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5章 天下統一

董承の死を知る朝廷

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 秦慶童が董承に引導を渡していた頃、公孫度は、館から出てきた王子服・呉子蘭・呉碩の3人を捕らえていた。

 謝弼「公孫度よ。中に人はもう居ない。そいつらだけだったようだ」

 陳敦「公孫度。終わってみれば全く歯応えがなかったな」

 呉子蘭「放しやがれ!お前らなんて、俺様の歩兵隊がいれば、全滅なんだよバーカ!」

 呉碩「曹操様、助け、られない。事、ここに至った」

 王子服「董承なぞに協力したのが間違いであったか。秘密を知るものが多いほど何処かしらから漏れると忠告しておいたではないか」

 公孫康「父上、館も燃え尽き、中からは1人の焼死体が」

 公孫度「それが、董承で間違いないだろう。恭、曹丕様に報告を」

 公孫恭「はい」

 曹丕の元に董承の首が秦慶童によって届けられ、公孫恭から3人の男を捕えたと報告を受ける。

 曹丕「秦慶童、よくやった。確かに董承の首だ。これと献帝にこの手紙を共に届けよ」

 秦慶童「はっ」

 秦慶童が献帝の元に向かうと同時に公孫恭がやってくる。

 公孫恭「我が君に御報告申し上げます。館にて、1人の焼死体を発見、逃げ遅れた董承と思われます」

 曹丕「首を斬られ、焼け死んだか。ククク。俺を暗殺しようとした報いよな」

 公孫恭「我が君?」

 曹丕「すまぬ。そうか、丁重に弔ってやるが良い」

 公孫恭「はい。それと父上が館から飛び出してきた3人の男を捕らえましたが如何いたしますか?」

 曹丕「奴らにはまだ仕事がある。ここに連れてくるが良い」

 公孫恭「かしこまりました」

 間も無く公孫度によって、連れてこられる王子服・呉子蘭・呉碩の3人。

 王子服「これはこれはご機嫌麗しゅう魏王様」

 曹丕「お前たちの手を引いていたのは、董承ではなく劉備だな。いや霊帝を騙る不届者だな?」

 呉子蘭「んなわけねぇだろうが!曹操様は無事なんだろうな!このクズヤロウ、が。ゴフッ」

 曹丕「手元が滑ってしまった。口には気をつけないとな」

 呉碩「曹丕、残忍。あばばばばば」

 曹丕「また手が滑った。さぁ、賢いお前のことだこうなりたくはないよな?」

 曹丕は、王子服と違い暴言を吐いた2人を容赦なく、斬り捨てた。

 王子服「成程、どうしても霊帝様のせいにして、攻める口実と民の支持を得たいと。ふむぅ。一つだけ条件がある。曹操様の解放」

 曹丕「却下だな。交渉は決裂。死んでもらおう」

 曹丕が剣を振り上げるのを止める王子服。

 王子服「待て、わかった。わかったから待つのだ。我が命の安全と引き換えに条件を飲もう」

 曹丕「もっと早く、そうしてくれると助かったんだがな。じゃあ、民たちを前に劉備が俺の暗殺を企んでいたこと、それに関わっているのが霊帝を騙る偽物だと宣言してもらおうか」

 王子服「うむ。ワシとてまだ死にたくはない。承知した」

 王子服によって、語られた董承の死の原因は、民たちの霊帝を騙る偽物への悪感情に火を注ぐのに、時間はかからなかった。再び押し寄せる民の波に献帝はとうとう体調を崩した。

 献帝「ゴホッゴホッ。父上が僕を助けるために立ってくれたというのになんと情けないことか。ゴホッゴホッ」

 董貴人「水をお飲みになってください」

 伏皇后「霊帝様のためにも身体を治すことが大事です」

 そこに3人の女が慌ただしく駆け込んできたのだった。

 ???「伏寿様」

 ???「董瑶様」

 ???「すぐにここをお逃げください。兄がお二人の命を狙っておられます!」

 知らせに来た3人の女は、曹操の娘で、曹操が朝廷勢力に力を増すため送り込んだのだが献帝のことを愛し、正妃の伏皇后と側妃の董貴人と打ち解け、兄の横暴に対して、憤りを感じ、密かに協力していた長姉の曹憲ソウケン・次姉の曹節ソウセツ・末妹の曹華ソウカの3人であった。この3人は、兄である曹丕から今からそこに行く、安全のために隠れていろと詳細を先程、手紙にて伝えられたのである。

 伏皇后「ゆっくりとお話しなさいな。それだけではよくわからないから」

 曹憲「申し訳ありません伏寿様。董承様が我が兄に対して密かに暗殺計画を立てていたことが露見しました」

 董貴人「何故、そんなことに。父上は御無事なの?」

 曹憲「焼けた館から1人の焼死体が出たと兄の手紙に」

 曹華「それに宿舎からは100を超える死体が」

 董貴人「そんな。うっうっ」

 伏皇后「そちらのことはわかりました。董瑶、すぐにここを離れなさい。お腹の子に何かあっては、それこそ忠臣として仕えてくれた董承に合わせる顔がありません。もう貴方しか子孫を残さないのですから。そして、その子は紛れもなく皇帝の子供。死なせるわけには行きません。それに私の息子2人も共にお願いね」

 董貴人「伏寿様?」

 伏皇后「伏徳フクトク兄さん、伏典フクテン兄さんはいる?」

 伏徳「伏寿、お前まさか。ここでクーデターを起こす気か」

 伏皇后「えぇ。亡き父から受け継いだ兵を動員して、曹丕と徹底抗戦します。例えこの身が砕けようともここまで漢のために尽くしてくれた董承の娘を死なせるわけにはいきません。それに私と献帝様の子供はこの先も続いて行くのです。ここで命を張ることに躊躇いはありませんよ」

 伏典「兄さん。伏寿の決意は硬いみたいだよ。僕たちもできる限りのことをしてあげないとね」

 伏徳「あぁったく仕方ねぇな。献帝様が待ち望んでいた劉備殿のために用意していた兵の全てを動員する。で良いんだよな?」

 伏皇后「えぇ。曹憲、貴方たちは献帝様と共にここから逃げなさい。そして、曹丕にはこう言うのです。私がクーデターを起こしたため献帝様を連れて、逃げてきたと。それで曹丕も献帝様に手を出さないでしょう。生きてさえいれば、必ず会いたい人に会える。そう願っていますよ献帝様」

 献帝「スースースー」

 伏皇后「薬が効いて良かった。さぁ行きなさい。今後、献帝様を守れるのは貴方たちだけなのですから」

 曹憲と曹節と曹華の3人は、伏寿の覚悟に何も言えず頷くことしかできなかった。
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