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4章 三国鼎立

牂牁郡にて相対する馬超と劉備

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 牂牁郡に、劉備軍が迫っていると報告を受ける馬超。

 馬鉄「馬超兄上、劉備軍が間も無くここに現れるとのこと」

 馬超「わかった。まさか、このようなことになろうとは、な」

 馬雲緑「安心してよ馬超兄様、みーんな、私が叩き潰してあげるんだから」

 王異「雲緑は、もうちょっと女の子らしくしないと貰い手が居なくなっちゃうわよ」

 馬雲緑「ぶぅ。王異義姉様に言われたくないなぁ。戦場で命懸けで救われただけで馬超兄様に堕ちちゃったんだよねぇ?」

 王異「うっ。それは関係ないでしょ。もーう」

 馬月「とうちゃま~かぁちゃま~、僕も戦うです~」

 馬英「おにぃちゃん、ずるい。私も私も」

 王異「馬月と馬英は、まだ8歳なんだから戦のことなんて気にしなくていいのよ」

 馬超「全く、馬家の子供として相応しいな」

 王異「そうやって孟起様が甘やかすから」

 馬超「俺とお前の子だ。これぐらいの気概が無ければな」

 王異「そうやって、また誤魔化して、孟起様が優しいからこうして私が厳しくしないとダメなんですからね」

 馬超「わかったわかった」

 姜維が罰が悪そうにあたふたしながら話しかける。

 姜維「馬超様!あっ、家族団欒の時をお邪魔して、も、申し訳ありませんでしたー。出直しますー」

 馬超「姜維よ。気にするな。戦場で気を抜いていたのは、俺の方だ。話せ」

 姜維「はっ。劉備軍の全容ですが、総大将の劉備を筆頭に義弟の関羽・張飛、将軍として兵を率いる趙雲・黄忠・張郃・夏侯蘭・魏延、軍師として龐統・徐庶、無名の若者ですが警戒すべき対象として陸遜。それと特殊兵種として、猛獣部隊を率いる虎熊という将も気をつけるべきかと」

 馬超「ん?劉備殿と関羽殿と張飛殿がいて、劉丁殿は居ないのか?」

 姜維「劉丁殿?いえ、そのような将が帯同しているとは聞いていませんね」

 韋康「馬超様が気になされる程の人なのですか?」

 馬超「うむ。俺がかつて呂布と戦った時、その知勇を持って、俺と劉備殿・関羽殿・張飛殿、そして趙雲殿と黄忠殿を繋ぎ合わせた人だ。あんなにお互いが動きやすい戦は初めてであった。何故、劉丁殿が居ない?考えても仕方ないか。斜め上を行くような策を思いつくような人だ。居ないことを喜ぶべきか」

 姜維「劉備軍も大所帯です。荊州に残ったのかもしれません」

 馬超「そうなんだろうな」

 楊笙鈴「馬超様が気になさっていられる方が居ないのは好都合ですわね」

 馬超「どのような形であれ、再会できないのは残念ではあるがな。妙に記憶に残る人だったのでな」

 姜維「それは置いておいて、劉備軍の兵力はこちらの2倍。そのことからも劉備軍の本気の度合いがわかるかと」

 馬超「うむ。だが劉備殿が同族の劉璋殿ではなく、反乱軍を助ける意味はわからぬが、劉璋殿に手を貸すと決めた以上、ここを死守せねば」

 姜維「劉璋にきな臭い噂があるからかと」

 馬超「劉璋殿が部下の妻を監禁し、娘を人質に取っているという噂か。真なら許されることはないが」

 姜維「火のないところに煙は立たぬと言いますから用心しておくことに越したことはないかと」

 馬休が急ぎ足で駆け込んでくる。

 馬休「兄貴~、来ちまった。劉備軍が来ちまったぞ!」

 馬超「休、化け物が来たみたいに言われては、劉備殿が可哀想であろう」

 馬休「兄貴、すまねぇ」

 馬超「行くとするか。王異・笙鈴、子供たちのことを頼んだぞ」

 王異「お任せください」

 楊笙鈴「戦勝をお祈りしております」

 その頃の劉備軍の様子。

 劉備「まさか、馬超殿程の男が劉璋殿に協力するとは、やはり間違えているのは、私なのか?」

 龐統「そう心配しなさんな。殿は間違えていやせんよ」

 徐庶「劉備殿、そう心配する必要はありませんよ。劉璋が民に対して圧政を敷いているのは明らか」

 陸遜「馬超という男は義理堅いと聞きます。騙されて涼州を失い、助けてもらった恩を返そうとしているのでしょう」

 関羽「兄者。帰ってきてばかりでまた駆り出されるとは思いませんでしたぞ」

 劉備「雲長、すまないな。私の我儘に付き合わせて」

 関羽「なーに、兄者の我儘は今に始まったことではありませんからな。それに、某も兄者と翼徳と共に戦場にでられて、嬉しい限り」

 張飛「流石、関羽の兄者だぜ。なっ、大兄者、言った通りだろ」

 劉備「そうだな翼徳」

 関羽「それにしても義賢が精神を病んで、民に落ちたと聞いた時は肝が冷えましたぞ」

 義賢「雲長。いや関羽将軍にまで、御心配をおかけした」

 関羽「えぇい、やめい。やめい。雲長で構わん」

 義賢「そうですか?雲長らしくないなぁ。いつも兵卒に厳しいのに」

 関羽「ほぉ。義賢は、厳しくしてほしいと。そういうことで構わんか?」

 義賢「ひっ」

 劉備「ハハハハハ。懐かしいな」

 関羽「そうですな」

 張飛「違いねぇ」

 そして、馬超の守る牂牁郡にて、相対する両雄。

 劉備「馬超殿、我が軍を通してはくれないか?」

 馬超「劉璋殿には、寄る辺の無くした我らを迎えくれてもらった恩がある。その話は聞けぬ」

 劉備「こちらとしても益州の民を救うという大義がある。力づくでも通らせてもらう」

 馬超「益州の民を救うのなら劉璋殿に手を貸し、反乱軍を倒すべきであろう。もう言葉は必要ない。お互いの信じるもののため刃で語り合いましょうぞ」

 劉備「それもやむなしか。趙雲、先鋒はお前に任せる!」

 馬超「こちらは、馬て」

 馬雲緑「馬超兄様、先陣は私に任せといて!」

 馬超「おい雲緑、待て」

 聞く耳を持たずに飛び出していく馬雲緑と劉備軍の中で、並ぶものなし槍の名将、趙雲。初戦は、この両軍による戦いとなる。
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