えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

文字の大きさ
上 下
494 / 644
5章 天下統一

呂布vs司馬昭

しおりを挟む
 呂布の足止めをせよと命令された司馬昭だが気は乗らなかった。

 司馬昭「はぁ。こうなったのも全て父上のせいなんだよなぁ。人質を取って、主家の滅亡を望むとかまだ混沌としている乱世の状態でやるとか何考えてんだか。そもそも曹丕様だけで人質取る策とか取るわけないんだからバレるっての。飄々とした口調で何度もやんわりと咎めたつもりなんだけどなぁ俺。逃げるか」

 ???「全く、何を言っている。逃げて何処に行く?劉備のところか?司馬懿の息子を重用するとでも?」

 司馬昭「独り言を聞くとかお前、本当に心配りできねぇよな賈充カジュウ

 賈充「お前が怠けすぎなのが問題だと思うが。して、どうやって呂布を止めるつもりだ。まさか本当に降伏や逃げを考えていたわけではあるまいな?」

 司馬昭「降伏はねぇけど逃げは考えてたよ。そもそも父上が招いた自業自得の側面が強いからな。ちょっと前に邸宅であった陳琳殿が仮面のやつに斬られたのも十中八九、父上の仕業だろうしなぁ。崩壊に向かってるのは間違いねぇよ」

 賈充「だとして何が問題だ?陳琳は、司馬懿殿が曹丕を誑かしていたことに気付いていた。遅かれ早かれ処分されてたのは、間違いあるまい。人質に暗殺は、常道手段にして、手っ取り早い。何も間違ってはいないと思うがな」

 司馬昭「その考えがすでに間違えてんだよなぁ。人質を取るってことは、心を縛るってことだ。心を縛られた側は、表向きには従うだろうさ。でもな。それが一度、解放されるなんてことになったらどうなるよ。その怒りは、人質を取るという選択をした人間に向かう。まぁ、この場合は曹丕だわな。でもよ。あの曹丕が1人で、んなことできるなんて思ってる奴が何人いるよ?そもそも初めから破綻してんだよ。邪道を使うってのは、そういう危険性が伴うってことだ。今や劉備の治世は揺るぎなく王道により民の信頼も厚い。あの噂を流して、魏国内の民は団結できたとして、蜀漢を揺るがすことにはならねぇよ。俺に言わせれば、間近に戦うことが決まってる相手を前に、国内で、誰が実権を握るかなんてことしてるのがそもそも間違いだな。結果的に、父上の予想を上回る勢いで、呂布が許昌に攻めてきたわけだ。孫翊が頼りにならなかったなんて考えてるだろうが違うね。孫翊は、孫堅と孫権が立て続けに蜀漢に降伏して、孫策は行方不明。家臣に祭り上げられたにしては、立派にその務めを果たそうとしているだけ、まだマシな方さ。それに引き換え、父上ときたら。人質に暗殺だの。古臭いやり方で、焦っているようにしか見えねぇな」

 賈充「そこまで先行きが見えていて、何故。怠ける。実権を父から奪えば良いだろう」

 司馬昭「俺が。無理無理。やる気ねぇもん。兄上なら少しは違うかと思ってっけど。父上には、面と向かって、意見しねぇからな。相変わらず何考えてんのかわかんねぇ分、不気味だわな」

 賈充「俺は、この状況でそこまで怠けられるお前が不思議だが」

 伝令「司馬昭様、前線の将が相次いで討死。統率の取れなくなった兵も呂布軍の追撃を受け」

 司馬昭「まぁ、そうだよなぁ。こっちは睨み合いをしたかったんだけど。向こうは、そうはいかねぇもんなぁ。かったりぃな。で、死んだのは誰?」

 伝令「百人将が10人と千人将が1人」

 司馬昭「どうせ。呂布が来て手柄を取れるとか思って突撃したバカだろ。俺は持ち場を守れって、厳命したよな?」

 伝令「はい。ですが、2千人の兵の統率が一瞬にして無になったのは」

 司馬昭「ほっといて構わねえよ」

 伝令「はっ?」

 司馬昭「馬鹿の救援にきちんと命令守ってる奴向かわせて、綻びが生じたら意味ねぇだろ。それが狙いなんだからよ」

 司馬昭の読みは当たっていた。
 数で劣っていた呂布軍が曹操の救援に向かうため足止めに現れた部隊を抜く必要があった。
 しかし、こちらはせいぜい5千。
 対して、足止めに来たのは、4倍の2万。
 荀攸は、これに対して、呂布の武力を生かした正面突破を進言する。
 荀彧は、この進言を跳ね除け、指揮官を討ち取り、統率を見出すことを進言する。
 呂布は、後者を選んで、突出してきた軍の指揮官を狙い撃ち、2千の兵を蹴散らした。

 魏兵「ひぃっ。化け物め。逃げろ逃げるのだ」

 呂布「1兵たりとも逃すな。追い立てよ!」

 しかし、魏軍の固い守備を崩すには至らなかった。

 荀彧「これは困りましたね」

 荀攸「だから申したのだ。呂布の圧倒的武力を持って、正面から打ち崩して突撃するのが良いとな」

 荀彧「いや、そうしていれば、囲まれて殲滅されていたのは、こちらの方でしょう。あの2千は、手柄を焦り突出していました。それを助けるために兵を出すと読んだのですが、流石2万の軍勢を任されている将軍ですね。見捨てる選択を降すとは」

 ???「司馬懿という人間が人質に暗殺という邪道を取れるのなら、またこれも然りかと」

 呂布「王粛オウシュク、戻ったか。して、どうであった?」

 王粛「あの2万を束ねている将軍は、司馬懿の次子である司馬昭と申す者であることがわかった。こちらの足止めのために何としても睨み合いに持ち込みたいのだろう」

 王粛とは、王朗の息子であり、揚州を孫策に落とされて以降、徐州に流れてきていた。

 荀彧「まずいですね。時をかければ、曹操殿の救出は絶望的になるかと」

 呂布「ふむ。荀攸の策を取り、無理にでも攻めるべきか」

 王粛「一つ提案が」

 膠着する呂布vs司馬昭に王粛がする提案とは?
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。補足説明と登場人物の設定資料

揚惇命
SF
『えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。』という作品の世界観の説明補足と各勢力の登場人物の設定資料となります。 本編のネタバレを含むため本編を読んでからお読みください。 ※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」 中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。 ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。 『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。 宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。 大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。 『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。 修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

処理中です...