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4章 三国鼎立

南海城外の攻防戦(序)

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 劉備が南海城の攻城戦を開始する。士祇は南海城の外に兵を布陣した。それを率いるのは。
 士祇「芭鐚朔バアサク、お前のその力を見せる時が来たぞ」
 芭鐚朔「オレ、シギ、タメ、ガンゼン、テキ、ツブス」
 士祇「あぁ頼りにしている。お前の悪魔の力をな存分に劉備に発揮してやるがいい」
 芭鐚朔「ウォォォォォォォォォォォ。シギ、イノチ、クレタ、オン、カエス」
 士祇「(コイツは人間ではない。悪魔の子だ。人から産まれず馬から産まれたそうだ。本当かは知らん。だが人の言葉を話すことができない。事実、俺には何を言っているかさっぱりわからんからな)さぁ、いけ」
 芭鐚朔「ウガァァァァァァァァァァァァ」
 劉備軍の前線を任されたのは趙雲である。
 趙雲「先陣を殿から仰せつかった。我らの目的は、眼前の敵を駆逐すること。必ずや後方の殿たちを城まで届ける。行くぞーーーーーー」
 夏侯蘭「子龍、お前は子供か!」
 樊玉鳳「こういうところが魅力的なんですよ。フフッ」
 陳応「俺の弓で射ぬいてやるぜ」
 鮑隆「久々に暴れてやるとするか」
 趙雲隊が芭鐚朔隊と激突する。
 芭鐚朔「オマエラ、ドケ」
 趙雲「何を言っているかわからないな」
 趙雲の槍が芭鐚朔を貫く。確かに貫いた。だが痛みなど関係ないかのように、槌を大ぶりに振り回し、防御態勢のまま弾き飛ばされる趙雲。
 趙雲「我が槍を受けるがいい」
 芭鐚朔「ウガァァァァァァァァァァ」
 趙雲「なっ何!?貫いたはず。ぐっ槍が抜けん。まずい。うぐっ」
 樊玉鳳「子龍!?無事?」
 趙雲「ゴホッ。なんて怪力だ。肋が数本行ってるかもしれん」
 芭鐚朔「オレ、シギ、マモル。オマエラ、イケ」
 芭鐚朔の言葉で、兵士たちが突撃してくるがどいつもこいつも目がイッてる。趙雲の部隊は槍を持った騎馬隊だ。皆、突撃してきた兵士を刺すのだが痛みなど感じていないかのように突撃してくる。それにより、被害は趙雲隊の方に多く出たのだ。それを止めたのは、またしてもこの男だった。趙雲と長い付き合いであり、この度、劉備軍の一員となった夏侯蘭である。
 夏侯蘭「おまえたち、狼狽えるな!数はこちらの方が上だ。1人で刺してダメなら束になって確実に仕留めるのだ!陳応、お前は趙雲隊にとって貴重な弓隊、援護せよ!鮑隆、歩兵隊の準備はできてるか?」
 陳応「おっおぅわかった」
 鮑隆「あっあぁ大丈夫だ」
 夏侯蘭「良し、歩兵隊は前面に出て、盾を形成せよ。奴らは正気を失った人だ。盾にて押し留めて、縦の合間から槍にて突き刺すのだ」
 趙雲「アイツが帰って来てくれて助かったかもな。うぐ」
 樊玉鳳「子龍、動かないで、こんなに血が」
 趙雲「大丈夫だ。肋、何本か持ってかれた程度だ。玉鳳危ない!」
 樊玉鳳「きゃっ」
 芭鐚朔「オンナ、オンナ、オカス」
 趙雲「何故、槍が刺さっていて、こんなに動ける」
 樊玉鳳「わからない。でも、アイツの標的は子龍から私に移ったみたい。子龍は暫く安静にしてること。わかった?」
 趙雲「玉鳳、何を考えている?」
 樊玉鳳「鬼さん、こっちだよ~」
 芭鐚朔「ウガァァァァァァァァァァ。オンナ、オウ、ツカマエル、オカス」
 趙雲「待て、玉鳳!玉鳳!」
 樊玉鳳が馬に乗ると趙雲から目を逸らすため芭鐚朔に追いかけさせる。
 樊玉鳳「嘘!人間の足じゃない!?馬についてくるなんて!」
 芭鐚朔「オンナ、オンナ、オカス、オカス」
 樊玉鳳が引いたところに夏侯蘭が待っていた。
 夏侯蘭「奥方殿が無茶しすぎだ」
 樊玉鳳「夏侯蘭、子龍を助けるためよ」
 夏侯蘭「わかっている。よく惹きつけてくれた。陳応、あの男に矢の雨を降らせてやれ」
 陳応「なんかすっかり立場が逆転した気分だぜ。先輩は俺だってのによ。おら、お前ら趙雲隊は騎馬隊だけじゃねぇ弓隊を強いってのを見せるぞ。構えろ、放て」
 陳応の命令で弓隊が矢を放つ。それを真正面に受けながらもなお前進をやめることはない芭鐚朔。
 芭鐚朔「ウガァァァァァァァァァァァ。オンナ、オカス。ジャマ、コロス」
 陳応「嘘だろ。退避。退避だ」
 弓隊「ひぃ化け物だ」
 夏侯蘭「狼狽えるなと言っているだろう。この世に人でない化け物など存在しない!あの男は痛覚が無いのだ。ならとことん打ち込むだけのこと」
 夏侯蘭は弓隊から弓を分捕ると、矢が無くなるまで打ち続けた。それでも芭鐚朔は歩みを止めない。その歩みは着々と樊玉鳳に届こうとしていた。夏侯蘭はそれを見過ごすことはない。前に出て、槍を構える。そして、背後からあの男も血を流しながら別の槍を構えて、やってきていた。
 夏侯蘭「全く、大した男だよお前は」
 芭鐚朔「ウガァァァァァァァァ」
 夏侯蘭「お前じゃねぇよ。これで終わりだ。痛覚を失った人さんよ」
 趙雲「我が妻に触れることなど許さん!」
 樊玉鳳「子龍、あの馬鹿。何考えてんの!」
 夏侯蘭の槍と趙雲の槍が芭鐚朔の両胸を貫いた。どんなに痛覚が無い男でも心臓はある。矢は刺さっても到達していなかった。だがそれを押し込むように槍で貫いたとしたら。それは芭鐚朔の心臓の活動を止めるのに時間はかからなかった。その場で跪き、全く動かない芭鐚朔。完全な停止。そして、彼が率いていた部隊も夏侯蘭の的確な指示を受け、混乱から立ち直った趙雲隊と歩兵隊によって駆逐された。しかし、その男たちを見て愕然とするのだった。
 夏侯蘭「これは民兵か?」
 趙雲「こんな使い方があるというのか。正気を失わせて、突撃させるなど」
 樊玉鳳「恐らく痛みを感じさせない何かと正気を無くす何かを混ぜた者を戦闘前に飲まされたか嗅がされたんだと思う」
 趙雲「うぐっ」
 夏侯蘭「子龍!お前、やっぱり無茶を」
 趙雲「得体の知れない何かを俺から遠ざけるために玉鳳が囮となろうとしたのだ。心配しない旦那が居ると思うか。だから子供が産まれたのを契機に引退を薦めたというのに」
 樊玉鳳「私が引退したら誰が子龍を守るのよ。軟ちゃんにも頼まれてるんだから」
 趙雲「軟児が」
 夏侯蘭「堅物だった男が今や妻2人とはな」
 趙雲「茶化すな夏侯蘭!うぐ。流石に動きすぎたか」
 樊玉鳳「ほら肩貸して」
 白龍「ヒヒーン(子龍様、大丈夫?ごめんね私がもっと早く避けてたら)」
 樊玉鳳「白龍、心配しないで大丈夫よ。少し肋がいっただけよ。死なないわ」
 夏侯蘭「白龍にまで心配をかけて、とんだ御主人様だ」
 趙雲「すまない」
 傷だらけの趙雲を見た劉備は襄陽へと戻ることを通達。樊玉鳳に付き添われながら趙雲はここで交州攻略からは離脱することとなる。残った趙雲隊の面々の指揮は、夏侯蘭が取ることとなり、何はともあれ初戦を制したのだった。
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