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5章 天下統一
曹丕軍の様子
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洛陽にて、伏皇后による反乱が起こり、巴郡を攻略するための兵を集めていた曹丕は、漢中の死守を曹仁たちに任せると自身は、兵のほとんどを連れて、洛陽の反乱の鎮圧に向かっていた。
曹丕「反乱を起こすなど馬鹿な女だ。後でこれを咎めて、献帝にも責任を取らせてやる。これで、忌々しい、二重政権も終わりを迎え、全ての兵を動員して、劉備を滅ぼし、孫翊も滅ぼしてくれるわ」
程昱「それは、良き考えですな。死んだ帝を担ぐ不届者など一息に殲滅して仕舞えば良い」
賈詡「(何故この状況で反乱など)」
賈詡は、深く考え込んでいた。
曹丕政権を軌道に乗せるためには、未だに影響力を残している曹操が劉備に暗殺されることが必要不可欠だ。
そして、その報復に劉備の暗殺を行い同時に蜀漢の力を削ぐ必要がある。
司馬懿は、この辺りに対して、抜かりは無いだろう。
だが、この言いようのない不安は何だ?
何か、知らず知らずのうちに罠に嵌められているような不快な感覚だ。
とても、気のせいで片付けられるようなものでは、ない。
だが、相手の出方がわからぬ以上、洛陽の反乱を鎮めるのが妥当か。
漢中を守るのは、曹仁に満寵だ。
落ちる可能性は、万に一つもないだろう。
いや、曹仁が人質が解放されたと知れば、あるいは。
まさか、長安の奇襲を狙っているとか、な。
そうだとして、成功する見込みは薄いだろう。
仮にも本拠地として、それなりの兵を残している。
それこそ漢中への動員を常にかけている状況だ。
生半可な兵で、落ちることはない。
俺の気にしすぎか?
曹昂様では、国を治められぬと判断して、曹丕様に付いた以上、俺にできることをやるしか無いか。
賈詡「曹丕様、兵を分け、長安にも向けるべきかと」
曹丕「そのようなことをすれば、洛陽の反乱に時をかけることになる。全軍で、洛陽の反乱を鎮める」
逢紀「賈詡殿は曹丕様の判断に従えないとそういうことですかな?」
賈詡「いや、薄い可能性だが長安を奇襲される可能性を考えてのことだ」
審配「長安の奇襲などと申すとは。ククク。あり得んことです」
賈詡「絶対と言い切れない以上、最悪の判断を考えておくことも軍師の仕事と心得ているのだが」
逢紀「これはこれは、主君をすぐに見限って、曹操に首を垂れた人の言葉とは思えませんな。その曹操が隠居を命じられると曹丕様に尻尾を。まさか、この期に及んで、劉備への鞍替えを考えて居られるのですかな?」
賈詡「ぐっ。そのようなことを言われるとはな。いや、俺の戯言だった。忘れてくれ、いや忘れてください」
曹丕「そうだ。お前たちは俺に従っていれば良い」
審配「全くですなぁ。ハッハッハ」
賈詡は、もうそれ以上何も言わなかった。
ただ、ただ、この心の中に浮かんだ不安が嘘であれば良いと。
長安の守備を任されていたのは、曹丕が冀州を支配下に置いた際に投降してきた元袁紹麾下の将軍の高幹であった。
この高幹という男、袁紹の甥であり、袁三兄弟の従兄弟に当たるのだが、官渡の戦いの際に密かに曹丕に内通し、招き入れて袁譚を捕らえることに間接的に協力し、拷問することを進言した男である。
この高幹と共に防衛を任されているものに郭援という男がいる。
鍾繇の甥であり、人質の監視役である。
高幹の部下には、衛固・范先・張琰・張晟という高幹四天王がいた。
彼らが長安の防衛を担っていた。
いや、正確には、人質を監視し、暴れるやつには殴りつけて恐怖を植え付けて逃げられないようにしていた。
高幹「また、脱走を企てたようだな曹泰」
曹泰と呼ばれた男は、曹仁の長子であり、この時8歳の子供であり、人質となっていた子供達のリーダーとして、幾度も脱走を企て、どうにか外部と連絡を取れないかと足掻いていた。
曹泰「弱者にしか手を出せないクソ野郎が!」
衛固「黙れ」
曹泰「うぐっ」
高幹「おいおい衛固。顔はやめておけよ。目立つからな。仮にも曹丕様にとっても親族に当たるのだからな」
衛固「おっと。そうでした」
曹泰「あのような下衆が魏王だなんて、俺は認めないぞ!曹操様に頭を下げて、その座を返すべきだ!」
范先「これだから時制の読めんガキは嫌いなんだよ!」
曹泰「ゴフッ」
高幹「あーあ、今ので肋の1本や2本行ったんじゃねぇか。治療費もタダじゃねぇんだからよ。手加減はしてやれよ范先」
范先「へへっ。つい。すいやせん。高幹の兄貴」
曹泰「殺せるものなら殺してみろよ!俺が死んだことを知れば父とて目が覚めるはずさ!子供が人質に取られたから素直に従うなんて、そんなの曹操軍最強と言われた父に相応しくない!」
張琰「まだ、そんだけ口が回るのか。まだまだ殴られたりねぇようだな。オラァ」
曹泰「ゲフッ」
高幹「あーあ。あんまり怒らせんなよ。この通り、加減を知らない奴らの集まりなんだからよ」
曹泰「ハァハァハァ。何度だって、俺は死ぬまで絶対に逃げることを諦めないぞ。このクソ野郎。弱者を痛ぶるのがそんなに楽しいのか。流石、袁紹を殺した相手に尻尾を振っていた奴だ」
張晟「コイツ。殺してしまっても?」
高幹「まぁ、待て。確かに俺は袁紹の甥だが。隙あらば、その地位を奪おうと考えていた男さ。曹操に尻尾を降っていたは、心外だな。その地位も隙あらば、奪ってやるつもりだったのだからな。だが、曹丕様より賜った好き勝手、お前たちを恐怖で支配できる今の地位は悪く無い。精神的重圧の発散ができるのでな」
曹泰「ハァハァ。流石、クズの周りに集まる奴もクズばかりだな。昔の父なら子供を人質に取られようが曹操様のためにその命を惜しみなく投げ出した。父も老いたのだ。子供で目が曇るなど父らしくない」
張晟「もう黙れクソガキ。俺は、親になったことがねぇからわからねぇがよ。曹仁にとって、お前は目に入れても痛くないぐらい大事ってことだ。わかったら大人しくしてろ。って言ってもこれで暫くは動けないだろうがな」
曹泰「ガハッ」
高幹「あーあ。こりゃ、全治1ヶ月は確定の大怪我だな。御愁傷様だ。まぁ、定期的に脱走を企ててくれや。絶対に成功することは、ねぇけどな。ワッハッハ」
人質を閉じ込めている牢屋の個室に放り込まれる曹泰。
曹泰は何度も脱走を企てるから1人だけ別の場所に捕えられていたのだ。
曹泰「ハァハァ。クソッ。ままならないな。俺なんかのために尊敬する父が。その足枷にならないために何度も脱走を図ったのに、いつもいつも連れ戻される。いっそのこと殺してくれれば、どれだけ楽だろう。誰か。誰でも良いから。僕たちを助けてください。うっうぅ」
強がっていても曹泰は、まだ8歳の子供である。
心のうちを曝け出し涙を流すのだった。
曹丕「反乱を起こすなど馬鹿な女だ。後でこれを咎めて、献帝にも責任を取らせてやる。これで、忌々しい、二重政権も終わりを迎え、全ての兵を動員して、劉備を滅ぼし、孫翊も滅ぼしてくれるわ」
程昱「それは、良き考えですな。死んだ帝を担ぐ不届者など一息に殲滅して仕舞えば良い」
賈詡「(何故この状況で反乱など)」
賈詡は、深く考え込んでいた。
曹丕政権を軌道に乗せるためには、未だに影響力を残している曹操が劉備に暗殺されることが必要不可欠だ。
そして、その報復に劉備の暗殺を行い同時に蜀漢の力を削ぐ必要がある。
司馬懿は、この辺りに対して、抜かりは無いだろう。
だが、この言いようのない不安は何だ?
何か、知らず知らずのうちに罠に嵌められているような不快な感覚だ。
とても、気のせいで片付けられるようなものでは、ない。
だが、相手の出方がわからぬ以上、洛陽の反乱を鎮めるのが妥当か。
漢中を守るのは、曹仁に満寵だ。
落ちる可能性は、万に一つもないだろう。
いや、曹仁が人質が解放されたと知れば、あるいは。
まさか、長安の奇襲を狙っているとか、な。
そうだとして、成功する見込みは薄いだろう。
仮にも本拠地として、それなりの兵を残している。
それこそ漢中への動員を常にかけている状況だ。
生半可な兵で、落ちることはない。
俺の気にしすぎか?
曹昂様では、国を治められぬと判断して、曹丕様に付いた以上、俺にできることをやるしか無いか。
賈詡「曹丕様、兵を分け、長安にも向けるべきかと」
曹丕「そのようなことをすれば、洛陽の反乱に時をかけることになる。全軍で、洛陽の反乱を鎮める」
逢紀「賈詡殿は曹丕様の判断に従えないとそういうことですかな?」
賈詡「いや、薄い可能性だが長安を奇襲される可能性を考えてのことだ」
審配「長安の奇襲などと申すとは。ククク。あり得んことです」
賈詡「絶対と言い切れない以上、最悪の判断を考えておくことも軍師の仕事と心得ているのだが」
逢紀「これはこれは、主君をすぐに見限って、曹操に首を垂れた人の言葉とは思えませんな。その曹操が隠居を命じられると曹丕様に尻尾を。まさか、この期に及んで、劉備への鞍替えを考えて居られるのですかな?」
賈詡「ぐっ。そのようなことを言われるとはな。いや、俺の戯言だった。忘れてくれ、いや忘れてください」
曹丕「そうだ。お前たちは俺に従っていれば良い」
審配「全くですなぁ。ハッハッハ」
賈詡は、もうそれ以上何も言わなかった。
ただ、ただ、この心の中に浮かんだ不安が嘘であれば良いと。
長安の守備を任されていたのは、曹丕が冀州を支配下に置いた際に投降してきた元袁紹麾下の将軍の高幹であった。
この高幹という男、袁紹の甥であり、袁三兄弟の従兄弟に当たるのだが、官渡の戦いの際に密かに曹丕に内通し、招き入れて袁譚を捕らえることに間接的に協力し、拷問することを進言した男である。
この高幹と共に防衛を任されているものに郭援という男がいる。
鍾繇の甥であり、人質の監視役である。
高幹の部下には、衛固・范先・張琰・張晟という高幹四天王がいた。
彼らが長安の防衛を担っていた。
いや、正確には、人質を監視し、暴れるやつには殴りつけて恐怖を植え付けて逃げられないようにしていた。
高幹「また、脱走を企てたようだな曹泰」
曹泰と呼ばれた男は、曹仁の長子であり、この時8歳の子供であり、人質となっていた子供達のリーダーとして、幾度も脱走を企て、どうにか外部と連絡を取れないかと足掻いていた。
曹泰「弱者にしか手を出せないクソ野郎が!」
衛固「黙れ」
曹泰「うぐっ」
高幹「おいおい衛固。顔はやめておけよ。目立つからな。仮にも曹丕様にとっても親族に当たるのだからな」
衛固「おっと。そうでした」
曹泰「あのような下衆が魏王だなんて、俺は認めないぞ!曹操様に頭を下げて、その座を返すべきだ!」
范先「これだから時制の読めんガキは嫌いなんだよ!」
曹泰「ゴフッ」
高幹「あーあ、今ので肋の1本や2本行ったんじゃねぇか。治療費もタダじゃねぇんだからよ。手加減はしてやれよ范先」
范先「へへっ。つい。すいやせん。高幹の兄貴」
曹泰「殺せるものなら殺してみろよ!俺が死んだことを知れば父とて目が覚めるはずさ!子供が人質に取られたから素直に従うなんて、そんなの曹操軍最強と言われた父に相応しくない!」
張琰「まだ、そんだけ口が回るのか。まだまだ殴られたりねぇようだな。オラァ」
曹泰「ゲフッ」
高幹「あーあ。あんまり怒らせんなよ。この通り、加減を知らない奴らの集まりなんだからよ」
曹泰「ハァハァハァ。何度だって、俺は死ぬまで絶対に逃げることを諦めないぞ。このクソ野郎。弱者を痛ぶるのがそんなに楽しいのか。流石、袁紹を殺した相手に尻尾を振っていた奴だ」
張晟「コイツ。殺してしまっても?」
高幹「まぁ、待て。確かに俺は袁紹の甥だが。隙あらば、その地位を奪おうと考えていた男さ。曹操に尻尾を降っていたは、心外だな。その地位も隙あらば、奪ってやるつもりだったのだからな。だが、曹丕様より賜った好き勝手、お前たちを恐怖で支配できる今の地位は悪く無い。精神的重圧の発散ができるのでな」
曹泰「ハァハァ。流石、クズの周りに集まる奴もクズばかりだな。昔の父なら子供を人質に取られようが曹操様のためにその命を惜しみなく投げ出した。父も老いたのだ。子供で目が曇るなど父らしくない」
張晟「もう黙れクソガキ。俺は、親になったことがねぇからわからねぇがよ。曹仁にとって、お前は目に入れても痛くないぐらい大事ってことだ。わかったら大人しくしてろ。って言ってもこれで暫くは動けないだろうがな」
曹泰「ガハッ」
高幹「あーあ。こりゃ、全治1ヶ月は確定の大怪我だな。御愁傷様だ。まぁ、定期的に脱走を企ててくれや。絶対に成功することは、ねぇけどな。ワッハッハ」
人質を閉じ込めている牢屋の個室に放り込まれる曹泰。
曹泰は何度も脱走を企てるから1人だけ別の場所に捕えられていたのだ。
曹泰「ハァハァ。クソッ。ままならないな。俺なんかのために尊敬する父が。その足枷にならないために何度も脱走を図ったのに、いつもいつも連れ戻される。いっそのこと殺してくれれば、どれだけ楽だろう。誰か。誰でも良いから。僕たちを助けてください。うっうぅ」
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