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5章 天下統一
義賢、呂布に全てを打ち明ける
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劉玄徳に自分のことを全て打ち明けた義賢が次に向かったのは、徐州にて、曹操・孫策に睨みを効かせている呂布の元であった。その側には、劉備より補佐を任され同行する袁燿の姿があった。
袁燿「義賢先生。じゃなくて、叔父上。待ってください」
義賢「燿じゃないか。どうした?」
袁燿「義父から徐州に向かう叔父上のお供をせよと仰せつかりました」
義賢「そうか。呂姫と会えると良いな」
袁燿「そ、そ、そ、そんな。ぼ、ぼ、ぼ、僕は。お、お、お、叔父上の補佐を」
義賢「そんなに動揺して顔に出してはモロバレだぞ。ハッハッハ。そんなことでは、呂姫に尻を敷かれるぞ」
袁燿「もう、叔父上、揶揄わないでください。ですが、またどうして徐州に?」
義賢「ちょっと視察だ。呂布殿に会いたくなってな」
袁燿「まぁ、僕は呂姫に会えるなら」
義賢「本音が出てるぞ燿」
袁燿「はっ。もう、早く行きますよ叔父上」
義賢「わかった。わかった」
徐州を治めている呂布は下邳を本拠としていた。義賢の来訪を聞くと嬉しそうに出迎えたのである。その傍らには、ヨシカタ塾を袁燿と共に卒業した後、呂布の近臣となった呂姫の姿があった。
呂布「これは劉丁様、よくぞお越しくださった。大したもてなしもできませんが。視察の間、粗相のないように、致しましょう」
呂姫「先生、御無沙汰しております」
義賢「呂布殿も呂姫も元気そうでなにより。おい、燿。俺の後ろに何故隠れる?」
袁燿「御機嫌麗しゅう。良い朝ですね呂姫ちゃん」
呂姫「えぇ、そうね。変わりなさそうで安心したわ袁燿」
呂姫の眩しい笑顔でニッコリと微笑まれた袁燿は固まって、一言だけ。
袁燿「可愛い」
義賢「小さい声じゃ聞こえないだろう。全く。呂姫殿、すまないが呂布殿と2人きりで話さねばならぬことがある。燿のことを頼めるかな?」
呂姫「心得ました。ほら、袁燿。行くわよ」
袁燿「呂姫ちゃんが手を握ってくれた。この手はもう二度と洗わない」
呂姫「馬鹿、そんな不衛生なことするならもう手を引かないわよ」
袁燿「そんなぁ。待ってよ~呂姫ちゃん。手を繋いでよぉ~」
こうして2人が去っていくと呂布と義賢は2人きりのため護衛も外して友人同士のように語らい合う。
呂布「義賢のお陰で娘もあのように立派に成長できた。父としては、愛する人と結ばれて欲しいが」
義賢「奉先、横目でそう俺を見るな。呂姫から向けられる視線には薄々気付いていた。だが、俺は董白だけと決めている。期待に応えられなくて、すまないな」
呂布「いや、そういうところを娘を好いているのだろう。気にしないでくれ、俺のあくまで願望だ。それで、どうしたお前が俺に話があるとは、皆で霊帝様をお救いした時以来だな」
義賢「あぁ。実はな」
義賢は、先ず自分の病のことを打ち明けた。
呂布「病か。張角には、一度見せたのか?」
義賢「いや。見せてはいない」
呂布「なら、すぐに」
義賢「無駄だ。自分でもわからない病だ。張角殿に見せても休めと療養施設に入れられるだけだろう。なら、俺は兄上のため。皆の平和のためにこの命を燃やし尽くしたい。ゴホッゴホッ」
呂布「しかし。おい、義賢、大丈夫か!?血反吐だと!?すぐに張角を」
義賢「待て。この通り、残り少ない命の人間が奉先にまた頼みたいことができたのだ。俺の信じられない与太話に付き合ってくれるか?」
呂布「覚悟ができてるのだな。わかった聞かせてもらおう」
義賢は、自分がまた夢のこと。そして自分自身のことを語り、呂布のことも語った。
呂布「成程、俺は義父殺しとして有名になっていたか!ハッハッハ。あながち間違っていない分、何も言えんな」
義賢「こんな嘘みたいな話を信じるのか?」
呂布「義賢、お前が嘘つきじゃなく。皆のために行動する人間だと側で見ていればわかる。俺のことを劉備様に受け入れてくださるように進言し、娘に教育を施してくれた。娘のために何もできなかった俺にお前は教育という道を示してくれた。それから学問が必要だと学んだのだ。今では、この徐州で、読み書きのできない子供はいない。学問は良い。知恵をつけることは、生きることに繋がる。それが学んで初めてよくわかる。無駄などと切り捨ててきた自分を殴りたいぐらいにな。そうか、未来人か。お前の言う未来は、世界が平和ではないのだな」
義賢「あぁ。どこかの国では、年端も行かない少年が戦争に駆り出され、親が涙を流す。宗教の違いで戦争が起こる。そんな中、俺が産まれた国は平和とは言える。先人たちが築き上げてきたものが受け継がれ、皇族も代々続いている。世界から見たら珍しい国だ。そんな平和が世界に広がって欲しい。そう願うのはおかしいことであろうか。そのためにこの世界でできることがあるのなら。そのために命を燃やし尽くす」
呂布「全く、1人で何でもできる人間などいない。義賢、お前はもっと人に甘えるべきだな。委細、承知した。孫翊が動く時、行動を起こすと約束する。義賢、身体を労わってやれ。先日、田豊殿と沮授殿が視察に訪れてな。2人とも今は暇しているそうだ。昔を懐かしんでいた。よかったら会ってやってくれ。袁燿のことはうちで暫く預かっててやる」
義賢「何から何まですまない。奉先、迷惑をかける」
呂布「気にするな。曹操のことは任せろ。必ず俺が助ける。気を揉んで、病の進行を早めるなよ義賢」
義賢「あぁ。これで、失礼するよ」
こうして、義賢は次に田豊と沮授の元に向かうのだった。
袁燿「義賢先生。じゃなくて、叔父上。待ってください」
義賢「燿じゃないか。どうした?」
袁燿「義父から徐州に向かう叔父上のお供をせよと仰せつかりました」
義賢「そうか。呂姫と会えると良いな」
袁燿「そ、そ、そ、そんな。ぼ、ぼ、ぼ、僕は。お、お、お、叔父上の補佐を」
義賢「そんなに動揺して顔に出してはモロバレだぞ。ハッハッハ。そんなことでは、呂姫に尻を敷かれるぞ」
袁燿「もう、叔父上、揶揄わないでください。ですが、またどうして徐州に?」
義賢「ちょっと視察だ。呂布殿に会いたくなってな」
袁燿「まぁ、僕は呂姫に会えるなら」
義賢「本音が出てるぞ燿」
袁燿「はっ。もう、早く行きますよ叔父上」
義賢「わかった。わかった」
徐州を治めている呂布は下邳を本拠としていた。義賢の来訪を聞くと嬉しそうに出迎えたのである。その傍らには、ヨシカタ塾を袁燿と共に卒業した後、呂布の近臣となった呂姫の姿があった。
呂布「これは劉丁様、よくぞお越しくださった。大したもてなしもできませんが。視察の間、粗相のないように、致しましょう」
呂姫「先生、御無沙汰しております」
義賢「呂布殿も呂姫も元気そうでなにより。おい、燿。俺の後ろに何故隠れる?」
袁燿「御機嫌麗しゅう。良い朝ですね呂姫ちゃん」
呂姫「えぇ、そうね。変わりなさそうで安心したわ袁燿」
呂姫の眩しい笑顔でニッコリと微笑まれた袁燿は固まって、一言だけ。
袁燿「可愛い」
義賢「小さい声じゃ聞こえないだろう。全く。呂姫殿、すまないが呂布殿と2人きりで話さねばならぬことがある。燿のことを頼めるかな?」
呂姫「心得ました。ほら、袁燿。行くわよ」
袁燿「呂姫ちゃんが手を握ってくれた。この手はもう二度と洗わない」
呂姫「馬鹿、そんな不衛生なことするならもう手を引かないわよ」
袁燿「そんなぁ。待ってよ~呂姫ちゃん。手を繋いでよぉ~」
こうして2人が去っていくと呂布と義賢は2人きりのため護衛も外して友人同士のように語らい合う。
呂布「義賢のお陰で娘もあのように立派に成長できた。父としては、愛する人と結ばれて欲しいが」
義賢「奉先、横目でそう俺を見るな。呂姫から向けられる視線には薄々気付いていた。だが、俺は董白だけと決めている。期待に応えられなくて、すまないな」
呂布「いや、そういうところを娘を好いているのだろう。気にしないでくれ、俺のあくまで願望だ。それで、どうしたお前が俺に話があるとは、皆で霊帝様をお救いした時以来だな」
義賢「あぁ。実はな」
義賢は、先ず自分の病のことを打ち明けた。
呂布「病か。張角には、一度見せたのか?」
義賢「いや。見せてはいない」
呂布「なら、すぐに」
義賢「無駄だ。自分でもわからない病だ。張角殿に見せても休めと療養施設に入れられるだけだろう。なら、俺は兄上のため。皆の平和のためにこの命を燃やし尽くしたい。ゴホッゴホッ」
呂布「しかし。おい、義賢、大丈夫か!?血反吐だと!?すぐに張角を」
義賢「待て。この通り、残り少ない命の人間が奉先にまた頼みたいことができたのだ。俺の信じられない与太話に付き合ってくれるか?」
呂布「覚悟ができてるのだな。わかった聞かせてもらおう」
義賢は、自分がまた夢のこと。そして自分自身のことを語り、呂布のことも語った。
呂布「成程、俺は義父殺しとして有名になっていたか!ハッハッハ。あながち間違っていない分、何も言えんな」
義賢「こんな嘘みたいな話を信じるのか?」
呂布「義賢、お前が嘘つきじゃなく。皆のために行動する人間だと側で見ていればわかる。俺のことを劉備様に受け入れてくださるように進言し、娘に教育を施してくれた。娘のために何もできなかった俺にお前は教育という道を示してくれた。それから学問が必要だと学んだのだ。今では、この徐州で、読み書きのできない子供はいない。学問は良い。知恵をつけることは、生きることに繋がる。それが学んで初めてよくわかる。無駄などと切り捨ててきた自分を殴りたいぐらいにな。そうか、未来人か。お前の言う未来は、世界が平和ではないのだな」
義賢「あぁ。どこかの国では、年端も行かない少年が戦争に駆り出され、親が涙を流す。宗教の違いで戦争が起こる。そんな中、俺が産まれた国は平和とは言える。先人たちが築き上げてきたものが受け継がれ、皇族も代々続いている。世界から見たら珍しい国だ。そんな平和が世界に広がって欲しい。そう願うのはおかしいことであろうか。そのためにこの世界でできることがあるのなら。そのために命を燃やし尽くす」
呂布「全く、1人で何でもできる人間などいない。義賢、お前はもっと人に甘えるべきだな。委細、承知した。孫翊が動く時、行動を起こすと約束する。義賢、身体を労わってやれ。先日、田豊殿と沮授殿が視察に訪れてな。2人とも今は暇しているそうだ。昔を懐かしんでいた。よかったら会ってやってくれ。袁燿のことはうちで暫く預かっててやる」
義賢「何から何まですまない。奉先、迷惑をかける」
呂布「気にするな。曹操のことは任せろ。必ず俺が助ける。気を揉んで、病の進行を早めるなよ義賢」
義賢「あぁ。これで、失礼するよ」
こうして、義賢は次に田豊と沮授の元に向かうのだった。
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