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4章 三国鼎立

手術の行方は

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 孫堅たちは使用中と書かれている赤い明滅が消えるのを大人しく待っていた。やがて、手術室の扉が開き華佗が出てくる。
 孫堅「祖茂は祖茂は無事なのか!」
 華佗「そう肩を揺するでないわ。礼儀のなってない奴らじゃな」
 黄蓋「好き勝手言いやがって!無事なのかどうか聞いてるんじゃ!」
 程普「落ち着かんか馬鹿者!ところで貴方様は?」
 華佗「華佗と申す」
 程普「あなたが天才と称される華佗殿でしたか。殿と黄蓋が失礼しました。ところで祖茂の容体は」
 華佗「すこぶる悪い。生きているのが不思議なくらいの出血量じゃ。身体中の傷を見る限り、よっぽど酷い拷問を受けたようじゃな。精神力と気力でなんとかこの世に留まっていると言ったところかの」
 孫堅「では祖茂は、もう」
 華佗「ん?何を言っておる。ワシを誰だと思ってるんじゃ。手術は無事成功じゃ。目が覚めるかは本人の頑張り次第と言ったところかの」
 黄蓋「祖茂は助かったんじゃな?」
 程普「黄蓋、華佗殿がそう言っているだろう」
 韓当「良かったなぁ。本当に良かったんだなぁ」
 程普「泣くでない韓当、釣られるであろうが」
 張角「こちらの服に着替えて、なかに入られるが良い。術後は感染症に気をつけなければならないのでな。身体を洗ってもらい清潔な服に着替えてもらう必要があるのじゃ」
 孫堅「了解した」
 孫堅たちが一旦その場を去る。
 椿「ふわぁ。張角先生、私も終わりなので、帰ります」
 張角「あぁ御苦労さん」
 ???「椿、交代に来たわよ」
 椿「あっ柊姉さん、昨日は大変だったんだから!」
 柊「はいはい。助産師を目指してる私たちが受付させられてるぐらいに人手不足ですもんね張角先生」
 張角「ハハハハハ。いや、本当に申し訳ない。今、霊帝様からも受付に人を回してもらえないか相談しているところじゃ。もう少し我慢してくれると助かる」
 柊「仕方ないわね。あれっ梟は?」
 梟「お呼びか?」
 柊「孫堅たちが来てるけど警備は何してんのよ!」
 梟「ここは患者を優先にする診療所だ。怪我人の治療が最優先と判断した」
 柊「あっそ。すっかり馴染んじゃってさ」
 梟「いつまでも過去に拘っていては、目を曇らせると学んだのでな」
 柊「えぇ、それはそうね」
 椿は外で迷っている孫堅に声をかける。
 椿「どうかされましたか?」
 孫堅「あっいや。聞いた方が良いか。身体を清められるところはどこか?」
 椿「あっそれならこっちですよ。でも今の時間は子供達が多いかな。みんな元気で困るんですよ」
 孫堅「皆、生き生きとしているのだな」
 椿「えぇ、貴方の御子息に大事な人を殺された私たちですらこのように心穏やかに暮らしてますから。あっ嫌だなぁ嫌味じゃないですよぉ」
 孫堅「そうかお前たちは許貢の」
 椿「ここはいろんな傷を負った人たちが寄り添い励まし合い助け合うところです。張角様がかつて黄巾の乱で国を乱したことは知っています。でも、過去よりも今を見てあげてください。殺そうとされるなら私たちも手加減はできませんよぉ」
 孫堅「あぁ、わかっている。昨日は声を荒げて申し訳なかった。こちらも余裕がなかったのだ」
 椿「まぁそういうことにしておいてあげます。さぁここですよ」
 綺麗な川で滝が流れていて、そこでは子供達が滝修行とばかりに水に打たれて楽しんでいた。
 孫堅「感謝する」
 椿「では、私はこれで、疲れちゃったんで帰ります」
 椿はそういうと足早に大きな建物の中へと消えていく。その光景を目で追っていた孫堅に子供が話しかけてくる。
 子供「おじさん誰?」
 孫堅「これは驚かせてしまってすまない。身体を清めたいのだが我らにも滝に打たせてもらっても構わないだろうか?」
 子供「良いよ~。お前ら、おじちゃんたちのために少し滝を空けるぞ」
 子供たちの代表なのだろうか彼がいうと皆、はーいといって、その場を空けてくれた。孫堅たちは滝に打たれて、身体を清めた後、清潔な服へと着替えて、診療所へと戻るのだった。入り口では、既に待っている人たちが居た。
 老婆「今日は張角先生の日ではなかったかの?」
 張梁「婆ちゃん、しっかりしてくれよ。今日は張宝姉さん。ゴホン。張宝先生の日だぜ」
 老婆「そうじゃったかの。ほいじゃ。これ皆さんで食べてくだされ」
 張梁「おっ有り難く」
 張曼成「何受け取ろうとしてんだよ。婆ちゃん、悪いんだけどよ。こういうのは受け取っちゃダメなんだ。悪いな」
 老婆「こんな重いものを持って帰るのはしんどいんじゃ。受け取ってくれんかの」
 その騒ぎを聞いて張角が出てくる。
 張角「いつもいつも悪いね婆ちゃん。皆んなで有り難く頂くよ。でも、本来こんなものを受け取れるような人ではないんだよワシらは」
 老婆「そんなことないけん。張角先生が居てくれるだけでワシらは安心じゃけん。これぐらいさせてくだされ」
 張角「ありがとう。美味しく頂きますよ」
 老婆「張角先生の顔が見れてよかったけん。次はいつじゃったかの?」
 張角「明日ですよ」
 老婆「では、明日また来ますけん」
 張角「お待ちしています」
 孫堅はその微笑ましいやり取りを見守っていた。
 張角「これはみっともないところをお見せしましたな孫堅殿、さぁこちらへ」
 孫堅「いや、いい先生なのだな。昨日の無礼を平に御容赦願いたい」
 張角「気にしておりませんぞ。そう言われても仕方のないことをしてきたのですからな。では、こちらへ」
 孫堅「ん?昨日と違う部屋?」
 張角「昨日のは手術室でしてな。こちらが病室です。祖茂殿は頑張られましたから声をかけてやってくだされ」
 孫堅たちが声をかけるとやがて祖茂が目を覚ました。
 祖茂「あれっここは。イテテ。って殿!?本当に殿なのですか?まさかここは天国。殿も死んで」
 孫堅「安心せよ。生きている。お互いにな」
 祖茂「そうか。あの時、正体を明かした直前、無数の槍が俺に向かって、それは確かに貫いたと思っていた。しかし、それは地面に突き立てられていたのだな。捕虜にして殿を誘き出すために。イテテ」
 孫堅「お前が無事で本当に良かった。今は怪我を治すことだけに集中せよ」
 祖茂「承知しました」
 祖茂はそういうとまた寝息を立てて眠り始めたのだった。
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