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4章 三国鼎立

劉璋の最後

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 燃える巴城を見て、中から人が飛び出してくることもなく声も聞こえなくなり、御満悦の劉璋。

 劉璋「ククク。役立たず共がワシに逆らうからこのような目に遭うのだ!」

 王累「さて、またいつ劉備が攻めてくるやも知れません。すぐに曹操にこの益州を差し上げると使者を出しませんと」

 劉璋「まだじゃ。もうこの城に要はない。成都城に向かい、残りのクズ共も滅却しなければな」

 王累「劉璋様に従います」

 劉巴「お待ちください劉璋様!成都を燃やせば、ここにいる多くの兵たちの妻や娘が」

 劉璋「それがどうした?反乱軍の人質となる方が悪いのだ。劉巴よ、お前は曹操に仕えていたのだったな?ならわかるだろう?劉備に取られるかもしれない状態なら燃やして一からにして仕舞えば良いのだ!そうすれば、北を制した曹操に刃迎えるわけがないのだからな!それに曹操と何が違う、アイツもこうして徐州を焼き払ったのであろう」

 劉巴「貴様と曹操様を同列に語るな!曹操様は、徐州を焼いた事を後悔なされていた。劉備に止めてもらえて良かったとも語っていた。過ちを認められるものと過ちを認めるとのできないものとの間には多くの差がある!前者が曹操様であって、後者が貴様だ!恥を知れ!」

 劉璋「怖い怖い。曹操の臣下だから見逃しておいてやったが、やれやれ、李厳、殺せ」

 李厳「かしこまりました。劉璋様」

 劉巴「怪しげな術で、民心を操り、将すらもおかしくさせるか。淫魔の血を引く者もまた淫魔なのかもしれんな!」

 劉璋「俺が淫魔だと。雑魚が図に乗るな!」

 劉璋の怒りに身を任せた攻撃を止めたのは意外な人物だった。

 張任「俺はこのような男を主と仕えていたのか」

 劉璋「ほぉ。張任。敵に捕まり殺されたと思っていた。いや、呉懿のことだ情けの一つでもかけられたか、な?」

 張任「ほざくなクソ野郎が!どらだけ多くの人間を焼いた?ここに来るまでに漢中の惨状も目にした。本当にあの優しかった劉璋様なのか?この悪魔が!」

 劉璋「優しかった、か。劉誕と劉範には虐められ、劉瑁には情けをかけられ、クソジジイは、劉瑁ばかりを可愛がり、母だけであった。その母は、あの淫魔に誑かされて亡くなったのだ!全部全部燃やしてやる灰に返すのが俺の使命なのだ!邪魔をするならお前も死ね。李厳、相手をしてやれ。俺はあの不届きものを殺す」

 李厳「かしこまりました劉璋様」

 張任「もう優しかった劉璋様は居ないのだな」

 方士姿の男が舞い降りた。

 ???「やれやれ怪しい気を辿ってみたらこんなところに邪法の残り香があろうとは。小生が滅してくれよう」

 札を取り出し、何やら唱えると李厳の口から蜘蛛の糸のようなものが出てくる。

 李厳「あれっ?ここは?俺は一体何を?」

 劉璋「ほぉ。邪法を解除するか。成程、貴様がアイツから聞いていた厄介な男、左慈方士とやらか」

 左慈「いかにも。劉璋よ。復讐心から人を操る邪法に手を出したようじゃな」

 劉璋「強くなるための力ならなんでも良かった。成功できるようになったのは、つい最近だったが、やれやれ駒を失ったのは痛い。将軍クラスで成功したのはコイツだけだったというのに、やはり野盗やら犯罪者をもっと取り立てて、周りを固めておくんだったな。そう考えると劉備にアイツらを殺されたのも痛手だったか。表と裏を使いこなすのは正直しんどい。于吉ほど上手くはできんか」

 左慈「やはりあの男が絡んでおったか。小生は、邪法を使うものを許すことはできぬがここはこの者たちを信じて任せるとしよう」

 そういうと左慈は大きな鷲に乗って、この場を後にした。

 劉璋「まぁ良いわ。憎き女は焼け死んだ。張任よ。息子たちは何も知らぬ。世話を頼めるか?」

 張任「今の貴方様は、優しかったあの時の貴方様だ。憑き物が落ちたのですな」

 劉璋「そうかも知れぬな。張任よ。俺はな。誰からも愛されていなかったのだ。母が俺を連れ出したのは、劉瑁兄のために共に身投げするためだ。今思えば、劉瑁兄だけがその事を母から聞いて止めていたのだろう。母の最後の言葉の意味は、そういうことなのだろう。病弱ではあったが一際優しい兄上だったからな。そんな兄上の気持ちも慮らず俺はこの手にかけた。復讐の鬼となっていたのだ。全てが憎かった。父も、俺を虐めた兄たちも、俺に同情する劉瑁兄も。誤って許されることではないが呉莧に本当に申し訳ないことをした。介錯を頼む」

 張任「心得た。もう少し早く、貴方様の異変に気付き止めることができていれば、こんな事には、忠臣などと言っておきながらなんと不甲斐ないことか」

 劉璋「良いのだ張任よ。苦労をかける」

 張任「しからば。うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 張任が振り下ろした刃が劉璋の首を刎ね飛ばした。

 張任「敵将、劉璋。張任が討ち取り申した」

 声を震わせながら張任は、忠臣として劉璋の幕引きに協力した。しかし、この時、1人の男が忽然と姿を消していることに誰も気付いて居なかった。その男は、数日後、漢中に居た。

 王累「鍾繇様、このような結果の御報告となり、申し訳ありません」

 鍾繇「いえいえ、貴方は良くあの復讐に囚われた劉璋の手綱を握っていたと思いますよ。それにしても巴郡だけでも焼け野原となったのは僥倖ですよ。これで暫くは漢中に手を出さないでしょう。後は、曹操に不測の事態が起こって、長安にて我が君が立てば、晴れて、あの御方も表舞台へと堂々と進出なさるでしょう。御苦労様でした。ゆっくり休んでください」

 王累「お心遣い、痛み入ります」

 鍾繇「劉備も上手いことやりましたね。関羽と張飛の死を偽装し、馬超を引き込むとは、欲を言えばぶつかり合って被害が拡大してくれれば良かったのですが。ままなりませんな。政治的に力のある曹植が反乱を起こしたところで、我が君に敵いますまい。しかし、殺して仕舞えば、家族を大事にする曹操のこと出しゃばるでしょう。そして、恐らくこれは郭嘉の計略、あの御方も厄介な相手に目をつけられたものですな。さて、ワシは来るべきのためにこの漢中を我が君とあの御方のために強固にしておくとしましょう」

 曹植が曹丕に対して、甄姫の嘆願を求めて、反乱を起こしたが、曹植に付くものは僅かであった。しかし、曹丕として血を分けた兄弟である曹植を殺すことが忍びないということではなく単純にこの裏にある計略を知り、模擬戦とすることで動揺を落ち着かせ、向かい合って数ヶ月が経とうとしていたのだった。
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