスクス」
翔「全く、侮れん女だ。一瞬の殺気が無ければ、気付けんかった」
蓮「僕も」
伏寿「これで、わかったでしょ。殺気を消すことの大事さが。恨みを捨てる必要はないわ。それが原動力ならね。でも、それを任務に持ち込んではダメよ。そんなことしてたら一流じゃなくて二流以下よ。貴方たちの上司は、そんなことも教えてくれなかったのかしら?」
翔「いや、これは姉のため割り切れない俺たちの問題だ」
伏寿「そう。お姉ちゃんっ子なのね。可愛いところあるじゃない」
翔「ぐっ。仕事はする。今すぐ取り掛かる」
蓮「翔の奴、顔真っ赤」
翔「うるせぇ。行くぞ蓮」
徐庶「まぁ、そういうことで、彼らに任せておけば」
伏寿「まぁ、幸いにもここには碌な守備兵は置かれてないから大丈夫よ。反乱を起こしやすいようにね。だから、曹丕が置いてる数人の監視兵さえ、葬れば、外にバレることはないわ。それに父から受け継いだ兵の全てを動員できるもの」
徐庶「荀彧殿から聞きました。仲が良かったと」
伏寿「懐かしい名前ね。彼と私は幼馴染なのよ。それで、文若は元気かしら?」
徐庶「劉備殿のために日夜働いて居られます」
伏寿「そう。彼らしいわね。父もよく言っていたわ。私が献帝様に見初められ無かったら彼の妻に推してたってね。私の幸せは、初めから確約されてたのよ」
徐庶「それは、どちらとでも幸せだったと」
伏寿「えぇ。献帝様も文若も大好きだもの。あっ、今は献帝様、一筋よ。私、軽い女じゃないからね」
徐庶「そこまで聞いてませんよ。後、2人の人間を使います。本物を連れて来られれば良かったんですが、蜀漢でも劉備殿の暗殺の噂がありますので」
伏寿「へぇ。そりゃ無理よね優秀な義兄弟を借りるのは」
徐庶「えぇ、ですから張紹殿と関索殿を」
伏寿「バレないかしら?」
徐庶「顔は出さずに叫ばせるだけですので」
伏寿「成程、その辺りは任せるわ。で、誰に命じられて貴方はここに来たのかしら?」
徐庶「気になりますか?」
伏寿「えぇ。凄くね。だって、その人物は、董承が死ぬことを知っていたことになるもの。興味深いと思わない?」
徐庶「はぁ。いずれ、お引き合わせしますよ」
伏寿「楽しみにしておくわ」
徐庶「(劉丁殿、皇后様は侮れないお方でしたよ。さて、そちらはどうですかね)」
馬超と共に武都にて、戦う1人の男。
我らが主人公、劉義賢である。
これは、伏寿がクーデターを起こす少し前に戻る。
洛陽に深々とフードを被って顔を隠した男が伏寿を訪ねる。
この男こそ蜀漢の軍師の1人、徐元直である。
徐庶「皇后様に拝謁できて、光栄にございます。俺は、蜀漢で軍師を務めています徐元直と申します」
伏寿「本当なら魏に世話になっている私が言うべきは、蜀漢の軍師が何のようですなのでしょう。ですが董承が亡くなった今、訪ねてきたのには理由があるのでしょう?」
徐庶「流石、聡明と言われる皇后様です。世間話はやめて、本題に入りましょう。皇后様に反乱を起こして貰いたいのです。勿論、こんなことを頼む以上、俺も力の限り手を貸します。ですが血が流れることは、避けられないかと」
伏寿「曹丕が漢中に赴く今が好機だとお考えなのですね?」
徐庶「はい。董承殿を亡くされ、鎮痛で献帝様がお倒れになったことは、聞いております。そんな状況での」
伏寿「良いでしょう。それで、私は何をすれば良いのかしら?」
徐庶「躊躇われるのは、わかります。ん?良い?本当に?」
伏寿「何を驚いてるのかしら?蜀漢の軍師も大したことないのね。元より、董承と反乱の算段は、していたのよ。露見して、董承が殺されたのは、私の落ち度。董瑶にも申し訳なく思っているわ。このまま、何もしなければ、次に董瑶が危険に晒されるのは時間の問題でしょう。曹丕のこと、これを機に徹底的に私たちを排除するように動くでしょうし」
徐庶「はぁ。俺の周りは何で、いつも肝の座った女性しか居ないのかな。やれやれ、では。先ず、敵の懐に献帝様と一緒に董貴人様を送り込みましょうか。いや、曹丕の妹たちも一緒が良いですね」
伏寿「成程、いやらしい手を考えるものね。私の乱心によって、献帝様を守って逃げ出したことにするわけね。でも、曹丕が董瑶を殺さない確信なんて、あるのかしら?」
徐庶「無いとは言えないでしょうが献帝様の重要度が増していることは理解しているはず。反乱から逃げ出した献帝様を保護した者を逃がさないかと。それに」
伏寿「董承と繋がっていたのが私だと印象付けたいわけね?」
徐庶「あっ。えぇ」
伏寿「いちいち驚いた顔してると間抜けに見えるわよ?それとも、無能を装っている軍師なのかしら?」
徐庶「ハハハ。俺は孔明や士元に比べたら無能ですよ」
伏寿「そういうことにしておきましょうか。それで、反乱を起こすとしてもこちらに付かない者たちもいることはわかっているのよね?」
徐庶「はい。徹底的に排除するように動きます」
シュッと影から2人の男が現れた。
翔「話は済んだのかよ」
蓮「皇后様の前で、そんな口の聞き方」
伏寿「成程、影を使って、制圧していくわけね」
翔「フン。何でも知ってるようなそぶりだな」
蓮「翔がごめんなさい。ごめんなさい」
伏寿「ちょっと影として不安なのは、殺気を隠しきれていないことかしら?恨んでる相手がいるのでしょう?」
翔・蓮「!?」
伏寿「顔に出しちゃダメよ。影は、殺気を完全に消さないと手練れには気付かれちゃうからね」
突然投げられたナイフを寸前で交わす翔と蓮。
翔「その身のこなし」
蓮「皇后様も」
伏寿「暗器術よ。皇后は、献帝様を守る最後の砦でもあるのよ。クスクス」
翔「全く、侮れん女だ。一瞬の殺気が無ければ、気付けんかった」
蓮「僕も」
伏寿「これで、わかったでしょ。殺気を消すことの大事さが。恨みを捨てる必要はないわ。それが原動力ならね。でも、それを任務に持ち込んではダメよ。そんなことしてたら一流じゃなくて二流以下よ。貴方たちの上司は、そんなことも教えてくれなかったのかしら?」
翔「いや、これは姉のため割り切れない俺たちの問題だ」
伏寿「そう。お姉ちゃんっ子なのね。可愛いところあるじゃない」
翔「ぐっ。仕事はする。今すぐ取り掛かる」
蓮「翔の奴、顔真っ赤」
翔「うるせぇ。行くぞ蓮」
徐庶「まぁ、そういうことで、彼らに任せておけば」
伏寿「まぁ、幸いにもここには碌な守備兵は置かれてないから大丈夫よ。反乱を起こしやすいようにね。だから、曹丕が置いてる数人の監視兵さえ、葬れば、外にバレることはないわ。それに父から受け継いだ兵の全てを動員できるもの」
徐庶「荀彧殿から聞きました。仲が良かったと」
伏寿「懐かしい名前ね。彼と私は幼馴染なのよ。それで、文若は元気かしら?」
徐庶「劉備殿のために日夜働いて居られます」
伏寿「そう。彼らしいわね。父もよく言っていたわ。私が献帝様に見初められ無かったら彼の妻に推してたってね。私の幸せは、初めから確約されてたのよ」
徐庶「それは、どちらとでも幸せだったと」
伏寿「えぇ。献帝様も文若も大好きだもの。あっ、今は献帝様、一筋よ。私、軽い女じゃないからね」
徐庶「そこまで聞いてませんよ。後、2人の人間を使います。本物を連れて来られれば良かったんですが、蜀漢でも劉備殿の暗殺の噂がありますので」
伏寿「へぇ。そりゃ無理よね優秀な義兄弟を借りるのは」
徐庶「えぇ、ですから張紹殿と関索殿を」
伏寿「バレないかしら?」
徐庶「顔は出さずに叫ばせるだけですので」
伏寿「成程、その辺りは任せるわ。で、誰に命じられて貴方はここに来たのかしら?」
徐庶「気になりますか?」
伏寿「えぇ。凄くね。だって、その人物は、董承が死ぬことを知っていたことになるもの。興味深いと思わない?」
徐庶「はぁ。いずれ、お引き合わせしますよ」
伏寿「楽しみにしておくわ」
徐庶「(劉丁殿、皇后様は侮れないお方でしたよ。さて、そちらはどうですかね)」
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我らが主人公、劉義賢である。
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