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4章 三国鼎立

蒼梧城、陥落後の様子

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 蒼梧城内は意外と落ち着いていた。死者数は、桓鄰の重装歩兵隊、雁門の騎馬隊、そして城主の桓治。桓治の統治は城主を務めていた士幹よりも的確で民に愛されていた。桓治は交州のことだけを考えていたのだ。そして、劉備の悪評もなかった。士幹が流した噂の全てを桓治が否定していたのだ。
 民老「桓治様、どうして死になさった。あのような売国奴に付き合う必要などなかったのじゃ。うぅ」
 民女「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ桓治様。どうしてどうして、これも全てあの男が士祇のせいなのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
 民男「爺様もお前もそんなに泣くんじゃねぇよ。桓治様は立派に責任を果たしたじゃねぇか。これでようやく休めるんだからよ。うっうっ」
 少年「なんで?アイツに連れて行かれそうになった僕たちのことを身体を張って助けてくれたおじちゃんがなんで、なんで死ぬの。おじちゃんが悪い人だから?なんで、うわーん」
 城壁の上から運ばれていく桓治の死体を見て、泣きじゃくる民たちを見ている劉備たち。
 劉備「こんなにも民たちに愛されていたのだな。どうして、桓治殿は自ら命を」
 桓発「父さん。いや父上は、士燮様が孫堅殿を招き入れてから交州がおかしくなったと言ってました」
 孫堅「俺が原因?」
 桓発「はい。孫堅殿の力は絶大だ。それは同時に交州に2人の君主が存在するのと同じだと孫堅殿が士燮様の傘下に収まる器ではないと」
 孫堅「俺は士燮殿に刃を向けるつもりなどなかったが策はわからんな。アイツもよく言っていた。どうして父上は俺が守り抜いた長沙を劉表に渡して、こんな片田舎に来るんだと。だから揚州を奪取することにしたのだろう」
 桓発「孫堅殿が命じたのでしょう」
 孫堅「アイツの派閥の反発を押さえ込むのは無理であった。それぐらい俺の指導力も落ちていたのだ。付いてきたのが最古参の黄蓋と程普と韓当だけであることからもわかるであろう。弟にすら見限られたのだ。だがあの当時長沙に居ては、袁紹と袁術の兄弟争いに巻き込まれ、命を落としていたであろう。命を拾えたことによって欲ができたのも事実。だが俺の欲は些細なものだ。孫の顔をみたい程度のな」
 桓発「そうだったのですか。でも父上はそう見ていなかった。孫策殿が揚州制覇に向かったのを機に士燮様への反乱の準備を着々と進めていました。当時の父上は、孫堅殿を危険視していた士祇様の方が当主として相応しいと感じだそうです。ですが結果は士徽を表に立てた士祇による独断政治が始まった。それに巻き込まれ疲弊したのは民たちです。それをよく思っていなかった。ですがその結果を招いた一因は士祇に協力した父上にもある。父上はその狭間にたち。忠臣として劉備殿に討たれる道を選んだ。ですが劉備殿は、殺す気は無さそうだった。だから自分で責任を取ったのでしょう。私を人質にして悪役を演じようとしていましたしね」
 孫堅「そこまで、思い詰めさせていたとはすまない」
 劉備「あれが演技?本当に息子と共に心中しようとしているように見えた。自分で自分を刺す寸前まで、私は人質となっていた君を助けようと」
 桓発「わかっています。父上も劉備殿の有り余る優しさに理解してしまった。この人は自分を殺してはくれないだろう。民たちに前よりも苦しい生活をさせた要因を作ったのは誰だ。俺じゃないかと。父上は責任を取りたかった。その方法が間違えていたのかもしれません。ですが不器用な父のこと。あぁいうやり方でしか責任を取れなかったのでしょう」
 劉備「すまない。私がもっと早く真意に気付いていれば、桓鄰殿も桓治殿も」
 桓発「おやめください。叔父上は父上に心酔していました。共に責任を取るのが筋と思ったのでしょう。あぁ見えて、頑固なお人ですから」
 孫堅「あれ程の武人に出会ったことはない。武力という面では平凡と言えるが胆力・そして指揮力は我らを圧倒していた。我が側近が揃いも揃って狼狽えるほどにな」
 桓発「ハハハ。叔父上も最後の最後に孫堅殿程の武人とやりあえて本望でしょう。惜しむらくは叔父上の率いた重装歩兵隊も皆、後を追ったことです。彼らほど固い防御力を誇る者たちを見たことはありません。といっても僕が知ってるのはこの交州だけなんですけどね」
 劉備「これから我らと共に世界を見て知るといい」
 桓発「有難い御言葉ですが今は遠慮させてもらいます」
 劉備「何故?」
 桓発「父上と叔父上の名誉のためです。2人とも忠臣として亡くなられたのに、僕が劉備軍に加わっては、世間からどう思われるでしょう。暫くは、父と叔父の菩提を弔いながら畑を耕すことにしますよ」
 劉備「そうか。無理強いはできんな」
 桓発「劉備殿が作る皆が仲良く暮らせる世界。楽しみにしています。その道は深く険しいでしょうが」
 劉備「感謝する」
 桓発「次はこの交州で最後となる南海郡です。お気をつけください。南海城はこの1年半で大きく変わりました。今や人の屍の上に立つ要塞です。多くの者があの要塞を作るために寝ずに働かされて亡くなったと聞きます。その中には、ここから連れて行かれた者も。父上が思い詰めるのも無理はありませんね。僕は父上と叔父上の後ろを歩くだけの何も知らないガキでした」
 孫堅「士祇の狙いは何だ?何を狙っている?ここまで追い込まれて尚、戦う理由は?」
 諸葛亮「華北の勝敗が未だ決して居ないからでしょう」
 劉備「孔明はまだ言うのか。曹操が士祇と手を組んでいると?」
 諸葛亮「その可能性が高いかと」
 桓発「士祇は、曹操の信奉者です。ですが裏で繋がっているかまではわかりません。それこそ独断かと。父上は士祇がこの交州をそっくりそのまま売り渡すつもりではないかと考えていたようですが」
 諸葛亮「玄徳様、我らの当初の目的はこの交州を早急に落とし、攻めてきた孫策に落とし前を付けさせるために揚州への逆侵攻を考えていました」
 孫堅「!!!!」
 劉備「孫堅殿が驚かれるのも無理はない。曹操と戦うためには南同士で争っている場合ではない。早急に南を統一し、北の曹操と構えなければ、時をかければかけるだけ不利となっていくのは南の我らなのです」
 孫堅「確かに。それに策の野心は高すぎる。そして劉備殿とは違う人を惹きつける魅力も持ち合わせている。流石、俺の息子よ」
 諸葛亮「えぇ、だからこそ。早く手綱を握らないと危険なのです。それこそ、曹操と孫策に挟まれては玄徳様が危険なのです」
 孫堅「わかっている。協力してもらった時から次はこちらが協力する番だとは考えていた。だがこれだけは約束してくれ策を決して殺さないでほしい。それが協力する最低条件だ」
 劉備「わかっています義父上、俺にとっても義兄に当たるのですから無碍にはしません」
 孫堅「ふっ。ありがとう」
 諸葛亮「ですが今は南海です」
 劉備「あぁ、そうだな」
 南海へと向かう劉備軍であった。
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