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5章 天下統一

弘農急襲の相談

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 甘寧は、劉義賢から聞いたことを話した。

 劉琮「そんな、叔父上がこの世界の人間じゃなかっただなんて。元の世界に帰ろうとしてるのを私たちのために踏みとどまっていると」

 文聘「俄には信じられん」

 蒯越「薄々、何かしら隠しておられることは勘づいておったが」

 蒯良「このようなこと、確かに迂闊に話せないことかと」

 甘寧「まぁ。そういうこった。ってなわけでよ。とっとと統一したいみてぇだわ」

 蒯越「成程な。では、本題に戻るとしよう。確かに弘農を落とせれば、魏にとって大打撃となろう。弘農からは、長安も洛陽も狙うことが可能ゆえな。悪くない一手と言えるがそう簡単に行くまい」

 蒯良「兄上のいう通り、周りの協力は必要不可欠かと。その辺り、甘寧将軍は聞いてるのか?」

 甘寧「洛陽は、何だっけ?献帝の奥さん。えーっと、聞いたんだがよ。思い出せねぇや」

 蒯越「献帝様の奥方というと伏寿様のことだな」

 甘寧「そうそう、何でも董承とかいう側近の死でクーデターとやらを起こすらしい」

 蒯良「クーデター?未知の言葉でわからぬな。だが言葉尻から恐らく反乱では無いかと思うのだが」

 蒯越「肝心なところで、訳のわからぬ言葉を使うとは、全く読み取れなかったらどうするつもりだったのだろうな。それに甘寧将軍がこちらに相談しなければ、破綻していたやもしれんというのに。話をする相手が違うのではあるまいか?」

 甘寧「いや、人の名前覚えんのは、どうも苦手でよ」

 劉琮「弘農を急襲するということは、理解できました。勿論、叔父上のためなら荊州水軍も御協力を惜しみません」

 甘寧「ありがとよ。義賢の奴も喜ぶぜ」

 蒯越「しかし、洛陽での反乱だけでは、手札が足りないな。他には、何か言ってなかったか?」

 甘寧「そうだそうだ。隠居した爺さんたちに協力を頼んだとか。確か、田なんとかと沮なんとかだ」

 蒯良「それは田豊殿と沮授殿で間違いない!そうか、あの2人も腰を上げるのか。して、2人の役割は?」

 甘寧「何でも長安を奇襲するとか。何とか」

 蒯越「これは大きく出たものだな。いきなり魏の本拠地への奇襲とは。成功する可能性はあまりにも少ないと思うが」

 甘寧「あー、義賢の奴は、馬超を連れて、武都を攻撃するとか言ってたな」

 蒯良「成程、主要都市への同時波状攻撃か。考えたものだ。確かに弘農・長安・洛陽・武都と落ちれば、涼州は分断され、速やかに制圧できよう。中原も主要都市の陥落により、大打撃は間違い無い。だが天然の要害である漢中を落とせなければ、立て直しを図られよう。その辺りの手は、何か言っていたか?」

 甘寧「あー、何でも曹仁が抑えてるらしいけど曹丕に人質取られて無理やり言うこと聞かされてるらしいから人質さえ解放しちまえば、交渉で漢中を無血開城させられるだろうってさ」

 蒯越「成程、人質か。魏軍の中で、最も恐ろしい男を縛る手としては、悪くないが。それを最前線に配置するのは、死ねと言っているようなものだな。曹丕とやらは、親族ですら信用していないということだ。ある意味、曹操を引き摺り下ろして、曹丕が魏王となったことを喜ぶべきかもしれん。ここまで、付け入る隙があるのだからな」

 蒯良「ですが兄上、この裏で絵図を描いている司馬懿なる男、自ら破滅の道を選んでいるように感じるのは気のせいですか?」

 蒯越「うむ。曹操よりも曹丕の方が操りやすくて王に立てたまでは、理解できるものだが」

 甘寧「んなこと考えても仕方ねぇよ。弘農の制圧についてなんだが水路を利用して、速やかに海路を封鎖するのが手っ取り早いと考えたんだが。どう思うよ?」

 蒯越「それが良かろうな。魏には、強い水軍は居らん。海を制して、港を抑え、そこを拠点として、兵を運び入れるのが良かろう」

 蒯良「兄上のこと運び入れる兵にも当てが付いてるのでしょう?」

 蒯越「劉表様の頃に確執はあるが今は同じ陣営で、彼らほど頼れるものは居なかろう」

 劉琮「孫堅殿ですか。父が袁紹より玉璽を奪うように命令され、長沙城を明け渡すことで、回避したと」

 蒯越「戦争を回避したなどと聞こえは良いが。実質は、我らが長沙を奪ったことに相違ない。孫堅殿とて、今は同じ陣営とはいえ。我らのことをよくは思っていないだろう」

 甘寧「けどよ。うちの奴らはともかく荊州水軍は、陸地は不慣れだろう。なら、陸地において戦える奴らに協力願うしかねぇ。最悪、うちの奴らだけで、陸地戦しても良いけどよ。その場合は、白兵戦が主体になるわな」

 蒯越「ふむぅ。呂布軍を頼れれば、良かったのだが」

 甘寧「それは無理無理。呂布には、別の役割が与えられてるって、義賢の奴が言ってたからよ」

 蒯良「そんなこと兄上とて、理解している。しかし、孫堅か。長沙の暴れん坊の説得は、一筋縄では行かないかと」

 蒯越「やはり、ここは甘寧将軍だけに任せるのが」

 甘寧「あぁ。ったくよ。んな小せえことにうだうだ言ってどうすんだ。俺はよ。義賢の力になってやりてぇ。お前らもそうだろ。あぁ。もう、俺が交渉役をやってやらぁ。お前らは、いつでも動けるように準備だけはしといてくれや」

 劉琮「いえ、私も行きます。父が寄る辺を奪ったことは事実。息子、いえ娘である私も謝りたい」

 甘寧「おぅ。じゃあ、行くぞ」

 劉琮「仲業、準備は任せたよ」

 文聘「はっ」

 劉琮は、文聘の側に行き、耳元で告げる。

 劉琮「だいぶ禁欲になるね。帰ってきたらいっぱい愛してね仲業」

 文聘「フォォォォォォォォ。も、勿論です劉琮様~~~~~」

 蒯越「馬鹿共が」

 蒯良「こちらのことは任されよ。甘寧将軍、押し付けるようで悪いが孫堅殿の説得頼みます」

 甘寧「おぅ。任せとけ」

 こうして、甘寧は弘農を拠点として、更なる攻め手を作るべく交州を治める孫堅の元に交渉に向かったのである。
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