えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

文字の大きさ
上 下
418 / 639
4章 三国鼎立

二喬の真実

しおりを挟む
 徐栄の奇襲を受け、戦場にて吐血して倒れた孫策はまだ目を覚さない。大喬は熱心に看病していた。

 大喬「孫策様、私は謝らなければならないことがあるのです。どうか目を覚ましてくださいませ」

 孫策「・・・・・・」

 大喬は、孫策の元に嫁ぐことになった日のことを思い出していた。

 大喬「もう10年程、経ってしまったのですね。あれは、人質交換などではないのです。得をしたのは、養父とその弟君である劉丁様。私と小喬は、この揚州での孫策様たちの情報を逐一報告する諜報員なのですから。でもいつからでしょうか?孫策様の優しさに触れる度に私はどうしようもない罪悪感で押しつぶされそうになったのです。もう情報を流したくはない。でも、流さなければ、孫策様にとって良くないことが起こりそうで、私は私は。でも、孫策様は何度も何度も戦から離れてはくださいませんでした。その度に私の心は張り裂けそうに。私がしていることは、孫策様の命を縮めているのではないかと。その凛々しくて逞しい顔で、力強い言葉でこの哀れな女を罵ってくださいませ。こうして弱っている貴方にしか打ち明けられない哀れな女に」

 孫策「だ、い、き、ょ、う」

 大喬「孫策様、ここに居ますよ。目を?」

 孫策「・・・・・・」

 大喬「そんなわけありませんよね。今、新しい布を」

 周瑜はいまだ覚まさぬ孫策の代わりに実務の全てを担っていた。

 周瑜「伯符が実務を取れぬ以上、俺がなんとかしなければ、ええぃ華佗様はまだ見つからないのか。こんなに探しても全く情報が出てこないなんてことがあり得るのか。やはり伝説なのか。どんな怪我でも治してしまう男の話など」

 小喬「周瑜様~。そろそろ休まないと身体に毒だよ~」

 周瑜「小喬か。いや、伯符が倒れた以上、俺まで落ち落ちと寝ているわけにはいかない。いつ、劉備軍が反転攻勢してくるかわからないのだからな」

 小喬「しないよ。養父様はそんなことしないよ」

 周瑜「何故、わかる!今、ここに来たら我らに抗うすべは無いのだぞ!断定できる証拠もないのに口先だけで物を申すな!」

 そこまで言って周瑜は小喬に八つ当たりしてしまったと謝ろうとするのだが衝撃の事実を聞くことになる。

 小喬「ごめんなさい。本当にごめんなさい。周瑜様たちの情報を養父様に流していたのは、私とお姉ちゃんなの。それがこの国のためになるって、そう信じてたの。だってだって周瑜様も孫策様もそうしないと死んじゃうことになるって劉丁様が。ひくっひくっ」

 そこまで言って泣き崩れて出て行こうとする小喬を抱きしめる。

 周瑜「小喬、私もすまない言いすぎた。おあいこだ。良ければ、その話を詳しく聞かせてくれないか?」

 小喬「許してくれるの?」

 周瑜「その話を聞いた以上、今更知らなかったと言っても他の者たちは信じてくれないであろう。それに私はどうしようもなく無邪気な君に惹かれているんだ。一緒に背負わせてくれないか?」

 小喬「うん。孫策様は于吉って道士に殺される。殺された後、後を継いだ孫権様は荊州制覇の野望を捨てられず。その最中、周瑜様は毒矢によって命を失われるって、そう聞かされたの。だからそうならないように周瑜様と孫策様を止めてほしいって、だから私とお姉ちゃんは、情報を流し続けたの」

 周瑜「俄かには信じられない話だな。それが真なら劉丁という男は、未来がわかるというのか?どうして、君はそのことを信じたんだい?」

 小喬「劉丁様の予言が的中したのをこの目で見たから信じるしかなかったの」

 周瑜「どんな未来予知なのかな?」

 小喬「于吉が呉郡で暗躍していたこと。そして、曹操と袁紹が血みどろの争いを始めるって」

 周瑜「官渡の戦いか。しかし、あれは俺も予想はしていた。その予想の範疇ではないのか?」

 小喬「正確な人数同士の戦い、どうなるかその全てがその通りだったとしても?」

 周瑜「馬鹿な!?それを的確に当てたというのかい?」

 小喬「うん。そして劉丁様はこう言ったの。僕が君に話したのは孫策様と周瑜様の一つの可能性だ。その可能性に向かわないようにどうすれば良いか聡明な君ならわかるよねって」

 周瑜「孫堅様についても何か語っていたのか?」

 小喬「うん。あのまま長沙にいたら袁術の傀儡となり、死ぬことになっていたって」

 周瑜「それはあり得ない!孫堅様は武人。袁術がそれを御せるとは思えない」

 小喬「夫人が人質に取られたら?」

 周瑜「!?孫堅様は家族を最も大事にされていた。まさか!?」

 小喬「うん。きっと孫堅様が劉備様に手を貸すことにしたのは、孫策様や孫権様、家族を守るためなんだと思う」

 周瑜「俺たちは間違えていたのか。戦うべきは初めから曹操だけだった。欲をかいた結果が孫策の今の状態ということか」

 小喬「周瑜様は孫策様を助けたい?」

 周瑜「そんなの当たり前だろ!」

 小喬「張角様って知ってる?」

 周瑜「黄巾党の当主であった男でもう死んだ男であろう」

 小喬「死んでないよ。劉丁様が匿っていて、医者としてみんなの病を見て回っているの。それに華佗様もいるんだよ~」

 周瑜「何を言っている?」

 小喬「劉丁様が言ってた」

 周瑜「あんなに探して見つからなかった華佗様がそこにいる?案内を頼めるか?」

 小喬「うん」

 こうして、孫策・周瑜・大喬・小喬が張角診療所遠目指して消えたことによって、孫権を劉備軍に捕えられてしまって帰ってきた呂蒙は、誰に相談していいか分からず結果として武断派と文治派の争いが激化することになった。それどころか周瑜が信頼を置いていた龐統・魯粛が出奔したこともその事に拍車がかかり、文治派許すまじと武断派が強硬したのだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。補足説明と登場人物の設定資料

揚惇命
SF
『えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。』という作品の世界観の説明補足と各勢力の登場人物の設定資料となります。 本編のネタバレを含むため本編を読んでからお読みください。 ※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

タイムワープ艦隊2024

山本 双六
SF
太平洋を横断する日本機動部隊。この日本があるのは、大東亜(太平洋)戦争に勝利したことである。そんな日本が勝った理由は、ある機動部隊が来たことであるらしい。人呼んで「神の機動部隊」である。 この世界では、太平洋戦争で日本が勝った世界戦で書いています。(毎回、太平洋戦争系が日本ばかり勝っ世界線ですいません)逆ファイナルカウントダウンと考えてもらえればいいかと思います。只今、続編も同時並行で書いています!お楽しみに!

追放された運送屋、僕の【機械使役】は百年先の技術レベルでした ~馬車?汽船? こちら「潜水艦」です ドラゴンとか敵じゃない装甲カチカチだし~

なっくる
ファンタジー
☆気に入っていただけましたら、ファンタジー小説大賞の投票よろしくお願いします!☆ 「申し訳ないが、ウチに必要な機械を使役できない君はクビだ」 ”上の世界”から不思議な”機械”が落ちてくる世界……機械を魔法的に使役するスキル持ちは重宝されているのだが……なぜかフェドのスキルは”電話”など、そのままでは使えないものにばかり反応するのだ。 あえなくギルドをクビになったフェドの前に、上の世界から潜水艦と飛行機が落ちてくる……使役用の魔法を使ったところ、現れたのはふたりの美少女だった! 彼女たちの助力も得て、この世界の技術レベルのはるか先を行く機械を使役できるようになったフェド。 持ち前の魔力と明るさで、潜水艦と飛行機を使った世界最強最速の運び屋……トランスポーターへと上り詰めてゆく。 これは、世界最先端のスキルを持つ主人公が、潜水艦と飛行機を操る美少女達と世界を変えていく物語。 ※他サイトでも連載予定です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...