えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

5章 天下統一

暗殺の阻止

　これは、劉封と劉禅の一騎討ちの少し前の話、関羽と張飛にとある頼み事をする義賢。

　義賢「2人に話があるんだ」

　張飛「劉禅に訓練を付けて欲しいって事なら頼まれなくてもわかってらぁ。俺様が劉封に勝てるように鍛えてやらぁ」

　関羽「そういうことなら某も協力しようぞ」

　義賢「それも勿論なのだが。兄上に関係していることだ」

　張飛「大兄者に関係していることだぁ？穏やかじゃねぇな」

　関羽「兄者に関係していること？義賢よ。話すが良かろう」

　義賢「封が禅に突っかかったのは、十中八九演技だと考えている。その裏で動いているもっと大きな陰謀を隠すための」

　張飛「さっきのが演技だぁ？鬼気迫る勢いだったと思うがアレが演技だって、おめぇさんは考えてんのかい？」

　義賢「あぁ。妻と子を人質に取られて、そうするしかなかったと。俺は、封の一本筋が通ったところは気に入っている。まぁ、雲長とは馬が合わないようだが」

　関羽「某が関平や関興と違い、直ぐに劉禅様を後継者に推したことが気に入らないのだろう」

　張飛「１つ気になってたんだがよ。兄者は、早くから劉封よりも劉禅のことを推していたよな？どうしてだ？」

　関羽「戦無き世が兄者の目指す道である。古くから某らと戦場を共にしたアヤツには生きづらかろう」

　張飛「成程な。兄者も劉封のことは武人として考えてるわけか」

　関羽「うむ。少なくとも劉禅様よりは、な」

　張飛「それでか。俺ぁ。兄者が居ない間に決まった後継者だからよ。てっきり、義賢のところに乗り込むんじゃねぇかと内心ヒヤヒヤしてたんだ」

　関羽「翼徳、某とて、よくわかっているつもりだ。して、義賢よ。兄者に関わることとは？」

　義賢「暗殺計画」

　張飛・関羽「！？」

　2人とも、暗殺と聞き驚きつつも身構える。

　張飛「ちょっと待ってくれ。荀彧の奴も大兄者が暗殺されるような密偵を見逃すわけねぇだろ！」

　義賢「見逃さざるおえないとしたらどうだ？」

　関羽「荀彧が見逃さざるおえないとなると十中八九兄者に関わること。暗殺者は、まさか兄者が最も大事にしている民のフリをしているということか？」

　義賢「雲長の言う通りだ。難民のフリをして、蜀漢に巧妙に入り込む」

　張飛「いや、待ってくれ。そんなことをどうして、義賢の奴が知ってんだ？おかしいじゃねぇか」

　義賢「そのことについて、今から話すことは、俺自身に関わることであり、兄上にも話したことだ。聞いてくれるか？ゴホッゴホッ」

　関羽「治らぬ病であることは、兄者より聞いておる。それを承知で無理をしておることも。某は、休養することを強く求めるが」

　義賢「雲長、心配してくれてありがとう。俺は、この世界の人間じゃない。命が尽きるというのも。この身体の寿命は、遥か昔、黄巾の乱が起こった直後に亡くなっている。落雷に打たれてな」

　張飛「落雷の話は、お前がよく倒れるのが気になってよ。大兄者からそれとなくは聞いてたんだがよ」

　関羽「だとしたら今のお前は誰だと言うのだ？」

　義賢「この世より遥か未来に隣国の島国で誕生する劉義賢。どうやらこの体の持ち主の兄上が御先祖様らしい」

　張飛「おいおいおい嘘だろ。兄者、俺ぁ。もう付いて行けてねぇぞ」

　関羽「某とて、同じだ翼徳。即ち、兄者の末裔ということか？どうして、この世界に？」

　義賢「笑っちゃう話なんだが。部活での労いの旅行でな。兄上の墓巡りに訪れていたところを墓に落ちてしまってな。俺は、死んだと思ってたんだがどうやら落盤事故だったらしくてな。魂だけがこちらの世界に迷い込んでしまった状態とのことだ」

　張飛「何が笑う話なもんか。立派じゃねぇか。御先祖様の墓に参るなんざ。大兄者もさぞかし喜んでただろうさ」

　関羽「うむ。墓巡りというのは気になるが」

　義賢「あっ。それはな。まぁ俺の世界からするとこの時代で数千年も前なわけよ。あちこちに兄上の墓というか。兄上に限ったことじゃないんだけどそこら中にこの世界の有名な人の墓が点在してるんだよ」

　張飛「はっ？いやいや、墓が点在って、骨を何箇所にも渡って埋葬してんのか？」

　関羽「いや。そうではなかろう。そうしたのもまた民たちであろう。ここに存在していたとそうしたかったのだ」

　義賢「雲長の言う通りなんだ。まぁ、雲長なんて、俺の世界では、商売の神様にされてるから」

　関羽「某が商売の神なら兄者は大明神だな」

　義賢「それが兄上は、神じゃないんだなぁ。だから、割と兄上よりも雲長の方が有名だったりする」

　張飛「俺は俺は？」

　義賢「あっごめん。翼徳は、何もない。長板での大喝が有名なぐらいかな。晩年は、雲長が呉に暗殺されたことに腹を立てて、無理な要求をして部下に寝首を掻かれて亡くなるし。その結果、兄上も忠臣の多くを巻き込んで、呉と一大決戦に及んで、多くを死なせて、蜀を衰退させた凡愚の側面が強いかな」

　張飛「どれも全く身に覚えが無いんだが」

　関羽「うむ。某が呉に討たれるなど俄には信じられん」

　義賢「そうだよな。でも、俺が学んだ歴史では、三国を統一したのは、魏でも呉でも蜀でもなく司馬炎が立ち上げた晋って国なんだ」

　関羽「全く歴史が変わっていると？」

　義賢「俺が捻じ曲げに捻じ曲げた」

　張飛「そりゃ良い。今のがよっぽど幸せだ。なっ兄者」

　関羽「うむ。我ら同じ年・同じ月・同じ日に産まれずとも死ぬ時は同じ年・同じ月・同じ日を願った者だ。義賢から聞く未来では、死んでも死に切れんというもの。して、我らにどうせよと？」

　義賢「知らないフリをして、隙を作って欲しい。兄上の護衛には、影がいる」

　張飛「梟か。アイツなら安心だな」

　関羽「承知した。義賢よ。お互い意見が衝突したこともあったがお前というまれびとと共に戦えること誇りに思う。身体は大事にいたせ。まだ統一まで先は長かろう」

　義賢「雲長。気遣い痛み入る。俺の我儘を通すようで悪いが最後まで、皆の隣で戦わせてくれ」

　そう言って、義賢はその場を後にした。

　張飛「義賢の奴、相当苦しそうだったな？」

　関羽「あの話が全て真実なら。現世へと引き戻される度に強い痛みを伴って、それでも兄者のため。我らのために耐えているのだろう。一刻も早く、兄者の望む天下をアヤツに見せて、安心させてやらねばな」

　張飛「そうだな」

　こうして、劉備暗殺計画があることを2人に打ち明けた義賢は、益州へと旅立った。