上 下
382 / 573
4章 三国鼎立

士祇の狙いにようやく気付く

しおりを挟む
 日も暮れかかってきたので、野営の準備に取り掛かる。警戒は夜目の聞く動物たちが担当してくれるらしく。スヤスヤと眠りにつく劉備を動物たちの唸り声が響き、起こされる。
 劉備「まさか!夜襲か!」
 虎熊「殿、御無事ですか?士祇軍の奴ら、夜襲を仕掛けてきやがった」
 諸葛亮「殿、やられました。伝令の1人が向こうの間者だった模様。この野営場所がバレてしまい。虎吉殿たちが警戒をしてくれたお陰で事なきを得られそうですが、それでも警戒の外にいた兵たちには甚大な被害が出ているようです」
 劉備「まさか追い詰められている相手が奇襲を仕掛けてくるとはな。相手はわかるか?」
 諸葛亮「あいにく、虎吉殿たちしか警戒に充てて居ませんでしたので、申し訳ありません殿」
 劉備「負けたわけではない。そう謝るな孔明。お前でも読みきれない事があっただけのこと」
 諸葛亮「(いや、奇襲はないと考えていました。伝令の中に間者が紛れ込む機会もなかったはずです。しかし現実は、伝令の1人が間者であることがわかり、奇襲も行われました。ここはまだ高涼の外れだというのに。明らかにここに的を絞って伏せてた節がある。こちらの行動が読まれている?)殿、士祇という男、案外侮れないかもしれません」
 孫堅「これが士祇の策だと?あり得ない、あの男は士燮殿の影に隠れて居ただけの男だ。こんな策を弄するなど」
 諸葛亮「ですが、士燮殿への謀反の犯人だと思われていた士徽は自害したかのようでしたがアレも装われたとしたら。自分たちの体裁を保つために、我らに討ち取られたことにするように。事実、そう見えなくもなかったではありませんか?」
 孫堅「ふむぅ。あの士祇が?士徽に付き従っているだけだと思っていたが」
 黄蓋「能ある鷹は爪を隠すと言いますなぁ。ガッハッハ」
 程普「黄蓋、そういう雰囲気ではなかろうが!」
 韓当「程普、細かいことばっかり気にしてると俺みたいに禿げるぞ」
 程普「禿げん。ワシは絶対に禿げん。そういう話ではなかろう!諸葛亮殿の申す通りだとして、士祇はどうやって、我々の進路を予測しているというのだ?」
 諸葛亮「恐らく、何かしらの誘導が行われていたのです。思えば、初めから妙でした。南海だけを厳重に固めて、周りは疎かでした。それを逆手に取り、我々は手薄なところから制圧に取り掛かりました。その結果、殿に精神的な打撃を多く与えてしまいました」
 劉備「気にするな孔明。頼もしき仲間をあることもできたのだ。刀流に虎熊とな」
 刀流「有難き御言葉、救われた恩を返すため尽力致す所存」
 虎熊「兄貴のため。殿のため。何でもやるぜ」
 劉備「あぁ、頼りにしている」
 諸葛亮「確かに刀流殿に関しては、遅れて居ては、最悪の事態もあったかもしれません。ですが、我らは結果、その足取りが重くなった。そして、合浦を落とした時、攻め先は2つあったのです。ですが我々は迷わず。高涼へと向かった。まるで何かに惹きつけられるかのように」
 劉備「まさか孔明は、我々の行動全てが士祇の掌の上で踊っていたとそう言いたいのか?」
 諸葛亮「あくまで可能性としてですが。そうなると士祇の頭は、かつて項羽に仕えた参謀の范増ハンゾウに劣らぬ才覚の持ち主やも知れません」
 孫堅「それは買い被りすぎであろう。ただ諸葛亮殿が読み間違えただけのこと。それを全て誘導にハマっていたと」
 程普「いえ、殿。それは違うかと。ワシにも思い当たる時がある。交州に居た時、士燮殿の息子たちの謀反を知らせに来た伝令が豹変した時の事だ。あの時、どうして、わざわざ身分を明かし我々を逃す必要があった?我々を劉備軍へと合流させ、この戦いを起こすことが目的だったのではないか?」
 諸葛亮「なんと!?まさか!?そのような!?殿、我々はしてやられたかもしれません。我々は多少、無理をしてもあの時早急に南海を落とすべきだったのです。これは全て、時間稼ぎ。恐らく士祇は曹操と手を組んでいます」
 劉備「それはない。曹操殿は約束を違える男ではない」
 孫堅「あぁ。俺もそう思う。そんな回りくどいことをやるぐらいならとっとと献帝様を廃して、自分が皇帝に付いているだろう。だが、曹操殿は、未だ献帝様を表向きは立てている」
 諸葛亮「かつて共に黄巾の乱の収束に協力した仲間を信じたい気持ちはわかりますが徐州で虐殺を働く男です」
 劉備「それも俄かには信じられないのだ。確かに、虐殺していたのは曹操の部下たちだった。だがそれを曹操が命令するとはどうしても思えない」
 諸葛亮「何故、言い切れるのです!」
 劉備「私が初めてお会いした時に英雄とはこういう人のことを言うのかと憧れたからだ。だがその思想には共感できなかった。力で力無きものを屈服させるという思想には。私は徳を持って広く治めたいとそう考えていたからだ。やっていることは真逆だが。目的のためには自らの手を進んで汚しているのだからな」
 諸葛亮「そうですか。徐州で両親を殺されたので熱くなってしまいました。失礼しました殿。ですが、曹操ではなくとも誰かと結んでいるのは明らかです。この奇襲は、恐らく。我々の足取りを少し遅らせることです。士祇にとって高涼の陥落は想定以上に早かったということでしょう。我々は得ていた優位性を今ので失ったかもしれません」
 劉備「孔明がそういうのならそうなのだろう。だが負けたわけではない。また次、上回れば良いだけのことだ」
 孫堅「うむ。そうだな」
 諸葛亮のいう通り、士祇は奇襲を行ったわけではない。この場所にあらかじめ、あの2人を伏せていたのだ。雁門と彭虎である。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。補足説明と登場人物の設定資料

揚惇命
SF
『えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。』という作品の世界観の説明補足と各勢力の登場人物の設定資料となります。 本編のネタバレを含むため本編を読んでからお読みください。 ※小説家になろう様・カクヨム様でも掲載しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...