436 / 589
4章 三国鼎立
巴郡の攻防
しおりを挟む
巴郡では、趙筰が指揮し、老将厳顔と保護した張魯軍の面々が迫り来る劉璋軍を食い止めていた。
趙筰「非戦闘員を避難場所へ」
厳顔「張姜子殿と張玉蘭殿もこちらへ」
張姜子「いえ、これは全て私のせいですもの。見届けますわ。玉蘭、貴方は避難を」
張玉蘭「母様、私にもできることが」
張姜子「良いから下がりなさい!傀・徵、玉蘭を連れて行きなさい」
張傀「はい母様」
張徵「母様に従います」
張玉蘭が張傀と張徵に避難場所の建物へと引き摺られていく。
張魯「母上、戦となれば役に立てませぬゆえ、軍事権を衛に任せましたので、私も避難しております。どうか御心を痛めませぬように」
張姜子「ありがとう」
張衛「母上のことは俺が守る。魯兄上は、皆のことを頼む」
張魯「あまり無理はするなよ。申儀と申耽は行方知れず。李伏と李休は、我らを守るため盾となり城にて討ち死にした。楊任と楊昂は、我らを逃すためその身を盾として賊の手にかかって命を落とした。この上、頼りになる弟までを失いたくはないからな」
張衛「劉雄鳴と玉蘭の推しがいる。それに趙筰殿や厳顔殿も。魯兄上が心配することはない。俺にできることで我らの受けた恩を返すまでのこと」
張魯「わかった。では、失礼する」
漢中の状況が凄惨であったことから想像できるだろうが劉璋の苛烈ともいえる徹底的な村焼きにより、それに怒って討ち取ってやると飛び出した申儀・申耽とは連絡が取れなくなり、城から張魯たちを逃がすために留まった李伏と李休の兄弟は、その命を絶つこととなった。ここまで逃げ切れたのも楊任と楊昂のその身を賭した献身と劉璋がその矛先を劉備へと変えて、荊州に進軍したことが大きい。それが失敗して、帰ってきた劉璋に再び攻撃されているわけだが。
劉璋「淫魔よ。出てくるが良い。父を誑かし、この国を貶めようとしたこと知っているぞ!」
趙筰「そのようなものなど居ない。劉璋様は勘違いされておられる。その矛を納めなされ」
劉璋「貴様も誑かされよったか趙筰!父の代から仕えていようとも淫魔に手を貸すならその首、絶ってくれるわ!」
厳顔「ええぃ。目を覚まされい劉璋殿。お優しかった貴方様は何処へ行かれた」
劉璋「耄碌したな厳顔!貴様まで淫魔に誑かされおったか!もう良いわ!張粛・鄧賢・彭羕・李厳・劉巴、この城の門をとっとと潰してしまえ!」
趙筰「我らが何を言ってもお聞き入れくださらんか?」
劉璋「淫魔の手にあるものの言葉など信用できん」
張衛「漢中を焼き払った罪をその身で償ってもらうぞ!」
劉璋「淫魔より産まれし悪魔の子供がほざきよる。俺が残らず滅してくれるわ!」
張衛「そのためだけに我らが五斗米道の民を焼いたというのか!」
劉璋「そうだ!淫魔を信奉する悪魔の宗教など俺が治める益州で栄させることなど許さん!」
厳顔「李厳殿、其方まで」
李厳「厳顔殿、貴殿ほどの御方が道を踏み外されるとは残念です」
趙筰「何を言っている。劉璋様は、家臣の娘や妹や妻を人質に取るような事をしているのだぞ!目を覚まされよ李厳殿」
李厳「強い男が女を独占するのは当たり前のこと。俺は劉璋様のため、目の前の敵を斬る刃、それ以外の感情は要らない」
厳顔「この様子は普段の李厳殿ではあるまい。邪法の類か」
李厳「厳顔殿・趙筰殿、残念です死んでもらいます」
張姜子「目も虚だけども認識はしてるようね。どんな邪法を使ったのかしら?」
劉璋「淫魔よ。この時をどれ程待ったことか。その首、必ずや母上の墓前に備えてくれようぞ!」
張姜子「私も会いたかったわ。だって大切な私の子供ですもの」
劉璋「ふざけるな!淫魔の母など知らぬわ!父を誑かし母を貶めた淫魔よ。その身を燃やしてくれるわ!」
劉璝「そらそら、火矢を放て!」
劉晙「油壺を投石器に乗せろ。オラ、撃て撃て」
油壺をぶちまけられ、火矢を打ち込まれては、徐々に家屋が焼け、燃え広がる。それを防ぐために消火活動を行うが、その隙に城門を壊すため衝車が取り付く。
劉璋「フハハハハ。淫魔と淫魔に誑かされた奴らよ。燃えろ燃えろ。その身を燃やし尽くすまで俺の怒りの炎は止まらねぇ」
張姜子「はぁ。私としては貴方も大事な息子なんだけどね。あのクソ野郎は、私から子供を奪って育て方を間違えたみたいね」
劉璋「あーそうか。そのことを劉誕兄上と劉範兄上に話してたらお前の首、斬ってくれたのか。いやぁ失敗失敗、虐められた記憶しかねぇから鬱憤晴しちまったわ。あー、しまったしまったお前を殺させてから殺せばよかったのか。あーまぁ良いや。お前を1番殺したいのは俺だしな」
伝令「報告!馬超殿が関羽と張飛を討ち取り、劉備軍は総崩れとなり、荊州へと帰ったとのこと!」
劉璋「ククク。関羽と張飛が死んだか。運が向いてきたわ。して馬超はどうした?」
伝令「こちらに援軍に向かっているとのこと」
劉璋「馬柳たちは後方か。いざという時に人質に出来ぬな」
伝令「何か?」
劉璋「いや、気にする必要はない。伝令、御苦労であった」
伝令「はっ」
劉璋「ククク。こちらも手駒を無くしたがお前の心中いかばかりであろうな。田舎者が少しばかり、いやかなり調子に乗るからこうなるのだ」
劉璋は己が知らず知らずに追い込まれていることなどつゆ知らず燃える巴城を眺め、その口元は憎き女をようやく殺せると笑うのだった。
趙筰「非戦闘員を避難場所へ」
厳顔「張姜子殿と張玉蘭殿もこちらへ」
張姜子「いえ、これは全て私のせいですもの。見届けますわ。玉蘭、貴方は避難を」
張玉蘭「母様、私にもできることが」
張姜子「良いから下がりなさい!傀・徵、玉蘭を連れて行きなさい」
張傀「はい母様」
張徵「母様に従います」
張玉蘭が張傀と張徵に避難場所の建物へと引き摺られていく。
張魯「母上、戦となれば役に立てませぬゆえ、軍事権を衛に任せましたので、私も避難しております。どうか御心を痛めませぬように」
張姜子「ありがとう」
張衛「母上のことは俺が守る。魯兄上は、皆のことを頼む」
張魯「あまり無理はするなよ。申儀と申耽は行方知れず。李伏と李休は、我らを守るため盾となり城にて討ち死にした。楊任と楊昂は、我らを逃すためその身を盾として賊の手にかかって命を落とした。この上、頼りになる弟までを失いたくはないからな」
張衛「劉雄鳴と玉蘭の推しがいる。それに趙筰殿や厳顔殿も。魯兄上が心配することはない。俺にできることで我らの受けた恩を返すまでのこと」
張魯「わかった。では、失礼する」
漢中の状況が凄惨であったことから想像できるだろうが劉璋の苛烈ともいえる徹底的な村焼きにより、それに怒って討ち取ってやると飛び出した申儀・申耽とは連絡が取れなくなり、城から張魯たちを逃がすために留まった李伏と李休の兄弟は、その命を絶つこととなった。ここまで逃げ切れたのも楊任と楊昂のその身を賭した献身と劉璋がその矛先を劉備へと変えて、荊州に進軍したことが大きい。それが失敗して、帰ってきた劉璋に再び攻撃されているわけだが。
劉璋「淫魔よ。出てくるが良い。父を誑かし、この国を貶めようとしたこと知っているぞ!」
趙筰「そのようなものなど居ない。劉璋様は勘違いされておられる。その矛を納めなされ」
劉璋「貴様も誑かされよったか趙筰!父の代から仕えていようとも淫魔に手を貸すならその首、絶ってくれるわ!」
厳顔「ええぃ。目を覚まされい劉璋殿。お優しかった貴方様は何処へ行かれた」
劉璋「耄碌したな厳顔!貴様まで淫魔に誑かされおったか!もう良いわ!張粛・鄧賢・彭羕・李厳・劉巴、この城の門をとっとと潰してしまえ!」
趙筰「我らが何を言ってもお聞き入れくださらんか?」
劉璋「淫魔の手にあるものの言葉など信用できん」
張衛「漢中を焼き払った罪をその身で償ってもらうぞ!」
劉璋「淫魔より産まれし悪魔の子供がほざきよる。俺が残らず滅してくれるわ!」
張衛「そのためだけに我らが五斗米道の民を焼いたというのか!」
劉璋「そうだ!淫魔を信奉する悪魔の宗教など俺が治める益州で栄させることなど許さん!」
厳顔「李厳殿、其方まで」
李厳「厳顔殿、貴殿ほどの御方が道を踏み外されるとは残念です」
趙筰「何を言っている。劉璋様は、家臣の娘や妹や妻を人質に取るような事をしているのだぞ!目を覚まされよ李厳殿」
李厳「強い男が女を独占するのは当たり前のこと。俺は劉璋様のため、目の前の敵を斬る刃、それ以外の感情は要らない」
厳顔「この様子は普段の李厳殿ではあるまい。邪法の類か」
李厳「厳顔殿・趙筰殿、残念です死んでもらいます」
張姜子「目も虚だけども認識はしてるようね。どんな邪法を使ったのかしら?」
劉璋「淫魔よ。この時をどれ程待ったことか。その首、必ずや母上の墓前に備えてくれようぞ!」
張姜子「私も会いたかったわ。だって大切な私の子供ですもの」
劉璋「ふざけるな!淫魔の母など知らぬわ!父を誑かし母を貶めた淫魔よ。その身を燃やしてくれるわ!」
劉璝「そらそら、火矢を放て!」
劉晙「油壺を投石器に乗せろ。オラ、撃て撃て」
油壺をぶちまけられ、火矢を打ち込まれては、徐々に家屋が焼け、燃え広がる。それを防ぐために消火活動を行うが、その隙に城門を壊すため衝車が取り付く。
劉璋「フハハハハ。淫魔と淫魔に誑かされた奴らよ。燃えろ燃えろ。その身を燃やし尽くすまで俺の怒りの炎は止まらねぇ」
張姜子「はぁ。私としては貴方も大事な息子なんだけどね。あのクソ野郎は、私から子供を奪って育て方を間違えたみたいね」
劉璋「あーそうか。そのことを劉誕兄上と劉範兄上に話してたらお前の首、斬ってくれたのか。いやぁ失敗失敗、虐められた記憶しかねぇから鬱憤晴しちまったわ。あー、しまったしまったお前を殺させてから殺せばよかったのか。あーまぁ良いや。お前を1番殺したいのは俺だしな」
伝令「報告!馬超殿が関羽と張飛を討ち取り、劉備軍は総崩れとなり、荊州へと帰ったとのこと!」
劉璋「ククク。関羽と張飛が死んだか。運が向いてきたわ。して馬超はどうした?」
伝令「こちらに援軍に向かっているとのこと」
劉璋「馬柳たちは後方か。いざという時に人質に出来ぬな」
伝令「何か?」
劉璋「いや、気にする必要はない。伝令、御苦労であった」
伝令「はっ」
劉璋「ククク。こちらも手駒を無くしたがお前の心中いかばかりであろうな。田舎者が少しばかり、いやかなり調子に乗るからこうなるのだ」
劉璋は己が知らず知らずに追い込まれていることなどつゆ知らず燃える巴城を眺め、その口元は憎き女をようやく殺せると笑うのだった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。補足説明と登場人物の設定資料
揚惇命
SF
『えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。』という作品の世界観の説明補足と各勢力の登場人物の設定資料となります。
本編のネタバレを含むため本編を読んでからお読みください。
※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
日本が危機に?第二次日露戦争
杏
歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。
なろう、カクヨムでも連載しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる