えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

文字の大きさ

大中小

430 / 644

4章　三国鼎立

茶番劇〜大乱戦〜

しおりを挟む

　馬超の怒号から始まる。

　馬超「このクソッタレが！何が、降伏せよだ！降伏するのは貴様の方であろう！」

　劉備「黙って聞いておれば、貴様はたかだか客将、こちらは三州を治める領主だぞ！降伏を説くのは当たり前であろう！」

　馬超「やってられるか！龐徳・閻行、コイツらを叩き切れ」

　劉備「なんだと！？望むところだ雲長・翼徳、やってしまえ」

　この騒ぎに何事かと大勢の兵が出てきたのを見て、双方とも一時撤退する。

【馬超軍陣内】

　馬雲緑「馬超兄様、あんなに大声を出されてどうしたの？」

　馬超「劉備のやつ、降伏しろと言ってきた。負けてるのは向こうだというのにな。頭に来る。これより、全軍で突撃を」

　龐徳「お怒りはごもっともだが待たれよ。ここは、某と閻行にお任せを」

　閻行「まぁ、大将はそこで戦勝報告を待ってるがいい」

　馬超「なんだ。2人とも暴れ足りないのか仕方ないな。本当は俺が行きたい気分なのだが。任せるとしよう」

　龐徳・閻行「有難き」

　劉璋の間者は1人ではない。だがこれに乗らない手はない。志願して、突撃を開始した。

【劉備軍陣内】

　徐庶「全く、士元も無茶するね」

　龐統「元直程じゃないさ。アッシは、1人で友人の仇討ちには行かないさ」

　徐庶「はいはい。全く。で、どうするんだい？死んだフリは多い方が良いよなぁ。俺も死んだフリするか」

　龐統「助かるよ」

　関羽「周倉・廖化、お前たちにも死んだフリしてもらうぞ」

　周倉「そりゃ旦那の頼みじゃ断れねぇ。そんな都合よく行きますかい？」

　廖化「どうやって見分けるのかにもよるのでは？」

　龐統「それはこの袋を鎧に付けてるか付けてないかさ。アッシらは全員、向こうは信頼のある兵のみ。要は信頼のないのに参加してるってのは、何か狙いがあるってことさ。容赦なく、殺しちまいな」

　周倉「おっ、龐統軍師の説明はわかりやすくて良いや」

　廖化「要は付けてないのは殺して、付けてるのと当たったら死んだフリしろってことか。理解した」

　張飛「まぁそういうことだな。龔都・何曼、お前らにも死んだフリしてもらうからな」

　龔都「アッシもですかい？まぁそりゃ構いませんが」

　何曼「できるだけ付けてないのと出会って、殺しておきたいぜ」

　張飛「血気盛んなのは良いけどよ。無理さんじゃねぇぞ」

　龔都「へい。そりゃ勿論」

　何曼「この刹天夜叉の力、見せつけてやるぜ」

　関羽と張飛も突撃を開始する。

【戦場】

　関羽「どうした馬超は臆病風にでも吹かれたか！」

　龐徳「孟起の手を煩わせるまでもない。お前たちの相手など某で充分だ」

　張飛「チッ。舐められたもんだぜ。テメェらわかってんだろうな！大兄者の優しさを無碍にした奴らにかける慈悲なんてねぇ！全員殺しちまえ！」

　閻行「あれが優しさだと？笑わせるな。脅しではないか！あんな奴ら踏み潰せ」

　両軍が入り乱れるが内容を理解している者たちは、袋の真ん中を刺し、血を吹き出させる。

　龐徳隊兵士「これだな」

　関羽隊兵士「まさかこのようなところでやられるとは」

　ドサリと倒れるが勿論、死んだフリである。馬たちもその場で静止している。よく訓練された馬たちである。

　間者B「これなら行ける。ここで関羽と張飛を討てれば、劉璋様がお喜びになられる。一時は、馬雲緑と王異のせいで、本気で戦う気が無いと思っていたが、あのようにちょっと刺されただけで死ぬような兵、恐れるに足らんわ」

　何曼「おっ当たりを引いたな」

　間者B「当たり？何を言っている。死ねぇ。ぁばばばばばばば」

　何曼「一応、相討ちを装っておくか。ガハッ。クソッ油断しちまった」

　袋を破いて血を吐き出させ、どさりと倒れ込む何曼。

　間者C「おい、お前どうしたんだ？どうして口を」

　間者A「ん。んんん。んんんんん(後ろ、後ろだ)」

　周倉「おっ2人みっけ、俺ってやっぱりツイてるぜ。ってことで死んでくれ」

　間者C「舐めやがって、殺してやる。ぎゃばばばば」

　間者A「んんんんん(なんでコイツが間者だとバレた？)」

　周倉「不思議そうな顔してるなぁ。冥土の土産に教えてやろうかい？それはな。これだよ」

　周倉は袋を掻っ捌いた後、目の前の間者の首に剣を突き立てて、絶命させた後、その場にドサリと倒れる。

　周倉「うぐっ。こんなはずでは、もっともっと旦那の側に」

　もちろん、死んだフリである。

　閻行隊兵士「うりゃ」

　張飛隊兵士「無念」

　みるみるうちに減っていく兵士たち。

　間者D「何かおかしい。何か、どうして、浅い攻撃の時もあったら深い攻撃の時も？まさか！？」

　龔都「勘のいい奴は嫌いでやんすね」

　間者D「こんな大々的に茶番を行うなど。クソッ。もっと早くわかっていれば逃げられたものを。貴様を殺して、このことを報告して裏切った馬超を必ず罰してくれるわ！」

　龔都「嫌いじゃないでやんすよ。でも忠義を立てる相手が違うでやんす」

　間者D「馬鹿な！？こんなに差があるのか。ゴフッ」

　龔都「やれやれでやんす。張飛様、後は任せたでやんすよ。イテテテ、あちゃーこりゃ深い、助からないでやんすな」

　あまりの棒読みに周りにいた兵の何人かが笑っていたのは、いうまでもない。こうして、間者を排除し、お互いの兵たちの殆どが地に伏したところで、この男たちの一騎討ちが幕を上げる。勿論、茶番である。

しおりを挟む