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4章 三国鼎立

急転直下

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 深夜、甄姫の部屋へとコソコソと向かう曹植。これを郭女王に甄姫のことを見張るようにと頼まれていた兄の郭浮カクフがその現場を見る。そして、甄姫の侍女として潜り込ませていた郭女王の姉であり郭浮の妹である郭昱カクイクが2人の様子を聞き耳を立てて聞いていた。

 曹植「兄嫁様、この度はお招きいただきありがとうございます」

 甄姫「私のために来てくださったのですね。嬉しいです曹植様」

 甄姫は涙を流しながら10歳程度も下である曹植に抱きつく。

 甄姫「(あの侍女、恐らくは私の行動を怪しんだ曹丕の召使いがよこした間者に違いない。好都合よ。見せつけてあげる)曹植様、甄はこんなにもお慕いしております」

 曹植「はわわわわわわ。ぼ、ぼ、ぼ、僕も甄姫様の事お慕いしていました」

 甄姫「嬉しいですわ。あの曹植様は経験は?」

 曹植「はひぃ。その妻とだけ」

 甄姫「まぁ、一途なんですね。では、私なんかが入り込む余地なんて」

 曹植「そ、そ、そ、そんなことはありません!甄姫様ならこちらからお願いしたいくらいです!」

 甄姫「まぁ、お上手なんですね。じゃあ、私のことを忘れられないように曹植様に刻み込んじゃいますけど覚悟してくださいね」

 曹植「はひぃぃぃぃぃぃぃ。こちらこそ、よよよ、宜しくお願いします~」

 甄姫のテクニックの前に、虜となった曹植。

 曹植「兄上には勿体無い。あの手紙に書かれていることは?」

 甄姫は耳元で囁く。

 甄姫「本当でございます。それに曹丕は曹植様を疎ましく思われている様子でした。近いうちに私も曹植様も曹丕に殺されてしまいます」

 曹植「そのようなことを本気で許さない。必ずや甄姫様は私がお守り致します」

 甄姫「頼りにしています曹植様。私にはもう曹植様しか」

 泣きながら曹植の胸で泣く甄姫。その背を抱きしめる曹植。その様子を少し開けた所から見ていた郭昱はその情報を郭浮に伝え、郭浮から郭女王へと伝わった。郭女王の行動は早かった。このことをすぐに曹丕へと伝える。

 曹丕「その話は真なのか女王!」

 郭女王「はい。曹植様があの女。失礼しました。甄姫様の家へとコソコソ向かい情事を重ねておりました」

 曹丕「あの売女が!もう我慢ならん。おい、そこのお前!」

 近衛兵「えっ俺ですか?」

 曹丕「他に誰がいる!すぐにこれを甄姫に届けよ!拒否すれば、その場で斬り殺せ!わかったな!!!」

 近衛兵「はい!すぐに行ってきます!」

 近衛兵とぶつかる形で伝令が入ってくる。

 伝令A「報告!甄姫様、曹叡様を連れてお隠れになられました!その居場所、現在不明!」

 曹丕「あの売女め!用意周到であったか。探せ探し出して必ず俺の前に連れて来い!」

 伝令A「はっ」

 立て続けに別の伝令が入ってくる。

 伝令B「曹丕様!大変です!曹植様が軍備を拡張!この洛陽を狙っているものかと!」

 曹丕「曹植の奴め。女に惑わされよって、父に気に入られていて昔から気に食わなかったのだ。迎え撃て、最悪殺しても構わん!」

 伝令B「はっ」

 さらに別の伝令が入ってくる。

 伝令C「曹操様と郭嘉様が病にお倒れになられました!どうやら度重なる出兵による疲労かと暫くは絶対安静とのこと!後、こちらを渡されました!」

 曹丕「父上が倒れただと!?(安定している時なら我が野望に近づいたと喜ぶべきなのかもしれんがこの状況というのが気にかかる。まさか父上は俺が曹植を殺さないか見極めようとしているのか。えぇい、どこまでも邪魔する毒親が)さっきの命令は取り消しだ。曹植は生かして捕らえよ!沙汰は父が下すとの事だ」

 伝令C「はっ」

 さらに伝令が入ってくる。

 伝令D「甄姫様を見つけたと郭浮様から連絡!」

 郭女王「流石兄上ね」

 また伝令が入ってくる。

 伝令E「郭浮様が甄姫様の護衛の男に苦戦している模様!至急、援軍を!」

 曹丕「了解した」

 さらに伝令が入ってくる。

 伝令F「郭浮様、奮戦虚しく、甄姫様たちを見失ったとのこと!」

 郭女王「兄上が見失うなんて、どういうこと?」

 伝令F「仮面をつけた異民族の軍団に急襲されたとのこと!その巧みな騎馬術から恐らく烏桓族であるとのこと」

 曹丕「烏桓だと!?奴らは匈奴共にやられたのではなかったのか!?」

 伝令F「おそらく逃げおおせたものたちが徒党を組んだかと。それに今までの烏桓の動きではなくそれは緻密な動きで統率されていたと」

 曹丕「もう良い!クソッ烏桓どもめ!匈奴を呼べ!烏桓の奴らは匈奴に任せる!どの辺りで消えたのだ」

 伝令F「青州と徐州の間とのこと!甄姫様は行商人の荷馬車に乗っていたと。その脇を身体中に傷だらけの男が固めていたと。その男に郭浮様は敵わなかったそうです」

 郭女王「顔はわからないの?」

 伝令F「鬼のような仮面を被っていたとのことです」

 曹丕「一体、何が起こっているというのだ?」

 司馬懿「ふむぅ(曹操様と郭嘉殿のお倒れは恐らく、偽報であろう。それも自分たちが流した。曹丕様への挑戦状だ。曹操様がいない状態で曹丕様がどうするのかというな曹操様らしくいやらしい手じゃ。やれやれ厄介なことをしてくれたものじゃ。それに生き残りの烏桓がいたとしてその裏にいるのは劉備に相違ない。劉備は公孫瓚の元にいた頃劉虞を通じて、烏桓と誼を通じていたのは、よく知られた話だ。まぁ、隠す必要もなかろう。それらを匿っていたとしても配下ではない。協定違反にも問えぬ。曹植様の反乱を曹操様が黙認している理由はわからんが。いや、模擬戦とでも聞いているのか?なら、誰か殺した時点で曹丕様に次代を導く才覚はないと判断されかねん。やれやれ困ったことになったものじゃ。身体中傷だらけの男には1人思い当たる男がいる。袁譚だ。曹操様に膝を折ったのも全ては、生きている弟たちに会うためだったと考えれば辻褄が合う。ここは、甄姫様の件は諦めていただくほかあるまい。そして、対するは曹植様だ。模擬戦として、被害を出さずに収めるのだ。やってやろうではないか。この裏に劉備のどのような思惑があるかは知らぬが。もう鍾繇に命じて、漢中を取る算段はついているのでな)」

 曹丕がわからないのも無理はない。甄姫の作戦は袁譚を通じて、劉備の元に身を寄せていた袁煕に伝わっていたのだ。そう、これは袁尚たち三兄弟がもう一度集まるために仕込んだ壮大な布石なのである。それに狂いがあったとしたらこれは同時に曹操軍の侵攻を遅らせる計画があった。しかしそれは、司馬懿に看破されていたことである。
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