えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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4章 三国鼎立

先鋒が退いたら次鋒です

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 馬雲緑が狒々のところに戻ってきた。

 狒々「姫様、話を聞いておりましたかな?」

 馬雲緑「あっもちろんだよ爺や。勝手に行くなってことでしょ。だから動いてないよ~」

 狒々はあの後も、馬雲緑がいないことに気付かずずっとくどくどと言っていたのである。

 狒々「それで良いのですぞ。では、戦を」

 馬雲緑「なんだか爺やの話で疲れちゃったから帰る」

 狒々「何を言っておられるのですか姫様。これからワシが大殿より授かりし、戦の伝授を」

 馬雲緑「疲れちゃったの。ほら、帰るよ爺や」

 狒々「全く、姫様は勝手ですな。全く、くどくど」

 馬雲緑「爺や、置いていくよ」

 狒々「はっ!?お待ちくだされ、姫様、ワシの有難い話をですなぁ」

 馬雲緑「それで疲れて戦どころじゃなくなっちゃったんだから帰るの。わかった?爺やのせいなんだからね。せっかく楽しみにしてたのに(趙雲様、めちゃカッコよかった~。万全の状態で今度は手合わせしたいな~)」

 狒々「言葉と顔が一致しておりませんぞ。さては、ワシの有り難い話中に飛び出しては居ませんでしょうな」

 馬雲緑「そんなことするわけないじゃん。爺やの話をありがたーく聞いてたよ。勿論」

 狒々「それでは、姫様、内容を話せますな?」

 馬雲緑「えっ?えーっと、ごめんなさい寝てました!」

 狒々「全く、そんなことだと思いましたわい。姫様、今度はきちんと聞いていただきますぞ」

 馬雲緑「かっ勘弁してよ~。疲れてるんだから~」

 狒々「(あの笑顔を見る限り、姫様にとっての憧れの御方はご想像通りのお方であったようじゃな。全く、姫様がワシの話をまともに聞いてるわけがないことをワシが知らんわけなかろう。こうして、知らぬフリをして、お守りするのもまたワシの務めじゃ。それにしても、殺さず捕まえ、逃すとは、若様の印象を悪くせぬできた姫様じゃ)逃しはしませんぞ」

 馬雲緑「もう、爺や、しつこい。嫌いになっちゃうよ」

 狒々「ワシに泣き落としは通じませんぞ」

 馬雲緑「うぐぐ。うちの子たちよりも手強い」

 狒々「アヤツらは皆、姫様のぱいぱいの虜ですからな」

 馬雲緑「爺やにだけ教えてあげるね。私の秘密。実はね、アレ袋に水を」

 狒々「ほほぉ。姫様も悪ですなぁ」

 馬雲緑「やる気を出させるためだもん。それで幸せな気持ちになって、士気上がるなら良いことだもん」

 狒々「そうですな」

 帰ってきた馬雲緑を抱きしめる馬超。

 馬超「良かった。趙雲殿と戦うなど何を考えておる。どこも怪我してないか?」

 馬雲緑「もう、爺やに負けず劣らず過保護なんだから!大丈夫だもん。あっ、馬超兄様、私趙雲殿のお嫁さんになります!」

 馬超「そうかそうか。って、ええええええええ!?一体全体、どうしてそんなことになった!?趙雲殿は、なんと?」

 馬雲緑「保留かな」

 馬超「良し、殺そう。我が妹の心を弄んだ罪で」

 馬雲緑「ちょっとちょっと!趙雲殿、怪我してたのよね。なんとか劉備殿のために無理してる感じだったからお預けにしたの」

 馬超「そうであったか。てっきり断られたのかと」

 馬雲緑「それに、一騎討ちで勝ったらって条件だから」

 馬超「そんな危険なことはやめなさーい!」

 馬雲緑「でも、私に勝つことができるのって、恐らく後にも先にも趙雲殿だけだと思うのよね~。何となく。女の勘。そんな感じ~」

 馬超「はぁ。我が妹ながらとんでもない約束をしてきたものだ」

 姜維「良いのではありませんか。劉備殿と接点を持てたのですから。やはりあの理路整然とした軍の動き、自分たちのことを正義と疑っていない証拠かと。ならばあの噂の方を疑うべきこと」

 馬超「きょ、きょ、姜維!?一体、いつの間に!?」

 姜維「ずっと居ましたが。それにしても馬雲緑殿が無事で何よりでした」

 馬雲緑「相変わらず可愛い顔して、えげつないこと言うんだから」

 姜維「私は父から馬超様を託されましたから。馬超様が生き残る道を模索するのが軍師の務め」

 馬雲緑「硬い、硬いのよ。そんなのだといつか自分に帰ってくるんだから。もっと気さくに行こうよ」

 姜維「これが私ですので」

 馬超「うむ。それは良いが劉璋の噂の方が真実ならば、それに手を貸すことなどできん。ここからはいかにして上手いこと負けるかに重きを置くのが良いか」

 馬雲緑「何人か刺されたけど取り敢えずお互い命に別状は無いと思うよ。私は皆に急所は外すように言っておいたし」

 馬超「流石、我が妹よ」

 くしゃくしゃくしゃと馬雲緑の頭を撫で回す馬超。

 馬雲緑「馬超兄様、痛い!愛が重い!」

 馬超「ガーン。そこまで言わなくても良いではないか」

 一方の劉備の元へと帰ってきた趙雲隊。

 劉備「無事で何よりだ。どうしたのだ子龍!」

 樊玉鳳「劉備様、申し訳ありません。どうやら無理をしていたようで、暫く休ませてもらえると助かります」

 劉備「樊玉鳳よ。当然だ。すぐに子龍を休ませるのだ」

 趙雲「劉備殿、申し訳」

 劉備「良い」

 樊玉鳳「子龍が無事なのは、相手が馬超殿の妹だったからかと。何やら懐に入り込むのが上手く、終始、翻弄されましたが死者は居ませんでした。あの強さで、あり得ないことです。馬超殿も何かを推しはかろうとしているのかと。これだけお伝えしておきます」

 劉備「承知した。ゆっくりと休むが良い。儁乂!」

 張郃「お呼びですか殿」

 劉備「次は、儁乂に任せる。相手がこちらの急所を狙うようなら容赦せずとも良い」

 張郃「かしこまりました。必ずや殿に戦勝を」

 劉備「そんなことより、お前が無事に戻ることの方が大事だ。無理をするでないぞ。お前も先の戦で受けた傷があるのだからな」

 張郃「心配入りませんわ。高覧もいますから」

 劉備「わかった。儁乂、任せたぞ」

 張郃「はっ。お任せを」

 趙雲が負けたというのは、兵に少なからずの動揺を与えることとなった。これを挽回するべく劉備は、張郃に任せるのであった。
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