えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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4章 三国鼎立

関羽、千里の道を行く

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 関羽は徐庶の言に従い、足の遅い歩兵を一足先に返すことにした。
 関羽「曹操殿が我らの背を討つというのは俄には信じられん。兄者とは異なる思想だが、約束は果たす男だと信じている」
 徐庶「曹操殿はそうであっても臣下たちはそうではありません」
 徐晃「うむ。満寵のあの顔、何か策を考えている顔であった。十中八九、何か事を起こしてくるかと」
 張遼「厄介なことになりましたな」
 関羽「ふむぅ。此度の我が軍の大半は防衛に重きを置いた故、歩兵隊が中心である。逃げるとなると背を討たれかねん」
 徐庶「あぁ、だから今のうちに先に歩兵隊だけ返しておくんだ。事を起こすとしたら我々がここを去る時なのだから」
 関羽「単福の杞憂であれば良いが備えておくに越したことは無かろう」
 関羽はそう言うと歩兵隊たちに命じて、先に襄陽に向けて進発させた。この動きには満寵たちの動きはなかった。関羽がまだこの場に留まっていたからではなく、関羽軍の兵が少なくなることは利があったからである。そして、曹操への挨拶を済ませると関羽は騎馬隊たちと共に襄陽に向かう。その道中で追撃されたのである。
 夏侯惇「やっと追いついたぞ関羽!孟徳の恩を忘れ、立ち去るクズが。今こそ、アイツらの仇を取ってやろう」
 関羽「夏侯惇か。曹操殿は、某を行かせるようにと言ったはずだ。お前は、その命令を無視するとそう言うのだな?」
 夏侯惇「なんとでもいうが良い。お前を劉備と合流させるわけにはいかん。この場で叩き斬ってくれるわ」
 満寵「残念だよ徐晃。だから後悔すると言ったはずだよ」
 徐晃「満寵、お前は変わってしまったな。こんな謀を企てるなど」
 満寵「君も変わってしまったよ」
 徐晃「ならお互い様ということだな」
 程昱「徐庶!!!!貴様ー!!!!絶対に許さんぞ!!!!」
 徐庶「何に怒っているのか知らないけど、その様子だと君の謀も水泡に帰したようだね」
 程昱「徐庶、貴様ーーーーーーーーーーその澄ました顔を絶対に歪ませてやるからなーーーー!!!」
 関羽は勿論、迎え撃つつもりはない。
 関羽「者共。全速力で駆け抜けよ。相手にしてはならん」
 夏侯惇「追いつかれて尚、逃げるというのか関羽!なら、こちらは遠慮なくその背を討たせてもらうだけのことだ。全軍、逃げる関羽軍を殲滅せよ」
 お互い騎馬である。追いつかれて不利なのは関羽軍である。だが、関羽に動じる様子は全くない。追いついた夏侯惇たちがその背を討とうとした時、全員がひっくり返った。いや、最初から馬だけを進ませて、自分たちは馬の進行方向と反対側を向いて、槍を構えて待ち構えていたのである。
 関羽軍兵士A「これには驚いたかい?顔を布で隠していることで、まるで馬と同じ方向を向いてるものだと思ってくれるんだから最初の奇襲には持ってこいなのさ」
 夏侯惇軍兵士A「うげげ」
 関羽軍兵士A「もう聞こえてなかったかい?よーしよし、そのまま真っ直ぐ進んでおくれ」
 馬「ヒヒーン」
 夏侯惇も関羽と馬上で一騎討ちを行っていた。
 夏侯惇「ただ逃げるだけではなかったか。やってくれたな関羽よ」
 関羽「ここで貴殿を討てば、曹操殿とて許してはくれないだろう。早々に帰るが良い」
 夏侯惇「死ぬのは貴様の方だ関羽よ」
 関羽「どうあっても聞いてはくれないわけだな。赤龍よ。暫し安定させるのだ」
 赤龍「ヒヒーン(キャー 関羽様のダンディな声が耳元に~~~~耳福耳福~~~)」
 夏侯惇「安定させたところで、馬と一体の俺と馬と違う方向を向いているお前とでは、力の比重が違う」
 関羽「それはどうかな。我が青龍偃月刀と我が愛馬を持ってすれば、このようなことちょうど良いぐらいだぞ」
 その言葉通り、夏侯惇の攻撃に何度も合わせて、打ち合う。
 夏侯惇「この、いい加減に地に落ちろ!」
 関羽「刃に迷いが見えるぞ夏侯惇。葛藤しているのではないか、部下の仇を討ちたいお前と曹操殿の命令を守ろうとするお前が」
 夏侯惇「フン、好き勝手解釈しよって、そんなことはない」
 張遼「皆、隊列を崩してはならん!皆で、この窮地を脱しようぞ!」
 張遼の激で持ち直す関羽軍兵士。
 徐晃「満寵よ。もう良いであろう。このようなところで命を落とす必要はない」
 満寵「昔は僕の方が強かったのにね!」
 徐晃と満寵も打ち合っていた。
 徐晃「ぐぐぐ」
 満寵「友情はここまでだと言っときながら刃には想いが込もってないね。そらそら」
 徐晃が満寵相手に防戦一方となっていた。
 満寵「僕は殺すつもりだよ。ここで君をね。曹操様に仕えないのなら厄介な敵でしかないのだから」
 徐晃「そういうすぐに割り切れるところは変わらんな」
 満寵「そうかい。君が男の癖に女々しいだけじゃないかな」
 徐晃「言ってくれるものだ」
 ガキーンと徐晃の大斧が満寵の剣を弾き飛ばした。
 程昱「徐庶ーーーー!!!!」
 徐庶「何をそんなに怒っているんだい?俺は当然のことをしただけだと思うんだけど」
 程昱「ふざけるなーーーー!勝手に民を移動させて良いわけが無いだろう!このクソ野郎が!」
 徐庶「殺されることが予めわかっていて逃がさないなんてことできないよ普通」
 程昱「そこまでわかって!?」
 徐庶「君のことなんてお見通しさ。意に従わなかったら実力行使で母を人質に取るつもりだったんだろう。そうはさせないよ」
 このような感じで全員が戦っているこの場に夏侯淵の声が響く。
 夏侯淵「惇にぃ、関羽殿。双方、矛を納めるんだ。これ以上は、洒落にならないぞ!」
 夏侯惇「淵、お前が何故?」
 夏侯淵「殿が思い詰めている惇にぃに気付いてな。俺を仲裁に向かわしたわけよ。関羽軍はこのまま劉備の元に帰られよ。申し訳なかった」
 関羽「幸いこちらは怪我人だけだ。しかし、このような奇襲、とても許せることではない」
 夏侯淵「わかっている。この件の責任をとって、殿から向こう1年の間はこちらから劉備殿に手を出すことはないとのことだ」
 関羽「無条件停戦ではなく1年間の停戦に変えたいとのことだな?それは、責任を取ったことにはならないだろう」
 夏侯淵「あぁ、だがそちらも応戦とはいえこちらの兵を多く殺しているよな。このまま、戦となって困るのは果たしてどちらなんだろうな?」
 関羽「あくまで上から目線というわけか。構わん。一年もあれば兄者には十分であろう」
 夏侯淵「よし、では双方引き上げよ」
 関羽は勝手な約束を交わしたわけではない。これは結果的に北の同盟相手である馬超を救うこととなるのである。このまま無条件停戦が続けば、馬超が耐えられない。それを見越してのことであった。
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