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5章 天下統一
3人の決意
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曹操が無事に脱出した内部では、曹安民と夏侯充が偉大な人たちを真似て、雪崩れ込んできた敵兵を斬り伏せていた。
曹安民「まだへばるなよ元譲」
夏侯充「孟徳こそ。俺より先に行くのは許さんぞ」
典韋「本当に2人が殿と旦那に見えてきたぜ。アッシが最後まで、御守りしてやらねぇと」
???「父よ。その役目は俺が担う」
そんな言葉の後、典韋はまだ敵の押し寄せてきていない門の外へと放り出されていた。
典韋「典満《テンマン》、オメェ何してやがる」
典満「父の役目は、殿を守ること。ここで死ぬことではない。ここで死ぬのは、息子の務め。我らが勇姿、しかと殿にお伝えしてくだされ。この悪来典韋を討てる奴は、いねぇのか?」
典韋「馬鹿野郎が。俺ぁ。そんな口調じゃねぇってんだよ」
押し寄せる敵兵を前に息も絶え絶えにその最後まで偉大な人たちを真似て、斬り伏せ続ける。
曹安民「我が名は、曹孟徳。命知らずな者どもよ。この首、欲しくば、かかって参られよ」
魏兵A「流石は、曹操様。一筋縄では、いかんか」
そう対峙している敵でさえ、目の前の曹安民が曹操に見えていたのだ。
魏兵B「何してる。敵は3人だ。取り囲んで殺せ」
夏侯充「背中は、任せたぞ孟徳!」
曹安民「あぁ。元譲!」
典満「殿の命はアッシが死んでも守りやすぜ」
曹安民「悪来、任せたぞ!」
典満「ヘイ」
3人の気迫を前に積み上がるは敵兵の山。
魏兵C「ばっ化け物め。良い加減くたばりやがれ!」
曹安民「そう簡単にくれてやれるものではないのだ曹孟徳の首はな!」
夏侯充「夏侯元譲の首もな!」
典満「悪来典韋の首もだぜ!」
王昶「やれやれ、貴方方には死んでもらわなければならないのです。曹丕様の治世を盤石とするために」
曹安民「お前ほどの男が落ちたものだな王昶。それ程に、司馬懿の目指す国は良いものか?」
王昶「力なきものが上に立たない世界とはなりましょうな。曹操様は、以前は確かに力ある者でした。しかし、衰えた。徐州で劉備に再三敗北し、華北では、曹丕の勝手を許し、司馬懿殿の力を強めた。本当に残念です」
曹安民「そうかも知れんな。俺も司馬懿という男をみくびっていたことを後悔している。だが、俺が死ねば、曹家が終わる。この首には、多くの者たちの希望があるのだ。そう易々と討てると思わぬことだ王昶!」
王昶「確かにこの気迫は、以前の曹操様を彷彿とさせる。もっと早く、力を取り戻して居られれば、司馬懿なんぞの好き勝手にされずに済んだものを。残念です。今となっては、もう遅い。あの方に逆らっては魏国での立場が悪くなりますのでな。悪く思わないでくだされ」
曹安民は限界を既に超えていた偉大な叔父である曹操を必死に真似、敵にもそう見えるような気迫をずっと出し続けていた。
しかし、曹安民が諦めることはない。
その頭にあるのは、叔父が無事に逃げのびること。
そのためなら自分の命など安いものだ。
叔父さえ生き残れば、きっと曹家は立て直せる。
そのために自分にできることは何か。
精一杯、偉大な叔父を真似ること。
曹安民「王昶、お前はここで討ち果たしてからよう!」
王昶「その言葉、そっくりお返ししましょうぞ」
限界を迎えていた曹安民に王昶を倒す力など残っていなかった。
それでも、斬り殺される最後の1秒まで、曹孟徳という偉大な叔父を演じきった。
曹安民「王昶、我を倒すとは、見事なり。(叔父上、俺は曹孟徳という偉大な叔父に近付けられたでしょうか。曹昂、叔父上のことを頼む。ハハッ。意識が遠くなってきた)ガハッ」
王昶「敵将、曹孟徳。討ち取ったり」
同時刻、夏侯充もまた相対していた。
夏侯充「胡遵か」
胡遵「貴方様には、大恩がある。こうして、敵として、戦うことになるなど考えたこともありませんでした。夏侯惇殿」
夏侯充「胡遵、やめよ。お前は敵なのだ。この夏侯元譲の首を討ちたくば、かかってこい」
胡遵「変わりませんね。曹操様が力を失わないで欲しかったと思わずにはいられません。今、力を持っているのは司馬懿。長いものに巻かれなければ、我ら下っ端は生きていけませんゆえ」
夏侯充「わかっている。そのためには手柄が必要であろう。この夏侯元譲という大将首がな」
胡遵「俺に師を殺せと。そう言うのですね」
夏侯充「他にどうする?俺はこの命が尽きるまで、孟徳のため、立ち塞がる敵を斬り続ける。例え、それがお前だとしてもな」
胡遵「そうでした。夏侯惇将軍は、そういう人でした。なら、俺も覚悟を決めましょう。貴方をここで討つ」
満身創痍の夏侯充に胡遵の相手などできない。
だが、例えそうであっても偉大な父なら直ぐには討ち倒されない。
胡遵の剣撃に合わせるのがやっとだったが対応できたのは、それが偉大な父の剣に似ていたからに違いない。
父は、教えるのも上手かったのだろう。
父に欠点があるとすれば自分を含め子に恵まれなかったことだ。
夏侯楙は、貧弱で臆病。
俺自身もそんなに強くはない。
逃げ出したい気持ちを奮い立たせて、今この一時だけでも偉大な父を真似ようと決心した。
殿を真似ると決めた曹安民のために。
夏侯充「強くなったな胡遵。(父上、先に行く不忠をお許しください。夏侯楙、父上のことを。いや頼めないな。目の前が暗く)ガハッ」
胡遵「て、敵将、か、夏侯惇。うっ。うぅ。討ち取ったり~」
同時刻、典満は、曹安民と夏侯充の一騎討ちが邪魔されないように敵兵を1人で抑え込んでいた。
しかし、多勢に無勢。
多くの矢と槍や剣で突き刺されながらも立っていた。
典満「ハァ。ハァ。ハァ。ど。ど、う、し、た。そ、の、て、い、ど、か」
魏兵E「こんだけの矢と槍と剣を受けて、まだ話すのか。このとっととくたばりやがれ化け物が!」
典満に槍が深々と突き刺さる。
しかし、その場から動かない。
恐れ慄いた魏兵は、我先に逃げ出した。
しかし典満は、動かなかったのではない。
既に絶命していたのである。
最後まで、偉大な父である典韋を真似て、親衛隊長らしく。
立ったままの絶命。
典満「(父よ。殿のことは任せました。曹安民・夏侯充、先に逝く。許せ)」
3人の死を持って、許昌は司馬懿によって落城させられることとなる。
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夏侯充「孟徳こそ。俺より先に行くのは許さんぞ」
典韋「本当に2人が殿と旦那に見えてきたぜ。アッシが最後まで、御守りしてやらねぇと」
???「父よ。その役目は俺が担う」
そんな言葉の後、典韋はまだ敵の押し寄せてきていない門の外へと放り出されていた。
典韋「典満《テンマン》、オメェ何してやがる」
典満「父の役目は、殿を守ること。ここで死ぬことではない。ここで死ぬのは、息子の務め。我らが勇姿、しかと殿にお伝えしてくだされ。この悪来典韋を討てる奴は、いねぇのか?」
典韋「馬鹿野郎が。俺ぁ。そんな口調じゃねぇってんだよ」
押し寄せる敵兵を前に息も絶え絶えにその最後まで偉大な人たちを真似て、斬り伏せ続ける。
曹安民「我が名は、曹孟徳。命知らずな者どもよ。この首、欲しくば、かかって参られよ」
魏兵A「流石は、曹操様。一筋縄では、いかんか」
そう対峙している敵でさえ、目の前の曹安民が曹操に見えていたのだ。
魏兵B「何してる。敵は3人だ。取り囲んで殺せ」
夏侯充「背中は、任せたぞ孟徳!」
曹安民「あぁ。元譲!」
典満「殿の命はアッシが死んでも守りやすぜ」
曹安民「悪来、任せたぞ!」
典満「ヘイ」
3人の気迫を前に積み上がるは敵兵の山。
魏兵C「ばっ化け物め。良い加減くたばりやがれ!」
曹安民「そう簡単にくれてやれるものではないのだ曹孟徳の首はな!」
夏侯充「夏侯元譲の首もな!」
典満「悪来典韋の首もだぜ!」
王昶「やれやれ、貴方方には死んでもらわなければならないのです。曹丕様の治世を盤石とするために」
曹安民「お前ほどの男が落ちたものだな王昶。それ程に、司馬懿の目指す国は良いものか?」
王昶「力なきものが上に立たない世界とはなりましょうな。曹操様は、以前は確かに力ある者でした。しかし、衰えた。徐州で劉備に再三敗北し、華北では、曹丕の勝手を許し、司馬懿殿の力を強めた。本当に残念です」
曹安民「そうかも知れんな。俺も司馬懿という男をみくびっていたことを後悔している。だが、俺が死ねば、曹家が終わる。この首には、多くの者たちの希望があるのだ。そう易々と討てると思わぬことだ王昶!」
王昶「確かにこの気迫は、以前の曹操様を彷彿とさせる。もっと早く、力を取り戻して居られれば、司馬懿なんぞの好き勝手にされずに済んだものを。残念です。今となっては、もう遅い。あの方に逆らっては魏国での立場が悪くなりますのでな。悪く思わないでくだされ」
曹安民は限界を既に超えていた偉大な叔父である曹操を必死に真似、敵にもそう見えるような気迫をずっと出し続けていた。
しかし、曹安民が諦めることはない。
その頭にあるのは、叔父が無事に逃げのびること。
そのためなら自分の命など安いものだ。
叔父さえ生き残れば、きっと曹家は立て直せる。
そのために自分にできることは何か。
精一杯、偉大な叔父を真似ること。
曹安民「王昶、お前はここで討ち果たしてからよう!」
王昶「その言葉、そっくりお返ししましょうぞ」
限界を迎えていた曹安民に王昶を倒す力など残っていなかった。
それでも、斬り殺される最後の1秒まで、曹孟徳という偉大な叔父を演じきった。
曹安民「王昶、我を倒すとは、見事なり。(叔父上、俺は曹孟徳という偉大な叔父に近付けられたでしょうか。曹昂、叔父上のことを頼む。ハハッ。意識が遠くなってきた)ガハッ」
王昶「敵将、曹孟徳。討ち取ったり」
同時刻、夏侯充もまた相対していた。
夏侯充「胡遵か」
胡遵「貴方様には、大恩がある。こうして、敵として、戦うことになるなど考えたこともありませんでした。夏侯惇殿」
夏侯充「胡遵、やめよ。お前は敵なのだ。この夏侯元譲の首を討ちたくば、かかってこい」
胡遵「変わりませんね。曹操様が力を失わないで欲しかったと思わずにはいられません。今、力を持っているのは司馬懿。長いものに巻かれなければ、我ら下っ端は生きていけませんゆえ」
夏侯充「わかっている。そのためには手柄が必要であろう。この夏侯元譲という大将首がな」
胡遵「俺に師を殺せと。そう言うのですね」
夏侯充「他にどうする?俺はこの命が尽きるまで、孟徳のため、立ち塞がる敵を斬り続ける。例え、それがお前だとしてもな」
胡遵「そうでした。夏侯惇将軍は、そういう人でした。なら、俺も覚悟を決めましょう。貴方をここで討つ」
満身創痍の夏侯充に胡遵の相手などできない。
だが、例えそうであっても偉大な父なら直ぐには討ち倒されない。
胡遵の剣撃に合わせるのがやっとだったが対応できたのは、それが偉大な父の剣に似ていたからに違いない。
父は、教えるのも上手かったのだろう。
父に欠点があるとすれば自分を含め子に恵まれなかったことだ。
夏侯楙は、貧弱で臆病。
俺自身もそんなに強くはない。
逃げ出したい気持ちを奮い立たせて、今この一時だけでも偉大な父を真似ようと決心した。
殿を真似ると決めた曹安民のために。
夏侯充「強くなったな胡遵。(父上、先に行く不忠をお許しください。夏侯楙、父上のことを。いや頼めないな。目の前が暗く)ガハッ」
胡遵「て、敵将、か、夏侯惇。うっ。うぅ。討ち取ったり~」
同時刻、典満は、曹安民と夏侯充の一騎討ちが邪魔されないように敵兵を1人で抑え込んでいた。
しかし、多勢に無勢。
多くの矢と槍や剣で突き刺されながらも立っていた。
典満「ハァ。ハァ。ハァ。ど。ど、う、し、た。そ、の、て、い、ど、か」
魏兵E「こんだけの矢と槍と剣を受けて、まだ話すのか。このとっととくたばりやがれ化け物が!」
典満に槍が深々と突き刺さる。
しかし、その場から動かない。
恐れ慄いた魏兵は、我先に逃げ出した。
しかし典満は、動かなかったのではない。
既に絶命していたのである。
最後まで、偉大な父である典韋を真似て、親衛隊長らしく。
立ったままの絶命。
典満「(父よ。殿のことは任せました。曹安民・夏侯充、先に逝く。許せ)」
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