上 下
398 / 573
4章 三国鼎立

南海城、燃ゆる

しおりを挟む
 士祇が討ち取られた。それを見て発狂しながら民の元へと向かう士頌と士幹。
 士頌「兄上様をよくも、よくも殺してくれたな。このクソ野郎が。殺してやる殺してやる。今こそお前らの出番だろうが!さっさとその埋め込まれた爆弾の導火線に火を付けろ!」
 士幹「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ兄様ーーーーーーーーー。クソがクソがクソが私と兄様のめくるめく情欲の日々を奪うだなんて、絶対に殺してやるんだから、殺してやるんだから」
 士頌は男口調に戻ったが士幹の方は女性口調から戻っていなかった。
 劉備「待て、お前たちは負けたのだ。投降すれば命は取らん」
 民老「おしまいじゃ。おしまいじゃ。この交州の守護神様が他に伏してしまったのじゃ。せめて、この爆弾で、簒奪者どもの王は道連れにしてくれるわ」
 民男「はひひはひひひはひひひひ。士祇様が士祇様がはひひひひひひひ」
 民女「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁそんなことってーーーーーーーーー。こんなの嘘よ嘘よ嘘よ。娘や妹が強姦王に弄ばれる未来なんてごめんだわ。殺してあげる。私が殺してあげる」
 その場にいた民たちに劉備の声は届かない。それどころか皆一様に、爆弾の導火線に火を付け始めた。
 劉備「何を考えている!命は大事にするのだ」
 士頌「これで、貴様も終わりだ。逃げ場のないこの城の崩落に巻き込まれて死ぬがいい。あっこれもしておかねばな」
 士頌はそういうと士幹と共に士祇の亡骸を抱えて、まるで城下の民にその死を見せる。
 士幹「これでアンタも終わりよ。兄様の死が城下町のみんなにも知れ渡ったんだから。今頃、城下町のみんなも爆弾の導火線に火をつけ始めた頃よ。アンタだけは絶対に道連れにしてやるんだから!」
 士頌「貴様の最後を見られないのは残念だが。兄上様をあの世で1人にはさせられないのでな」
 士幹「これで負けたのはアンタだからね」
 そういうと2人は士祇の亡骸を抱えながら身を投げた。
 劉備「待て、クソッ。どうしたらいい?皆んなには遠くに離れるように言った。恐らく巻き込まれるのは私だけだ。どうしたら」
 ???「ヒヒーン(我が主の危機に颯爽と登場致した)」
 劉備「的盧!お前は本当によくできた馬だ。私をこの死地から救出しに来てくれたのか!」
 的盧「ヒヒーン(当然だ。我が主は、貴方様だけと決めている。死ぬ時は共にだ。だが死なせはせんよ)」
 劉備「しかし、どう切り抜けるつもりだ」
 的盧「ヒヒーン(そんなのはこうするまでよ)」
 的盧は先程、士頌と士幹が身を投げたところから下に向かって駆け降りた。
 劉備「うおっ。的盧、城の外壁を駆け降りるなんて、何考えて、下にも民たちが爆誕となって、我々を待ち受けているのだぞ!」
 的盧「ヒヒーン。ブルブル(我が主を死なせはせん。ここだこの城の外壁と城の外につながる外壁の間隔が短いここで)」
 的盧は飛んだ。城の外壁と城外の外壁の間隔が少なくなったタイミングで跳躍して、城外の外壁へと飛び移り、さらにそのまま、外へと城外の外壁を駆け降り、走り去った。その時間、5分とはかからなかっただろう。その間もそこら中で爆発の音が聞こえるが、それを器用に避けて、駆け降りる的盧に凶馬という言葉似合わない幸運という言葉がよく似合った。
 劉備「的盧!お前、なんて無茶をするんだ。だが助かった。脚に問題はないか?何処か怪我していないか?」
 的盧「ヒヒーン!!!!(全く心配性な我が主よ。だが、そこが良い。絶対に死なせはせんよ。我が主が俺に乗ってくれる限りはな)」
 劉備「大丈夫そうだな。助かったぞ的盧」
 的盧「ヒヒーン(我が主よ。もっと褒めても構わんぞ)」
 劉備はチラリと背後を見た。爆発が大きかった南海城は粉々に壊れ、城下町のあちこちからは火の手が上がっていた。あの場にいたらきっとその爆発に巻き込まれて、瓦礫の下敷きとなり命を失っていたであろう。的盧が来てくれたことで無事に逃げ切れたのである。
 劉備「このようなことになんの意味がある。士祇が死んだのだ。どうして、こんな無駄死にを」
 孫堅「彼らにとって、士祇が絶対的な王だったのだろう。それ以外の統治者を認めるつもりはなかったのかもしれん」
 諸葛亮「えぇ、言葉というのはそれだけ影響力があるのです。士祇は殿にまつわる話を悪い方に悪い方に民たちを誘導しました。そして、それを盲目に信じた民たちは士祇の信奉者となり、その命ですら差し出したのです」
 張飛「でも大兄者が無事で良かったぜ。陳到の奴が白毦の奴らと帰ってきた時は、どうしていいかよぉわからなかった」
 劉備は張飛と熱い抱擁を交わす。
 劉備「翼徳、よく我慢してくれたな。お前が私を助けに来て亡くなっていたかも知れぬと思うと心が張り裂けそうだ」
 張飛「くっ苦しいぜ大兄者。まぁでも嬉しいぜ。こういうのは久々だからよ。でも、なんだやっぱり妻のが良いな」
 劉備「この!すっかり愛妻家になりおって。ハッハッハッハ」
 張飛「まぁな。これだけ離れるとよ。恋しくなるもんだ」
 劉備「確かにな。関羽とはもう暫く顔を合わせていない。早く、また3人で顔を合わせたいものだ」
 張飛「おぅ。もう兄者が時間を稼ぐ必要もねぇ。また会えるぜ」
 劉備「そうだな」
 士祇の死、士頌と士幹の身投げ、士祇を信奉する民たちの命をかけた特攻からなんとか命からがら逃げ切った劉備は、崩落した南海城の復旧作業に追われるのである。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。補足説明と登場人物の設定資料

揚惇命
SF
『えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。』という作品の世界観の説明補足と各勢力の登場人物の設定資料となります。 本編のネタバレを含むため本編を読んでからお読みください。 ※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...