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4章 三国鼎立

蒼梧に向かう道中

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 高涼の人々はすっかり虎熊の虜となってしまった。この争いを終わらせるために蒼梧に向かうというと皆が見送りに来てくれたのである。
 民男「劉備様、あんな与太話を信じてしまって、本当に申し訳なかった。俺たちはアンタたちを信じる。だから無事に戻ってきてくれ、そしてまた動物たちの芸を見せてくれ!この通りだ」
 劉備「そのように頭を下げる必要はない。あのような噂が流れたのも元はといえば私の不徳の致すところ。其方たちが気にする必要はないのだ」
 虎熊「よしてくれ。俺は人は嫌いだ。でも、動物たちのこと気に入ってくれたなら。まぁ、またやってやらぁ」
 民男の妻「楽しみにお待ちしております」
 少年「虎熊のおじちゃん、あんな奴らやっつけちゃってよ」
 少女「蛇さんがクネクネ踊るのまた見た~い」
 民翁「ほんにすまんかった。村の子供たちは、皆虎熊殿の動物たちの虜じゃ」
 民婆「ワシら年寄りもですじゃ」
 虎熊「よせやい。そんなに求められるとむず痒くならぁ」
 魏延「良いではないか。人付き合いを知らず育ったお前だ。この際、そういうので全国を回るというのはどうだ?」
 劉備「丁なら面白いと言って、推すだろうな」
 虎熊「劉丁殿って言うと。殿の弟君で兄貴の御友人の?」
 魏延「あぁ、そしてお前たちの大好きな動物たちの装甲を考案した人でもある」
 虎熊「この軽くて動きやすい割に剣や槍を通さない鎧を?」
 劉備「あぁ、丁の奴は昔から。いや、黄巾の乱の少し前からまるで天啓を得たかのように、色々と戦に役立つものを考案し始めたのだ」
 諸葛亮「黄巾の乱の少し前から?」
 劉備「思案してどうして孔明?」
 諸葛亮「いえ(偶然だろうか?確か兄弟子と聞いていた翼虎の将星が落ちたのも同時期。やはり、何者か別の魂が兄弟子の身体にいると考えるべきか?その者は、殿の天下のため誰よりも尽力している?殿と血の繋がりがないのにどうしてなのか?考えれば考える程、妙な怖さを感じてしまうものですね)」
 虎熊「一度お会いして、御礼を言いてぇ。この鎧のおかげで虎吉父さんも熊美母さんも蛇丸も白黒も傷付かずに済んだんだからよ」
 魏延「久々に聞いたなその呼び方は」
 虎熊「あっ!」
 劉備「虎が父で熊が母?」
 虎熊「その、俺は捨て子なんでい。あの森に捨てられた俺を虎吉父さんと熊美母さんが育ててくれたんだ。虎吉父さんは、買った獲物を噛み砕いて食べやすいようにして、食べさせてくれてよ。熊美母さんは、そのなんだ。恥ずかしいな。おい。その、あれだよ。ほら人間の女の」
 琥珀姫「おっぱいですわね」
 虎熊「そ、そ、そ、そ、そんなにはっきり言ってんじゃねぇよ!恥じらいはねぇのか?」
 琥珀姫「あら、そんなおっぱいのことで動揺しちゃって、可愛らしいのね」
 虎熊「や、や、や、や、やめてくれよい」
 劉備「しかし虎と熊が共同で子育てするなど聞いたこともない」
 虎熊「虎吉父さんも熊美母さんもあの森では、主様みたいなものだ。他の動物たちにとっても2匹が出会えば、大地が割れるとか言われてたな」
 虎吉「グォォォォォォォォォォ」
 熊美「ガォォォォォォォォォォォ」
 虎熊「その2匹が俺のために共同で育ててくれた。初めはこわかったさ。喰われるんじゃないかってな。でもよ。次第に警戒心は亡くなって、俺にとっては只の虎や熊じゃねぇんだ。かけがえのない父さんと母さんなのさ」
 劉備「成程な。お前が動物たちに優しいのはそういうわけか」
 虎熊「まぁ動物の世界は、弱肉強食の世界だから俺だって食うために動物殺すけどな。でも必要以上の殺生はしねぇし、剥製にするとか言い出す密猟者は徹底的に排除したけどな」
 魏延「まぁこういう奴です殿」
 劉備「そうか。まぁ、我々とて食うために動物を殺したこともあるな」
 張飛「大兄者、俺を見て言うことか?確かに俺は元は肉屋だけどよ。俺だって、取り扱う肉は全て売ってたってんだ。それが命を頂くってことだ」
 虎熊「そう。命を頂いて生かされている。動物たちに尊敬と感謝を持って接さねばならないということさ」
 劉備「確かにそうだな」
 その頃、襄陽城では。
 ???「クシュン。風邪でも引いたか?」
 ???「馬鹿は風引かないんじゃなかった?そう教えられたけど義賢」
 義賢「董白!?いつ来た?ここは危ない。いつ孫策軍が現れるかわからないんだ。家に居てって言ったのに」
 董白「義賢がお腹空かせてると思って差し入れにね」
 義賢「サンドイッチ!?」
 董白「あれサンドウィッチじゃなかった?」
 義賢「ん?どっちで教えたっけ?」
 董白「知らなーい。クスクス」
 ???「楽しそうですね。御一緒しても?」
 義賢「これは、荀彧軍師、お疲れ様です!」
 荀彧「やめてください。元はといえば、貴方に誘われて劉備軍に入ったのです。今でこそ役職は逆転しましたが、2人の時は友人のように接してくださると嬉しいのですが」
 義賢「うーむ。失礼した。荀彧殿なら大歓迎だ」
 董白「どうぞ」
 荀彧「これは、また面妖な。パンとパンの間に、肉と野菜が挟まっていますね。これは鶏の卵でしょうか?」
 董白「えぇ、異国の食べ物でサンドウィッチと言うらしいですわ」
 荀彧「サンドウィッチ?なんだか不思議な食べ物ですが美味しいですね。それより劉丁殿にお話があったのです」
 義賢「孫策軍だけでなく劉璋軍や曹操軍ですら現れないことですね?」
 荀彧「流石ですね。お察しでしたか?明らかにおかしい。そして静かなのです。何かの前触れで無ければいいのですが」
 義賢「まぁ、考えてても仕方ないかと。我々の任務は荊州・揚州北部・徐州を含む、現領土の防衛。起こったことから対処していけば良いかと。警戒は怠らずに」
 荀彧「そうですね」
 董白「義賢、じゃあ。またね。チュッ」
 義賢「・・・。何、今の。かっ可愛い。もう一回やって」
 董白「馬鹿」
 荀彧「ハハハ。お二人はいつも熱々ですね」
 襄陽城は、今日もそんな穏やかな一日が過ぎようとしていたのだった。
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