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4章 三国鼎立

孫権の屈服

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 箪笥を開けると情事の少し前に服を剥ぎ取り裸にしておいた孫権から出たであろうものが箪笥の扉側に付着していた。

 孫尚香「あらあら、権兄様ったら、さっきまでの威勢はどうしちゃったの?」

 孫権「俺が俺が悪かった尚香。もう許してくれ。こんな苦痛はもう味わいたくない。劉備に屈する。もう戦わん。そのように兄上にも言うから。どうかどうか。俺を解放してくれ」

 孫尚香「そう。やっと決心してくれたのね。これで策兄様も権兄様も玄徳様と関係を持てたわね」

 孫権「兄上が?」

 孫尚香「だって兄上様の奥さんも劉備様の養女ですもの。そして、劉丁先生から密命を受けた密偵。策兄様を守るためにね。策兄様はお聞き入れくださらなかったみたいだけど」

 孫権「馬鹿な!?我々は初めから劉備の掌の上だったというのか」

 孫尚香「いいえ。正確には劉丁先生の掌の上かな。玄徳様は、大喬ちゃんと小喬ちゃんの幸せを願っているもの。策を弄したのは劉丁先生、あの人を敵に回すと恐ろしいわよ。まるで何処かで見てきたかのような戦況判断。それを踏まえて、圧倒的にひっくり返す状況判断。だからこそ、荊州南部の戦いで負けたことが信じられなかったのよね。でも聞くところによると遺恨ある者たちの独断専行に巻き込まれただけっていうし、詳細な地図も作っていたらしくて、その後すぐ降伏させたもの」

 孫権「全てが我らに手を出させるための布石だったのか。兄上だけでなく周瑜ですらまんまとその罠にハマっていたのだな。勝てんな。もう完全に心が折れた。男としては劉備に、野望は劉丁に負けたということか。全く、情けないな」

 孫尚香「気付いたのなら遅くはないわ。今から、父様と私と権兄様で策兄様を説得すればいいのよ」

 孫権「兄上が聞き入れることはないだろう。そもそも兄上は完全包囲されている。ここは、先に益州を落とし、曹操に備える方が良い」

 孫尚香「でも益州は、険しい道のりなのよ。曹操が華北を抑えてしまった今、その選択は悪手となりかねないわ」

 孫権「いや、いかに曹操とて馬超を放置して、南に全軍を投入するとは考えられん。それに俺なら益州の玄関口である漢中を先に抑える。今のままでは、劉備が益州を取った時にそのまま長安まで急襲されかねんからな」

 孫尚香「やっぱり権兄様は、私たち兄弟の中で1番、状況判断に長けてるわね」

 孫権「まぁな。俺には父や兄のような武勇はない。それに尚香のような大胆さもな。それに新たな野望ができた。俺はなお前が何れ産むであろう子に賭けるぞ」

 孫尚香「残念でした。私は阿斗ちゃんと仲が良いので、私の子は阿斗ちゃんの補佐役になるんです」

 孫権「ハッハッハ。なら尚更、阿斗の後、可能性はあるだろう。その頃には父や劉備も生きていまい。俺は誰よりも長生きするぞ」

 孫尚香「なんか怖いんだけどまぁいっかそんな先のこと」

 歩練師「姫様、あのこの男臭いのどうにかしませんか?後、もう屈服した方を裸で放置するのもどうかと」

 歩練師の言葉で孫尚香は笑いながら孫権に服を渡す。それを受け取り、着替える孫権は、孫尚香に連れられる形で、劉備の前へと跪いた。

 孫権「数々の御無礼、平に御容赦願いたい。尚香。ゴホン。劉備様の奥方様で荒らされる孫尚香様に説得され申した。今後はこの命劉備様のために捧げましょう」

 劉備「なんと!?真か?真に孫権殿が手を貸してくれると言うのか」

 孫権「殿などつけなくて結構。劉備様」

 劉備「わかった。良く決心してくれたな孫権よ。義弟として嬉しく思うぞ。働きに期待する」

 孫権「はっ。では、早速申し上げたいことが。我が兄孫策の件ですが現在劉備様は我が兄の領土を包囲しております。曹操の脅威に抗うためには更なる安全な土地が必要となります」

 劉備「うむ。そのことで頭を抱えていた」

 孫権・義賢・荀彧・諸葛亮「狙うは益州です!」

 4人の言葉が見事にハモったのである。

 劉備「だが孔明よ。お前は揚州の併合を推していたではないか」

 諸葛亮「はい。ですが情勢は変わりました。揚州では武断派と文治派による内乱に突入するでしょう。暫く、こちらには目を向けられないかと。なら、曹操よりも早く益州を、いえ漢中を抑えなくてはなりません」

 義賢「一介の兵卒の身でありながら発言することを許可いただきたい」

 劉備「丁よ。今は、お前は私の弟だ。戦勝祝いに来てくれた、な」

 義賢「ありがとうございます兄上。臥竜先生も言っていたように、漢中を抑えなければなりません。我らと違い曹操は既に漢中を狙える位置にいるのです。馬超殿がどこまで耐えれるか分かりませんが一刻も早く益州を抑えなければならないのは自明」

 荀彧「殿、曹操は待ってはくれません。すぐに漢中を抑えるための兵を出すでしょう。そうなれば益州を呑まれかねません」

 孫権「(我らでは勝てないのも納得だ。このような優秀なものが揃い踏みとは、な)劉備様、御三方のおっしゃる通りかとすぐに兵を益州に向かわせることを進言します!」

 劉備「承知した。全軍、益州に向け進軍を開始する。しかし、劉璋殿は同族。その命までは取らぬよう頼む。孫権は少し残れ」

 そう言って皆が解散し、残された孫権。劉備はそこに養女である袁紅姫を呼ぶ。

 袁紅姫「お呼びでしょうか義父上」

 孫権「うっ美しい。あっ貴方は、まさかあの時の」

 袁紅姫「まぁ、あの時は無礼な態度を失礼しました孫権様」

 劉備「紅姫や。どうだ孫権の奥方とはならんか?」

 袁紅姫「へっ?私なんかに孫権様なんて、ももも勿体無いことです」

 劉備「そうかダメか」

 孫権「ダメではありません。劉備様にお仕えすると決心したのです。繋がりを深めるという意味ではなく俺は幼かった彼女に出会った時から恋をしております。俺なんかでよければ、こちらからお願いしたいくらいです」

 劉備「と言っているがどうだ?それともまだ丁のことを?」

 袁紅姫「あわわわわ。孫権様の前でなんてことを。その。あの。あれは、恋ではなく憧れでした。救ってくれたという憧れでした」

 劉備「なら問題なかろう?」

 袁紅姫「はい。私なんかで良ければ孫権様。末長く宜しくお願いいたします」

 孫権「こちらこそ宜しく頼む」

 こうして、孫権は孫策と同じく劉備が義弟でありながら義父上というなんとも奇妙な形となったのである。
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