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5章 天下統一

長安騒動

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 人質を救出するため長安にて騒ぎを起こすよう命じられた鷂は、先ず兵糧庫を燃やして、住民たちに聞こえるような大声で叫ぶ。

 鷂「火事でやすよ~~~。兵舎近くの穀物倉庫が燃えてるでやすよ~~~」

 民女「何ですって!あそこには、私たちが汗水垂らして、働いて持って行かれた兵糧があるのよ!叫んでないで、さっさと火を消しなさいよ!」

 民男「兵士どもは何してんだ!」

 この騒ぎに張晟が出てきた。

 張晟「えぇい。曹丕様があらぬゆえ。お伺いに時間がかかっただけのことで、騒ぎよって。すぐに消すゆえ案内せよ!」

 民女「さっき、兵舎近くの穀物倉庫だって、大きい声で叫んでたでしょうが、とっとと行きなさいよ。税金泥棒ども」

 張晟「このアマ、言わせておけば」

 民男「なんだなんだ、長安を守る守備隊ってのは、民に手を出すのか?やってみろよ」

 張晟「お前ら、そんな口を聞いて、後で覚えておれよ」

 穀物倉庫は跡形もなく燃えていたがそれを見ても冷静な張晟。

 張晟「民のためにここに兵糧があるように見せかけているハリボテを燃やされたところで、何の痛手も無いのだが、あまり騒がれても面倒だ。火を消すのだ」

 燃え上がる火を消すために出てきた張晟が率いた兵は、一瞬で口を塞がれる。

 張晟「ん。んん。んんん(これは、一体何が)」

 蔣義渠「久しぶりだな張晟」

 張晟「ん。んん。んんん(貴様は、蔣義渠!生きていたのか!さては、裏切った俺を殺しに来たのか。クソッ。クソッ)」

 蔣義渠「まぁ、悪く思うな。これは貰っていく」

 張晟と率いた兵は、床に転がされて、身包みを剥がされ、寒空の下真っ裸で、放置される。

 張晟「ん。んん。んんん(おい、蔣義渠!この状態で、放置する気か。許さん。許さんぞ)」

 蔣義渠「あー寒い。服着てても寒いなぁ。運が良かったら助かるかもな。じゃあな」

 蔣義渠が火を消して、民たちに宣言する。

 蔣義渠「先程の火事は、無事消化された!幸いなことに穀物に被害もない。追加で取り立てられることもないだろう」

 民女「はぁ。それにしてもマジで鈍間な奴ら。とっとと火を消しに向かえっての」

 民男「全くだよな。これだから曹丕様にゴマを擦って、寄りついたやつなんか信用ならねぇってんだ。帰ろ帰ろ」

 張晟「ん。んん。んんん(おい、貴様ら高幹様に何、嫌味言って、帰ってんだ!)」

 蔣義渠「あーあ。あんなに言われて、高幹も堕ちるところまで堕ちたものだ。それに付いたお前には当然の報いってわけだな。さて、人が居ない中、何分持つだろうな」

 張晟「ん。んん。んんん(蔣義渠ーーーーー!!!)」

 蔣義渠が何故、こんなことをしたのかそれは少し前に遡る。

 袁煕「田豊殿、長安の人質を救う作戦は?」

 田豊「先ず、秘密裏に中に忍ばせていた密偵を使い騒ぎを起こしてもらおうと考えておる」

 袁尚「それに一体なんの意味があるのか袁煕兄さんは、わかりますか?」

 袁煕「騒ぎによって、誘き寄せられた兵を叩くとかか?」

 沮授「よくわかっておるようで、感心感心。付け加えると袁譚にとって因縁のある男が今の長安の守備隊の頂点だと言えば、どうかな?」

 袁譚「高幹か」

 袁尚「高幹は、袁譚兄上と一緒に最後まで、曹操軍と戦ったんじゃ無いの?」

 袁譚「俺もそう思いたかった。従兄弟に裏切られるなど。だが、あの男は、密かに曹丕と内通し、甄姫の子が曹丕との子では無い可能性があることも曹丕の使用人に話したのだ。その後の結末は、皆も知っての通りだ」

 袁煕「ふざけるなよ高幹。アイツがアイツが甄を殺させるように仕向けたってのか。絶対に許さん。ここで殺してやる」

 田豊「そう怒るな。ワシは、人質の救出だけでなく長安を奪ってやろうと考えているのでな。安心せよ。主食は、お主たちに譲ってやるでな。そのための副菜共の料理を先ずしてやろうと思ってな」

 沮授「騒ぎで釣られた奴らを一つづつ潰すということじゃ」

 袁煕「成程、それは面白い作戦だ。蔣義渠、高幹のことだ。配下も顔見知りだろう」

 蔣義渠「ですな。俺も出ましょう。田豊殿、どのようにしても構わないか?」

 田豊「うむ。但し、確実に仕留めよ」

 蔣義渠「承知した」

 こうして、蔣義渠が出向いた先に居たのが張晟だったというわけだ。

 張晟「ん。んん。んんん(死ぬ。凍えて死んでしまう。早く暖を暖を取らねば)」

 蔣義渠「もうこんなに冷たくなっちまって、可哀想にな。でもお前が武将として死ぬなんて、許せねぇんでな」

 張晟「ん。んん。んんん(このクソがぁぁぁぁぁぁぁ!)」

 蔣義渠「白目剥いて、死んだか。お前に似合いの最後だな。良し、全員この服を着て、高幹軍に潜伏して、さらに掻き回すぞ」

 その頃、二つ目の騒ぎに取り掛かっていた鷂。

 鷂「盗人が出たわーーーーーーー。米俵が運び出されているわーーーーー」

 この知らせを受け張琰が急いで飛び出してきた。

 張琰「馬鹿な!?先程の兵糧庫の火事で、偽物だと気付いて、本物を狙ったというのか。まずい。急ぐのだ」

 現場に駆け付けた張琰は、驚き見開いた状態のまま首を斬られた。

 淳于瓊「わかる。兵糧の大事さが。でも、取りすぎた兵糧は、お前らには勿体無いものだ。これは民たちに俺から返すとしよう。張琰、裏切り者であるお前の死と共に」

 淳于瓊は、張琰と張琰が率いた兵の亡骸を速やかに隠すと兵糧を民たちの家の前に置いて行ったのだった。
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